モバイルの収益化は口を開けて広告が落ちてくるのを待つことではない

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電子出版の行動はすべて正しいかもしれない。しかし、海賊版の亡霊は消し去れない

[筆者: Eli Portnoy]
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編集者注記: Eli PortnoyはThinkNearの共同ファウンダだ。同社はモバイルユーザの位置や現実世界の状況に基づく広告のターゲティング情報を、広告主たちに提供している。

Mary Meekerの今週のプレゼンテーションは、モバイルの収益化という問題に光を当て、“広告収入は目玉の数(ビューの数)に比例するが、その増加には時間がかかる”と主張した。しかし彼女は、モバイルで収益化が問題になる理由を直視していないし、また、モバイルという商機を掴みたいと願っている人たちとそれらの問題との関連も、見落としている。

モバイルは今、爆発的に成長している。合衆国では1億以上の人がスマートフォンを持ち、モバイルデバイスの上で一般消費者がメディアに接する時間は1日60分を超えている。人が自分の携帯の画面を見る回数は、1日に約40回だ。膨大でしかも活発なユーザ層であることは、まちがいない。だからモバイルは、広告主たちにとっても、大量の消費者に到達できる未踏の金鉱山だと、あなたは思うかもしれない。でもMeekerが示したのは、人びとが自分の携帯の上で過ごす時間の量と、モバイルに投じられている広告費との、大きな落差だ(後者が不釣り合いに小さい)。いろんな数字が発表されているが、だいたいのところは、消費者のメディア消費時間全体を100とすると、モバイルはその10%から24%を今や奪っている(つまり、1/10から最大1/4だ)。ところが広告費の投入額は、その総計を100とすると、モバイルに投じられているのはわずかに0.5%から1%(1/200〜1/100)なのだ。

多くの人は、これを、モバイルの商機がまだまだ大きい、と見る。つまり、広告主たちはまだモバイルを十分に使いこなしていないが、そのうち大金が流入するだろう、と期待している。FacebookやPandoraなどのIPOに殺到した人たちも、その巨大なページビューとその上の広告量が(すなわち広告収入が)やがて均衡することを、期待しているのだ。

でも私は、このような「それを作れば、彼(ら)が来る」説には大反対だ。広告主たちも広告代理店も、馬鹿ではない。彼らもみなスマートフォンを持ち、iPhoneやAndroidを毎日使っている。しかも彼らは、新しいエキサイティングなものを理解することで給料をもらっている。2012年にもなって、彼らがモバイルを知らないはずがない。

でも、それではなぜ、お金がモバイルへ流れて行かないのか?

広告主たちは、広告効果は広告の適切性(レレバンス, relevance)で決まることを知っている。言い換えると、広告がその製品のターゲット/潜在見込み客に正確に到達することだ。ロサンゼルスに住んでいる私に、しかも夏に、スノウブーツを宣伝してもだめだ。巨額な広告費が無駄にならないためには、正しいターゲティングが何よりも重要だ。ところが、現状のモバイルエコシステムには、雑誌メディアや一部のWebサイトなどと違ってターゲティングのための手がかりがまったくないから、まるで盲撃ちのような広告キャンペーンになってしまう。費用に対して、広告効果がモバイル上では劣悪だ。そして広告主たちのあいだには、モバイルというメディアに対して、広告メディアとしての幻滅感が広がる。

なぜ、モバイル上の広告キャンペーンは費用効果が劣悪なのか?

多くの人はそれを、クッキーがないせいにする。クッキーは、Webでは広く使われているが、モバイルの世界にはない。しかしその技術的な理由がどうであれ、仮にクッキーがあったとしても、それでモバイルの広告が伸びることはないだろう。クッキーによるターゲティングは、閲覧履歴によるユーザの関心領域の把握だ。しかしモバイルのユースケースはWebと違うから、そのような把握が成り立たない。パソコンの上で、何か特定のものを探し、それによって閲覧履歴を生成する人も、モバイル上の動きは散漫で一貫性がない。パソコンを使うときには目的があり、モバイルは多くの場合無目的なひまつぶしだ。モバイルユーザの散漫な行動は、広告のターゲティングの手がかりになりにくい。

手がかりは歴史の中にある

でも、デジタルメディア上の広告の歴史を見ると、今のモバイル上の状況がとくに新しくはない、と分かる。検索エンジンが登場したのは15年ほど前だが、当時はそもそも“広告プロダクト”というものがないし、またそれらの展開をサービスする“広告ネットワーク”というビジネスもない。広告主たちは主に、広告を自社のホームページに掲載するだけだった。ターゲティングと呼ばれる広告戦略も、当時はない。そこへOvertureとGoogleがやってきて、広告を人びとがタイプする検索語と結びつけるようになり、そこで初めて、広告のターゲティングが可能になった。やがて、検索広告に大量のお金が投じられるようになり、それは今も続いている。

その数年後に、Webサイト上のバナー広告はまだ伸び悩んでいた。オンライン人口は増えたが、単にビューワの数しか分からない一般的なWeb広告に投じられるお金は増えなかった。そこに、クッキー革命がやってきた。そして広告主たちは、閲覧履歴という、ターゲティングのための手がかりを得た。そして検索広告以外のWeb上の一般広告が飛躍的に伸び、今では250億ドルの業界に成長している。

モバイル広告が伸びるためのキャンペーンのタイプとは?

モバイル広告の場合も、広告主たちがそれに対して燃えるための鍵は、ターゲティングのための正しい手がかりだ。正しいターゲティングができるようになれば、今の10〜24%(時間消費)vs. 0.5〜1%(広告投入量)というモバイルメディアが抱える大きなギャップも解消するだろう。何もせずに待っていても、広告主たちはモバイルに殺到してはくれない。

モバイル上の、ターゲティングのための正しい手がかり、といえば、位置を挙げる人が多い。たしかにモバイルは持ち歩きするデバイスだし、しかもユーザは1日16時間身につけて、1日に40回、何らかの対話的なアクションのために携帯の画面に見入っている。しかも今ではスマートフォンにGPSが搭載され、ユーザの正確な位置が分かるようになった。

しかし多くの業界が、位置を地理的な場所としてしか扱っていない。その人が今どこにいて、その近くには何があるか、というあくまでも地理的な情報だ。でも、位置情報は実はそれだけではない。モバイルの位置情報は、人びとがどこにいて(〜どこに集まっていて)、何をしているか、そこで何が起きているか、という文脈的情報を知る手がかりになる。

モバイルとターゲティングの関係を誰よりもよく知っているのは、ニューヨークの露天商人だ。路上に台車を停めてDVDでもサングラスでも財布でも何でも売っているが、ポツリと雨が落ちてきたら台車に蓋をして、今度はその蓋の上で傘を売り始める。人びとが何をしているか(ニューヨーク市内を歩いている)、そこで何が起きているか(雨が降っている)、というターゲティング情報にぴったり合わせた商売をしているのだ。ターゲティング広告も、これを見習わなければならない。露天商の商売にとっても、適切性(レレバンス, relevance)が何よりも重要なのだ。

モバイルとその上の位置情報を使えば、広告主たちもニューヨークの露天商と同じく、適切なターゲティングができる。人が今どこで何をしているか、に合わせて適切な広告を出すのだ。空港に人がいっぱい集まっているなら、ターゲットは旅行客だ。ショッピングモールならもちろんショッピング。などなど。言うまでもなく、旅行客の利便に奉仕する広告があり得るし、買い物客を親切にサポートする広告がありえる。繰り返すが、人びとがそこで何をしているか、そこはどんな場所か、に合わせた広告メッセージが重要である。モバイル広告が伸びる鍵、広告主たちによってモバイルが広告効果の高い媒体として、これまでの媒体よりも重視されるための鍵が、このような、適切で正しいターゲティングにある。

機会は無限に大きいが、位置情報にはそれなりの問題もある。業界も未成熟だから、位置情報ベースの広告キャンペーンに習熟していない。さらに、位置に関しては正しいプライバシー対策が重要だ。より詳細な位置情報を取り出すツールは、目下各所で開発中だ。しかし基本的には、モバイルの広告効果を上げ、モバイルに対する広告主たちの(これまでの)ためらいを解消するためには、広告媒体としてのモバイルのユニーク性を正しく理解し、その強みで勝負することだ。モバイルのユニーク性と強み、それは位置(location)と可動性(portability)であり、それが同時に、広告主たちにとっての商機だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))