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プリントオンデマンドでその場で誕生するロボット―NSFが5カ年計画の研究を助成

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その昔、私が読んだワイアード・テイルズ誌やレイ・ブラッドベリのSFにももちろんロボットが始終登場した。しかしそいつらはごつくて重い金属製で、ドライヤーとかガス湯沸かし器みたいにパッキンを詰め込んだ大きな木箱に入って配達されるのだった。しかしこの研究のロボットはそういうイメージとはずいぶん違ったものになって実現しそうだ。カンブリア時代の生物種の爆発よろしく、ロボットの種類は無限に増殖する。形態は犬から鳥までありとあらゆるものが模倣されることになる。

NSF(アメリカ科学財団)は5カ年計画でオンデマンド製造タイプのロボットの実用化を目指すプロジェクトに資金援助している。

この研究の有力な担い手はMIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)のDaniela Rus教授のチームだ。このチームにはペンシルベニア大学とハーバード大学の研究者も参加している。目標は一般ユーザーが自分の必要に応じたロボットを数時間でデザインし、カスタマイズし、その場で製造できるようにすることだ。

家庭での利用だけを考えてもこれはすごいことだ。たとえば、何かを修理するのに狭い隙間に潜りこまなければならないがそれが困難だったり危険だったりするとしよう。近所のロボットストアで一対のハサミがついた小さくて平たい四足歩行ロボットを売っていたら便利だろう。ベッドの下の奥に入ってしまったオモチャを取ってきたり、床下のネズミの巣を撤去したり、屋根裏の配線をチェックしたり、自由自在だ。

もちろん標準モデルで用が足りる場合も多いだろうが、しかし、もっと大きい方が、あるいはもっと小さい方がいいこともある。カメラはいらない、腕に磁石がついているといいとか殺虫剤のスプレーを保持させたい、などさまざまな要求があるはずだ。そのたびにいちいち新しいモデルを韓国から輸入するのでは面倒だ。標準モデルをユーザーがカスタマイズして自分でコピーを製造できたら便利だ。製造装置のスイッチを入れて、成形が終わったらプラスティックが硬化するのをしばらく待つだけでよい。

プロジェクトチームでは研究の目標を次のように要約している。

プロトタイプを自由にカスタマイズしてオンデマンドで製造できるサイバー・フィジカル・システムの影響するところは巨大だ。たとえば災害時に救助隊は遠く離れた現場で必要に応じてさまざまなロボットを製造でき、補給の困難を最小化できる。めったに使われない部品を倉庫に積み上げておく代わりにデジタル情報化されたデザインだけを保管しておけばよい。

デジタル処理によってどういう種類の課題なら処理できるのかというコンピュータ科学における最大の問題に大きな進展がもたらされる。現実の機械をデジタル技術によって自動的に製造可能とするサイバー・フィジカル・テクノロジーによって問題は新しいレベルに置き直されることになる。

最終的にはこの研究は産業の全エコシステムに関連してくるだろう。エンジニアリング・デザインやソフトウェア工学などコンピュータ分野にとどまらず、必要な製造ツールや素材を得るためには機械工学、材料工学、電子工学の分野での研究が必要になる。少数のパーツを折り紙式に組み合わせることでオンデマンドプリントによって製造可能なロボットのいくつかのプロトタイプがすでに作られている。

この研究には将来は小中高校生も参加させる計画だ。また多くの大学にもプログラムへの参加を呼びかけている。$10M in NSFの援助資金は1000万ドルだが、計画の規模を考えるとすぐに使い切ってしまいそうだ。

この野心的な計画が実現すれば影響の範囲は計り知れない。念のため付け加えれば、この研究が追求している消費者を対象とした民生品であり、軍事用途はまったく念頭に置かれていない(オンデマンド・ロボット製造技術は軍用としても大きな魅力があることはもちろんだが)。自律的分散的なデザインと製造というコンセプトの実現へ向けての一つのスタート地点として注目だ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+