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ウルトラブックの現状にはウルトラがっかり?

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クラウドに出来ないこと

ultrabooks今年はウルトラブックの年になると言われていた。薄くて洒落たノートパソコンが標準になるのだと言われていた。インテルの最新ウルトラモバイルプラットフォームも発表されると言われていた。

いずれも実現していない。少なくとも今のところはまだだ。実のところそれは驚くに値しないことだ。

PCはこのiPad時代において大いに苦戦を強いられている。2011年Q4、米国内PCの出荷台数は6%下落したそうだ。またGartnerの予測では、2012年のPC出荷台数も4.4%の成長に留まるだろうとしている。Gartnerのアナリストの話しでは、既存PCの買い替え需要が活性化していないのが、出荷台数の伸び悩みの一因なのだそうだ。唯一我が世の春を謳歌しているのがAppleで、2011年Q4の出荷台数は21%の増加となっている。Intelは、AppleによるこのMacBook Air方程式をPCの世界でも実現しようとウルトラブックという概念を推奨しているのだ。

Intelの定義では、ウルトラブックとは消費電力の少ないCPUやSSDを搭載し、バッテリー寿命の長い超薄型のノートパソコンのことだ。価格は1000ドル前後が期待されている。単純に言うのならば、MacBook AirのようなPCということになる。

このウルトラブックの第一世代機は昨年秋にAsus、Acer、東芝、およびLenovoからリリースされている。価格帯は1000ドル辺りで、処理能力とバッテリー寿命についてもなかなかにバランスのとれたモデルだった。しかしどうやらMacBook Airのような好評をもって迎えられる事態とはならなかった。

またCES 2012でもいくつかウルトラブックがリリースされた。Dellからはカーボンファイバーを使ったXPS 13が発表され、HPはエントリーモデルのFolio 13と、ハイエンドのEnvy 14を出してきた。またSamsungはSeries 5とSeries 9というウルトラブックを発表した。前者の方はなんと光学ドライブを搭載して、従来のウルトラブックという範疇にはおさまりきらないものとなっている。

こうしてリリースされたモデルについては、テック系メディアもなかなか好意的な印象をもったようだった。Series 9以外は一斉に売り出されもしたが、しかし大いに売上を伸ばすということにはならなかった。AmazonのノートPCジャンルでベストセラーに入っているのは、昨年10月にリリースされたAsus Zenbookのみだ。またBest BuyやNeweggのベストセラー商品にもウルトラブックは掲載されていない。そうしたサイトで情報を見ると、消費者はどうやらより安価なWindowsノートないし、値段の高いMacBookを好む傾向があるようだ。

ここまでの動きを見てみると、ウルトラブックはこれまでのPC販売戦略の犠牲になっている面もありそうだ。Windows PCメーカーは長年、ポータビリティなどの面ではなく、価格面での競争を続けてきた。ウルトラブックは多少高額ながら、バランスのとれた使い勝手の良さを目指すものだ。消費者の方は、これまでの販売戦略にのった形で製品を評価しており、そうした眼でみてウルトラブックに好意的な印象を持っていないようなのだ。値段が2倍もするウルトラブックよりも、ごつくても安くてそこそこのパワーを持つモデルの方を選択する傾向があるようだ。

CNETには、ウルトラブックは「終わったもの」になってしまったのではないかという記事が掲載されている。PC産業自らの手によって葬られたというものだ。光学ドライブを搭載したり、あるいは従来のハードディスクを使うことで、ウルトラブックという製品ジャンルを意味のわからないものにしてしまったのではないかと主張する。確かにこれには一理ある。しかしマーケットでの大きな変化を数ヶ月単位で見ようとすることには問題があるのではないか。ウルトラブックが登場してきてまだわずか半年ほどに過ぎない。PCメーカーの方も、消費者の人気もある以上、単純にこれまでの低価格PCを捨て去るわけにはいかない。CNETの記事で主に取り上げられていたのはSamsungだが、同社が光学ドライブを搭載したのは、消費者に馴染みのスタイルを提供しようとする意図だ。信じられないという人もいるかもしれないが、光学ドライブ非搭載のPCを、最初から選択の範囲外とする人もいる。DVDドライブを搭載することでノートPCの重量が4kgほどになっても平気だとする人も確かに存在するのだ。

現段階でウルトラブックは失敗だったと結論づけるのは早計に過ぎるだろう。CPUパワーを高めつつ安価なウルトラブックを提供できるようになるはずの、インテルによる新プラットフォームの発表も遅れた。こちらも待って評価するのが適切だと思われる。但し、PCメーカーや小売店としては、クロック周波数やディスクのサイズばかりを強調する方針を転換していく必要がある。CPUやSSDの容量に限界があるように見えても、電力消費量も少なく持ち運びにも便利なPCが広げる世界というのは確かにあるのだ。ウルトラブックをPCのサブセットであるという位置づけから解放してやる必要があるだろう。こうした方針を進めていくことで、消費者たちも価格のみではなく、薄さや軽さ、使い勝手などのバランスからPCを求めるようになる。

インテルが昨年なかほどにウルトラブックという概念を発表した際、PC版のMacBook Airが実現するのだという声も多かった。コンピュータの薄型化や低価格化は今後も進んでいくことになる。しばらくの間はインテルの定義に沿わないものも出てくることになるだろう。ウルトラブックというのは、まだまだこれからのものであると思うのだ。

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(翻訳:Maeda, H)