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Finovate登壇のスタートアップ企業に見る米国金融テクノロジー

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編集部註:この寄稿は電通国際情報サービスの金融ソリューション事業部 シニアコンサルタントの公門和也氏によるものである。同社では本年2月8日に金融ビジネスにフォーカスしたイベントFIBCを開催し、日本で金融事業におけるイノベーションを支援している。

今年もFinovate Springが5月8日と9日にサンフランシスコで開催された。Finovateとは金融分野(financial)のイノベーション(innovation)に特化したイベントで、昨年は世界各地で年に3回、Finovate Groupの主催で開催された。今回のFinovate Springは参加者も1200名と過去最高となり、今秋にはシンガポールでの開催でアジア進出も果たす予定である。

米国でのスタートアップ企業による金融サービスの数は年々増加していて、SquarePayPal Hereに代表されるモバイル支払いイメントサービスの普及やクラウドファウンディング法の可決など、米国金融はまさに金融×ITのイノベーションの最前線と言えるだろう。そこで少し遅くなってしまったが、米国の最新金融サービスを紹介するこのカンファレンスで見られたトレンドを、登壇したスタートアップ企業の中から印象的だったものとともに紹介しよう。

Zipzap


日本ではオンラインショッピングの支払いはコンビニ決済で可能だが、ZipzapのCashPaymentではコンビニ決済のようにオンラインショップでの買い物を、70万カ所以上展開しているペイメントセンターで、現金で支払える。センターに支払われたすべての現金が当該のショップに入金されるため、これまでショップが顧客ごとに行わなければならなかった回収での手間やロスが省ける。何より注目すべきは、金融機関から融資などを受けられないなど十分な資金を保有していないショップでも、早いサイクルで運転資金を獲得し、オンライン上でビジネスを継続していける点だ。格差社会・移民社会の米国で18パーセント程度を占める「アンダーバンクト層」を主なターゲットとしており、これまで金融サービスを十分に受けられなかった眠れる市場をビジネスに呼び込むことを狙っている。

Kabbage


Finovateの常連となっているKabbageは金融機関としてオンラインビジネスにフォーカスしている。これまでの金融機関の融資とは全く異なる視点かつオンラインビジネスにあった形で企業を評価して融資額を決定する。たとえば融資する対象をeBay、 Amazon、Yahooなどの特定のマーケットプレイスに出展している企業に限ることや、これまでの売れ行きの成長性・販売チャネルの多様性、などの視点から評価する。これによってオンラインビジネスのアイデアがあったものの金融機関では資金を借りられずに店舗を開けなかった層に、新たなビジネス機会を与えることを狙っている。

Cardlytics


オンラインクーポンは日本でも普及しているが、Cardlyticsではオンラインバンキング上でユーザーの趣向にあったクーポンのようなものを発行するサービスである。これは、オンラインバンキングのユーザーのデビットカードまたはクレジットカードの取引履歴から、消費行動を分析し、広告主から最適なオファーを提供するものだ。ユーザーはオンラインバンキング上でリコメンドされた商品を、口座に紐付いたカードを利用して購入するだけで、キャッシュバックが受けられる。銀行が持つユーザーの情報は銀行のファイヤーウォールを超えることはないという。これにより、金融機関は自身が保有するデータを有効活用しながらトランザクション数を増やすことができ、ユーザーは自分の興味のある商品を安く購入できる。また、小売店などの広告主は自身の売上を上げることはもちろんのこと、他にもユーザーの消費行動やリコメンド商品の購入率などのマーケティングインサイトも入手できる。これまで消費者と金融機関のみの関係だったバンキングが、小売業を巻き込んだビジネスモデルへと変革している。

Taulia


これまでFinovateでは個人財務管理(PFM:Personal Finance Management)といわれる生活者のお金の管理をするサービスが多く出てきていたが、企業にフォーカスしたサービスも登場した。Tauliaは生活者ではなく企業について、請求書管理から企業の金融取引などの管理を実現してくれるサービスである。請求書の発行や受入ができ、そこから企業のキャッシュレベルを把握・管理できるようになっている。企業向けなので会計システムやSAPとの連携もできるようになっている。これまでも同様なものは存在するが、Tualiaが持つ特徴は、原材料の調達から生産・販売・物流といったサプライチェーン内で買掛の条件(金額、期日、早期支払いによる割引率)を比較できることだ。つまり、キャッシュに余裕があれば早期支払いで割引を受け、余裕がなければ通常の支払いを行うという、サプライチェーンファイナンスを実現している。

Finovateで登壇するような新しい金融サービス登場には米国での次のような時代背景が挙げられる。

  • リーマンショック以降、既存の金融機関は生活者からの信頼を失い、金融サービスの提供元として金融機関以外(ベンチャー等)も考慮対象になっている
  • 経済格差の拡大する中で、金融サービスを受けられる層と受けられない層が存在し、既存の金融機関がカバーしきれていない領域が出てきている
  • 金融機関への規制が強化されるなかで既存の金融機関の自由度が減り、新たなサービス開発へすぐに動けない状況にある
  • インターネットやモバイルを得意とするスタートアップ企業が、金融サービスを生活者視点で変えていく機動力を持っている

これらを今の日本の状況を置き換えて考えると、米国でのような新しい金融サービスをどのように実現していけるのだろうか。その回答の1つが、Finovateでもよく見かけられる傾向だが、スタートアップ企業がフロントのサービスを開発して、金融機関がバックエンドを担うケースである。

たとえばCardlyticsは、既存金融機関のオンラインバンキング上でスタートアップ企業のサービスが提供されている形だ。つまり、金融機関とスタートアップ企業それぞれが役割を分担している。日本においては、一足飛びに金融機関とスタートアップ企業が密接に組み合って何かをはじめるというのはあまり多くないため、両者の間でイノベーションをドライブする役割が必要になってくるだろう。