これから数年間で科学は劇的に加速する、知的交流プラットフォームの意義

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編集部注:学術関係者向けのサービスAcademia.eduのファウンダでCEOを務めるRichard Price氏による寄稿。Academia.eduは論文をシェアしたり意見交換を行ったりするプラットフォームを研究者に提供している。

技術や医学の分野で起こるイノベーションは、ほとんどどれも科学論文を基にしている。科学はイノベーションの大半をけん引しており、科学の進歩が加速すれば世界の変化も加速する。

科学が進展するうえで大きな障壁となっていることが2つあり、以下に説明するこれら2つの非効率が進展を阻害している。

  • タイムラグ:論文が完成してから出版されるまでに平均約12か月間の時差が生じる
  • 出版形態の一様性:科学者が意見を交換する際は科学論文フォーマットのみが使われる。Webでは実現できる多様性が活用されていない

これらの非効率を除去できれば、科学は劇的に加速するだろう。科学の進みが速ければ医学や技術分野のイノベーションも速くなると考えられる。そうなっていればもう2~3年早くにがんは不治の病ではなくなっていたかもしれない。

タイムラグの問題

1つめの非効率は科学的見解が配布されるまでのタイムラグの問題だ。論文の執筆を完了してからグローバルな科学者コミュニティにいきわたるまでに約12か月間の時差がある。その間、論文はピアレビューを受ける。ピアレビューには長期間を要する。

論文を読んで何らかの反応をするわけだが、その反応がいきわたるまでにさらに12か月間を要する。

科学は基本的には科学者間の会話からなる。現在、こうしたやりとりに生じる時差は平均12か月間だ。この時間的なずれが、科学的見解の普及を妨げている。

Webでこの規模の遅延が生じたら何が起こるだろうか。ブログに投稿したりツイートしたりして、それが公開されるまでに12か月かかったらどうだろうか。Facebook上のニュースフィードが12か月前のものだったらと考えてみてほしい。変革を求めて議会に人が押し寄せるだろう。

出版形態の一様性

これまで、科学者間の意見交換は論文を通して行われてきた。

ブログは科学の世界では普及していない。科学者の間ではブログの信頼性は高くないからだ。彼らは「この着想はブログに出して人と共有するのはもったいない。2~3年で論文にできる」と考える。その2~3年の遅れが命取りになる。

Web上で情報を共有する人たちのほとんどがリッチメディアを活用している。ビデオやステータスアップデート、ブログへの投稿やコメント、データセット、インタラクティブグラフなど、その形態はさまざまだ。

他方、科学者がたとえばタンパク質に関する情報を共有しようと思ったら、論文を書き、タンパク質の構造を説明したモノクロ画像を何枚か添える必要がある。そんな中で、タンパク質の構造を説明する際、モノクロ画像よりも適していてもインタラクティブな3次元のカラーデータを用意し、共有する風潮は育ちにくい。

科学の未来

1:情報は速やかに共有される

Tim Berners-Leeは、自分と同僚の間で論文を手軽に共有するためにWebを生み出した。Webは科学に影響を及ぼしたが、さらに今後数年で科学者間の交流のあり方を変えると見込まれる。今後5年~10年で、学術論文という様式が生まれた約400年前から続いてきたやり方が変わるだろう。

まず起こるのは、科学的見解の配布形態の変化だ。arXivAcademia.eduMendeleyResearchGateなどのサイトでは、特定の科学分野向けに論文配布サービスを開始しており、他の分野にもこの配布形態は浸透するだろう。

こうしたサービスを使えば、論文の共有にかかる時間はせいぜい1日になる。科学の進展に好影響をもたらし、成果もより速く得られるようになるだろう。20世紀に起こった電話やテレビ、インターネットといった情報通信技術の発達が科学の進展に追い風となったのと同じように、論文共有のタイムラグが詰まれば劇的な変化となる。

2:リッチメディアの活用が進む

科学者はこれまで、印刷物を念頭に論文を執筆してきた。論文をPDF形式で保存してWebに掲載していた。これからは、Web上で展開するコンテンツとして論文を位置づけると予想される。

Webにリッチコンテンツがあるのは本来の姿だ。動画やインタラクティブマップなどのWebコンテンツを印刷するという発想には無理がある。コンテンツにちょっとしたインタラクティブ性を持たせるハイパーリンクも、ページを印刷すると意味がなくなってしまう。論文のなかで他者の研究成果に言及することはあるが、リンク形式ではない。従来のやり方は、Web上でコンテンツを共有するには古すぎる。

今後は科学者間でデータセットや動画、3Dモデル、プログラム、グラフなどをやり取りし、ブログへの投稿やステータス告知、コメントバックなどを行うようになるだろう。引用にはハイパーリンクが使われる。そうなれば、科学者たちは全く新しいやり方で交流できるようになり、科学の進展に大きな影響がもたらされるだろう。

3:変わるピアレビュー

論文が即時に共有されるようになると、ピアレビューにはどんな影響があるのだろうか。筆者の考えでは、Web上で主要なディスカバリエンジンとなっている検索エンジンとソーシャルネットワークがピアレビューシステムを構成しており、すでに科学に関するコンテンツを見出すきっかけとなっている。

4:学術的信頼性の測り方も変わる

科学者は従来、権威ある学術誌に論文が掲載されることで自分の信頼性をつくりあげてきた。科学者の評価にもこうした実績が用いられてきた。ここ数年は、論文引用数も評価に使われている。

論文がWeb上に掲載されるようになると、科学者の評価指標も変わる。Web上の評価指標はさまざまで、変化し続けてもいる。ユニークビジター数やページビュー、滞在時間などは安定的に使われている。他方、Twitterのフォロワーアカウント数やStackOverflowのスコア、Facebookの「いいね!」数、YouTubeのビデオ閲覧回数などのバーティカルな指標もある。

こうした指標が浸透すれば、科学者はWebを介してデータセットを共有したり論文にコメントしたりすればよいし、モノクロ画像よりも映像のほうが利便性が高いとなれば、動画を使うようになるだろう。

シリコンバレーのリソースを科学に向ける

科学は現在再構築期、転換期にあり、展望は明るい。社会には大きな好影響がもたらされることだろう。

次にくる科学の波は、論文執筆者ではなくシリコンバレーの工学志向のテクノロジー企業から生まれている。シリコンバレーの豊富なリソースが科学の分野に目を向けはじめている。

科学の変革にシリコンバレーが力を入れつつあり、科学の進展にはこれまでにない規模で加速している。技術の成長にも大きな影響があるだろう。

今こそ行動を起こす時だ。VCなら科学分野のスタートアップに投資するべきだし、起業家なら新たな着想を科学分野に求め、行動する。エンジニアやデザイナーには、科学進展の加速に取り組んでいる企業のリストがある。

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(翻訳:AOL翻訳編集部)