クラウドに出来ないこと

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編集部注:Alexander Haislipは、クラウドベースサーバー自動化のスタートアップ、ScaleXtremeのマーケティング担当幹部で、『Essentials of Venture Capital』の著者でもある。Twitterアカウントは@ahaislip

今われわれは、テクノロジーの岐路に立っている。コンピューティングの基幹部分が分裂しつつあり、シスアドからCEOまで誰もがその行く末を案じている。

声高な専門家たちのいつもの戯言は状況を改善しない。おしゃべりな人たちは相も変わらず変化を称賛し続ける。「クラウド、クラウド、クラウド!」しかし彼らはそれをITアーキテクチャー全体の文脈で語るってない。彼らが描く明るい未来は、IaaS(Infractructre-as-a-Service)プロバイダーによって運用される超効率的なデータセンター(できれば太陽光発電)の中ですべてのサーバーが動いている姿だ。なぜ、自分でサーバーを運用しないのだ?

IaaSは前進であり、クラウドコンピューティングは他のあらゆるものを時代遅れにする。それ以外の考えを匂わす者は技術革新反対論者のレッテルを貼られる。

しかし、現実はこの単純なビジョンとは噛み合わない。現実の会社が直面しているのは、もっと複雑なコンピューティング基盤であり、そこには未だに自社でホストしているバーチャルマシンや、物理的サーバーが含まれている。そしてこれらの社内機器はなくならない。IT専門家たちのコンピューティング・ポートフォリオは膨らみ、この増加する複雑性を管理するためにはさらに高度なツールが必要になる。

クラウドは、社内サーバーを置き換えない。そこに追加されるだけだ。

テクノロジーの進化とは実際こういうものだ。多くの人々が定向進化説、即ち猫背のサルから知性あるヒトへの直進的変化を信じている。しかし、高度な概念化によればそれは枝分かれした樹木だ。既存の種族の一部が新しい方向に向う。あらゆる種族が変化し続けるが、それぞれの方向はばらばらだ。

テレビ放送は、ラジオから生まれた技術から分化した。そして、どちらの技術も進化を続けた。テレビにはビデオ(1976)、Tivo(1999)、ハイビジョン(1996)、ブルーレイ(2003)が生まれた。ラジオにはFMとトランジスター(1954)、ステレオ(1961)、衛星(1963)、XM(2001)、そしてポッドキャスティング(2005)が生まれた。テレビが出来たとき、ラジオは役割を終えることも進化をやめることもなく、二つのテクノロジーは人間のメディア消費の世界に異なる生息地を見つけた。家庭ではテレビ、車ではラジオ。

コンピューティングも同じだ。メインフレームは、クライアント―サーバー・アーキテクチャーに全滅させられたという人々の認識にも関わらず、今でもおびただしい数の企業で運用されている。今もどこかで誰かがテープベースの電子記憶装置を回している。正当な理由によって。メインフレームは高速で実績があり堅牢で信頼性が高い。それは給与計算のような基幹業務に最適化されている。テープベースのストレージは、極めて低価格であり保存規則を順守するために用いることもできる。

今クラウド・コンピューティングは、ITアーキテクトたちの兵器庫にあらたな選択肢を提供する。それは、不確定な処理能力を必要とするアプリケーションや、急速に拡大するインフラストラクチャーや、規模に応じて支払いをしたいスタートアップに最適だ。しかし、PCIやHIPPAの順守を心配しなくてないけないなら、ファイアーウォール外へはデータを持ち出したくないだろう。グラフィック処理のための強力なプロセッサーなど、特殊なハードウェアを必要とするアプリケーションを使うなら、バーチャル化はしたくないし、クラウドなどもっての外だ。

コンピューティングの選択肢が増えるにつれて、複雑さも増えていく。課せられた要求を注意深く検討し、トレードオフを考え、適切な計画を立てる必要がある。さらに、この高度に異質化したインフラストラクチャーを管理し、複雑さを支配できるようにシステムを構築する必要もある。賢明な企業は迅速に動いてこの利点を活かし、チャンスを逃したところは絶滅する運命にある。

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(翻訳:Nob Takahashi)