大学進学を拒否していきなり研究員フェローシップを開始するとどうなるか,という英才教育実験

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ドロップアウト、はみ出し者、そして神童。若くて、怖い物知らず。彼らは毎年シリコンバレーにやってくる。その多くが、誰の助けも借りずに。

しかし、そんな連中のためのプログラムができたのは、やっと昨年だ。逆張りが好きな投資家でラジカルな自由主義者Peter Thielが、20歳以下の人たちのための定員20名のフェローシップを創設した。そのミッションは、飛び抜けて優秀な若者を発見して彼らに、大学進学という一般的な進路を捨てさせることだ。その第一期生は、起業をしたり、数百万ドルのベンチャー資金を調達したり、複雑なバイオテクノロジの問題の研究に取り組んだりしている。

そして、今年が2年目だ。基本的な目標は昨年と変わっていない、と基金の協同ファウンダJim O’Neillは言う。応募の書式には、Thielの有名な面接質問がある。それは応募者の自由で自主的な思考力を知るための質問だ。彼はこう問う: “世界に関する諸説の中で、多くの人が真でないと思っているが、しかしきみは真だと考えているものは何か? それについて述べなさい”。

こんな質問もある: “今当たり前のように存在しているもので、きみが20年後にはばからしいものにしてしまいたいと思うものは何か? それを説明しなさい”。

“完全に自主的な知性と、何か新しいものを作る決意と、それを実現する力を持った者を求めている”、とO’Neillは言う。

一部のフェローたちは、まさにこのプログラムからなら出るだろうな、と誰もが思うような人物だ。たとえばTaylor Wilsonは、核融合を実現したもっとも若い人物としてPopular Science誌の(優れた)記事にもなった。

二人共同で取り組んでいるバイオメディカルの画像技術は、発生した癌がまだ癌細胞10個ぐらいの段階で見つける、という精度を目指している。

その一人Anand Guptaは、今年の初めにサンフランシスコのパレス・オプ・ファインアーツで行われたプレゼンテーションで、“今の医師たちは診断にあたって定性的な情報に頼りすぎる”、と言った。“バイオメディカルイメージングは、画像の高度な密度と構造とそれらがもたらす情報により、疾病を発見するためのより合理的なツールを提供する”。

Harvard(ハーバード大学)に在学するConnor ZwickのiPhoneアプリは、すでに彼に十分な収入をもたらしている。それは一見するとシンプルなフラッシュカードアプリだが、彼はそれを、一人々々の学習者の適応学習を支える学習ネットワークとして普及させるつもりだ。

Chris Olahは10代のときトロントのHack Labで、3Dプリントに魅入られた。彼はその後大学に進学したが、今ではドロップアウトだ。

“大学の時間的制約の枠の中では、自分がやりたいプロジェクトを追究できない”、と彼は面接で言った。“本当は、一日の時間はとても長いのにね”。

彼らのプロジェクトの中には、今すぐに消費者向けのWebサービスにできそうなものもあれば、より研究指向のものもある。彼らが取り組んでいる問題は、強大な計算機力があれば解けそうなものもあり、またヘルスケアのように政治が絡むものもある。たとえば在宅介護の自動化に取り組んでいるIlya Vakhutinskyはそれまで、プラズマ物理学の実験室でデータの視覚化を研究していた。

Thielは、“今の高等教育はバブルだ”*と主張するが、しかしこのような、1年に20名のフェローシップをもっと大人数に適用する計画はない。O’Neillによれば、大学や学位が本当に必要なものか真剣に考える人たちがもっと増えれば、規模の問題は解決する、と。〔*: “higher education bubble”、日本の(私立も含む)‘駅弁大学’などを想起させる。〕

では、フェローたちを紹介しよう:

Clay Allsopp (20歳、ノースカロライナ州Raleigh)は、人びとはテクノロジのことを忘れて創造に集中できるべきだ、と考えている。彼のスタートアップApptoryは、タッチスクリーン製品用のコンテンツを誰もが容易に作れるサービスを提供する。

Dylan Field (20歳、カリフォルニア州Penngrove)は、人間が、何を消費するかではなく何をクリエイトしているかで定義される社会にしたい、とビジョンしている。Brown University(ブラウン大学)を休学中の彼は、在学時のクラスメートEvan Wallaceとともに、今よりも良いクリエイティブツールの制作に取り組んでいる。

Kettner Griswold (19歳、メリーランド州Bethesda)とPaul Sebexen (19歳、ニューヨーク州Staten Island)は、学校を休学して、誰もが机上で使えるようなゲノム合成装置の開発に取り組んでいる。個々の研究室や医療の現場などで(==自由裁量の低予算で)大きな遺伝子構造を手作りできることを目指す。実現すれば、バイオテクノロジとヘルスケアの分野に重大な革新がもたらされ、巨大研究費を得られない個人〜小規模レベルでイノベーションとユニークな研究が進むことが期待される。

Anand Gupta (20歳、カリフォルニア州Palo Alto)とTony Ho (19歳、カリフォルニア州サンホゼ)は、生物学とコンピュータ科学の知識を生かして、医師が患者を診断する方法を変えようとする。彼らのサービスによって医師や研究者は、バイオメディカルイメージの定量的な分析結果をもらえるので、複雑な疾病の迅速で正確な診断が可能になり、救われる命が増える。

Spencer Hewett (20歳、ペンシルヴェニア州Bryan Mawr)は、特定の業界に限定されない、複数の産業にまたがるような発明に強い関心を持っている。フェローとしてのテーマは、RFIDとモバイルのペイメントを結びつけるNo-Qと呼ばれる技術。レジの行列や万引きをなくすことができる。

Yoonseo Kang (18歳、カナダ・オンタリオ州Mississauga)の認識では、イノベーションと豊かさを生む社会は、知識と生産要素へのアクセスの平等化民主化がないかぎり実現しない。こう考えるYoonseoは、オープンソースのハードウェアが世界中の地域社会が生産力を上げ、目的指向の経済協力を成し遂げていくための鍵だ、と見ている。その目標に向けて彼は、Open Source Ecologyと協働してGlobal Village Construction Setの開発に取り組んでいる。このセットに含まれる50の産業機械により、現代的な快適性を持つ文明の構築が可能となる。

Jimmy Koppel (20歳、ミズーリ州St. Louis)は、ソフトウェア工学とその効率化に関心がある。今日のソフトウェアの改変は何千何百もの小さな同じような調整作業を要し、時間と経費が膨大となる。彼はその過程を自動化するツールにより、問題の解決を目指す。

Ryan Lelek (19歳、インディアナ州Schererville)は15歳で起業家精神に目覚め、まず“インスタントストリーミング”を提供するスタートアップを立ち上げた。今の彼は、ハードウェアとソフトウェアとネットワーク技術の最新の進歩をフル動員してコンピュータ産業に革新をもたらすことに関心がある。フェローとしてのテーマは、人びとの能力発揮を喚起する(==empowerする)シンプルなツールにより、世界を変えることだ。

Ritik Malhotra (19歳、カリフォルニア州サンホゼ)は8歳でプログラミングを始め、12歳で始めたフォーラムは会員32000名に達した。13歳でWebのホスティングサービスやソフトウェアコンサルタントをビジネスとして開始し、初期投資の額の600倍の収益を得た。今の彼はFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアサービス上でコンテンツの発見と共有と配布を効率化する方法に関心がある。Thielのフェローとしては、ユーザたちがWeb全体から拾い集めたおもしろいメディアを共有しあうことによって成長する、自己増殖的なコミュニティを作っている。

Chris Olah (19歳、カナダ・オンタリオ州Toronto) は、3Dプリントを活用してさまざまなものの稀少性を緩和することに関心がある。彼の目標は、3Dプリントを万人の教育補助ツールにし、ベーシックな科学的装置を3Dプリントで作り、生活の質を上げることだ。彼が今取り組んでいるImplicitCADというプロジェクトは、数学を駆使してCADをゼロから再発明し、超安価に提供することだ。

Semon Rezchikov (18歳、ニュージャージー州Hillsborough) は、合成生物学とナノテクとソーシャルネットワークの三者を組み合わせると何ができるか、に関心がある。フェローとしてのテーマは、バイオオートメーションをもっと自由度の高いものにすることによって、設計サイクルをスピードアップし、信頼性の高いパーツのライブラリを作ること。すなわち、合成生物学を科学よりも工学に近いものにすることだ。

Omar Rizwan (18歳、ニュージャージー州East Hanover)は、情報のコントロールと分析によって世界を変えることに関心がある。とりわけ、ビッグデータの集合を分析することにより、人工知能の分野の進歩を加速すること。インターネットの各所から大量のデータを集めて、トレンドを取り出し、結論を演繹することに取り組みたい、と。

Tara Seshan (19歳、コネティカット州New Fairfield)は、全世界的な公衆保健の改善に関心がある。そのためのテクノロジとシンプルなソリューションとコミュニティ単位の変化を作りだしていきたい。彼女が目下開発中のツールは、データの分析と監視と評価を通じて、公衆保健に関する正しい意思決定を支援するもの。フェローとして研究中のテーマは、最少の資源で公衆保健事業を強力に推進できるためのツールの開発だ。

Noor Siddiqui (17歳、ヴァージニア州Clifton)のビジョンは、全世界が助け合い社会になることだ。フェローとしての彼女のテーマは、世界中の学生たちに上昇移動の機会を平等に与え、そして企業がそれら未開拓の労働力を積極的に利用していくこと。次の10年間で10億の人口移動が起きること。

Charlie Stigler (19歳、カリフォルニア州Pacific Palisades)はすでに起業家としての経験が長く、オープンソースの研究アプリケーションSelfControlを作り、Webスタートアップは2社創業した。今の彼は、対話的なWeb体験や研究活動にビデオを利用することによって、教育者たちと彼らの協力者たちの日常のワークフローを改善するアプリケーションZaptionに取り組んでいる。教育が対話的共同作業になることによって、合衆国の教育システムはラジカルに一変する、と彼は信じている。

Ilya Vakhutinsky (20歳、ニュージャージー州Fair Lawn)は、テクノロジとヘルスケアコミュニティとの協働関係に革命をもたらしたい、と考えている。それには、ヘルスケアシステムを今よりもオープンで透明性のあるものにすること。それにより医療費を抜本的に安くし、患者の自主性を涵養することだ。

Taylor Wilson (18歳、アリゾナ州Texarkana)は、核融合を実現した史上最若の人物になった。その後彼は、最低コストで最低線量の能動的反応測定システム(active interrogation system、アクティブ検査システム) を製作した。少量の濃縮ウランでも検出できる。Thielのフェローとしては、その検査システムによるテロ対策と、癌の診断治療のための医療用アイソトープの研究に取り組んでいる。

Connor Zwick (18歳、ウィスコンシン州Waukesha)は、教育に真剣な関心がある。彼はアメリカの古びた教育システムに、テクノロジによる革命をもたらしたい。フェローとしての彼は、Flashcards+と名付けたモバイルの教育プラットホームを手がけている。150万あまりダウンロードされたこのアプリは、誰もが何でもクラウドソースで作られたコンテンツを見て/使って学べるという、適応学習ツールだ。フラッシュカードで作られるそれらの教材コンテンツが、すでにデータベース上に4億枚以上集積している。

そしてこれが、この事業に関するビデオだ:

20 Under 20, The Thiel Fellowshipより(Vimeo提供)

〔余計な訳注: まあこれからの世界は、文科系的な課題のほうが重要度がずっと大きいだろうね。“国際司法”、“多国間貨幣理論”、“民主化社会主義”、etc., etc. …2008年の金融危機も、今のEUの危機も、その再来は絶対に防がないとヤバイよ。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))