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1600万ドルを調達したCourseraなど有名大学もオンライン講義に本腰を入れる時代に

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このところ教育系スタートアップの動きが盛んだ。先日もTreehouseが475万ドルを調達というニュースがあったばかりだが、同じくオンライン教育サービスのCourseraが1600万ドルを調達したことを発表した。出資したのは著名VCのKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)とNew Enterprise Associates(NEA)で、KPCBからはJohn Doerrが、NEAからはScott SandellがCourseraの取締役会に参加する。さらにプリンストン大学・スタンフォード大学・ミシガン大学・ペンシルバニア大学との提携も同時に発表され、既に開設済みのスタンフォード大学およびカリフォルニア大学バークレー校の講義に加え、これら有名校の講義が順次Coursera上で受けられるようになる。

オンラインで大学レベルの講義を提供するサービスというと、スタンフォード大学の元教授であるSebastian Thrunが立ち上げたUdacityが思い出されるが、実はCourseraもスタンフォード大学でコンピューターサイエンスを教えていたDaphne KollerとAndrew Ngという2人の教授が立ち上げたベンチャーだ。彼らはスタンフォード大学でオンライン教育プラットフォームを立ち上げ、2つの講義を公開、合計で約20万人の視聴者を集めることに成功したという経歴を持つ。この点も人工知能に関する講義をオンラインで公開し、約16万人の視聴者を獲得、その経験から起業に踏み切ったSebastian Thrunの経歴と似ている。

さらにUdacityと共通しているのは、講義のスタイルだ。どちらも1回分の映像が短い時間(Courseraでは10分から15分程度)にまとめられていて、受講者の集中が途切れてしまうことを防いでいる(これはKhan Academyで効果が実証された手法である)。また視聴後に内容に関する簡単なクイズを出すことで、受講者がどれだけ理解できたかフィードバックするという点も共通している。ただCourseraの方が受講者によるコミュニティを活用しており、講義の中で課される課題を受講者間で採点したり、様々な質問について他の受講者が答えたりといった運営を行っている。Andrew Ng教授はNew York Times紙に対して、実際にコミュニティ内で質問が投げかけられると、平均で22分以内に何らかの答えが返されていると述べている。

またCourseraの特徴として、講義の対象領域の幅広さが挙げられる。Udacityは「検索エンジンの構築」や「ロボットカーのプログラミング」など現時点では理工系の領域のみをカバーしているが、Courseraは理工系に加え、「ファンタジーとSF」や「ギリシャ・ローマ神話」、「ファイナンス入門」など、人文系の講義も受けることができる。今回の資金調達と、有名大学との提携は、こうした講義ラインナップをさらに充実させることが目的であるとCourseraは解説している。

大学がネット上で授業を公開するという点については、以前からオープンコースウェア(OCW)と呼ばれるような動きがあった。またAppleのiTune Uでダウンロードされた講義の数は、既に2010年の時点で3億回を突破している。しかしその多くは、単にオフラインの授業を撮影してネット公開するだけだったり、授業マテリアルを電子媒体にしてアップするだけといった程度の対応で終わってしまっているものが多い。それは紙の雑誌をそのままPDF化して「電子書籍だ」と言うようなものであり、コンセプト自体には注目が集まったものの、継続的に受講者を獲得するという状況には至っていない。

CourseraやUdacityのような新しいスタイルのオンライン教育サービスは、PDFを電子書籍だと言い張るような態度とはまったく異なっている。即時的なフィードバックやコミュニティ活用など、「オンラインならではの授業体験」を模索するものと言えるだろう。いまのところ、その努力は世界中から数多くの受講者を呼び込むという結果につながっている。またその結果を目にして、有名大学や有名教授もオンライン講義に興味を示すという流れが生まれ始めている。

その象徴が、今回のCourseraと米有名校との提携であると言えるだろう。またこれまでOCWに積極的に取り組んできた大学の1つであるMITは、彼らのOCWとは別に、MITxという新たなオンライン講義サイトを立ち上げるという動きを見せている。今後はCourseraのように、理工系だけでなく人文系の講義を対象にするサービスも増えてくるだろう。近いうちに、有名大学の講義をどこがオンラインで提供するか(あるいは大学側で独自のオンラインプラットフォームを立ち上げるか)、サービス間での綱引きが始まるという事態になるかもしれない。