アイコンの神秘

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今後のIT業界を占う4つのトレンド

「保存」アイコンについて何が言えるだろうか。それはフロッピーディスクである。それは青色であることが多い。そしてもちろん、他でも指摘されているように、現在コンピューターを使っている人たちの多く(すぐに〈殆ど〉)はそれに触れたことがなく、今後もないだろう。

しかし同じことは「ホーム」アイコン(多くの人々が一軒家を持てない)についても、電話アイコン(黒電話使ってますか?)、ラッソー[画像選択の投げ縄]、虫眼鏡、写真の覆い焼きツールアイコンについても言える。「ゲーム」の象徴がチェッカーボード! コピー&〈ペースト〉[糊付け]等々。

単純な事実は、世界中で認識されている共通の視覚的正書法というものが存在し、それが、アイコンを定期的に改訂すべきだという論理的提案に勝っているということである。読者の多くは、20年前だったらこのアイコンが保存を意味するのか、A:ドライブのアクセスを意味するのか確信が持てなかったろう。今や多くの人々は一生ポータブルストレージに遭遇しないだろう。それでもフロッピーディスクは変更を保存することと強く関連づけられている。間違いなくリムーバブルメディアとしてよりも。だからここで論理は重要ではない。言語では論理よりもシンボルに対する共通認識が重要だ。これらのシンボルが広く使われているのは、それらが広く理解されているからであり、それらが広く理解されているのは、広く使われているからだ。

The Noun Project[名詞プロジェクト]は、このコンセプトの愉快な探求である。辞書にあるすべての概念を32×32ピクセルで表現しようとするものだ。しかしコンピューティング[計算](なんと言う用語だ!)が、平面のビットマップと文字によって効果的に概念を表現するというこのフェーズには収まらなくなるにつれ、新しいアイディアが必要になるかもしれない。

しかし、そんな新しいアイディアが真に新しいものになる可能性はあるのか。われわれが作り、操作するものはほぼ例外なく、実生活の行動や物事に似ている。いったいコンピューティングあるいはオンラインの世界で、前例もなく、「実生活」行動のバーチャル表現でもないものなどあるきだろうか。それは極めて稀であり、稀な何であるかにも議論の余地がある。試してみてほしい。すでに存在しているものを使って説明できないものを見つけることは驚くほど難しい。

話がわかりにくかったかもしれない。言いたかったのは、われわれがバーチャル世界で作り出すアクションは、必然的にリアル世界と類似しているということだ。そしてわれわれはこれらのアクションを表現する際、誤解されることのない一定の共通体験に立ち返ることが約束になっている。最近それは水理学的現象のようになってきている。クラウドストレージ[雲記憶]。Bittorrent[ビット激流]。ストリーミング[流れ]。Thunderbolt[落雷]等々。

データがどこからともなく現れたり、ビームになって消えていくようになった時を何を期待しただろうか。われわれはcavemanゲームで原始的な空メタファーにたどり着いた。そこに至った理由は、あるゆるメタファがそうであるように、すでに人々に内在化している概念に結びつけることによって新しい物事を理解可能にできるからだった。実はフロッピーディスクアイコンが目障りなのは、それが古いからではなく新しいからだ。しかしさかのぼれば、われわれはCRTモニターからアイコンを作ったり、ZIPドライブやうつろなロボット風の顔をした3.5インチハードディスク(私のSSDベースノートパソコンのMacintosh HDアイコンは未だにそれ)といったさらに目障りなものもある。フロッピーディスクはさほど悪い妥協案ではない。

というわけで、保存アイコンが30年前の磁気テープ装置であっても、フリーフォームのマーキーツールが、蓄牛を捕まえる投げ縄であっても、腹を立ててはいけない。iconという単語の語源はギリシャ語のeikonで、その原型である動詞のeikenaiは「似せる」という意味だ。アイコンは機能を模倣していれば十分であり、最新情報を切り取ったものである必要はない。

一方で、今後はリアル世界の創造的アイディアをバーチャル世界で見たり、その逆を経験することが多くなっていくだろう。境界はすでに崩壊しつつあり、両者はすでに長い間互いに漏出しあっている。私が期待するのは、バーチャル世界のリアルで抽象的な表現が発展していくことだ。ファイルに重さはあるのか?インターネットに天気はあるのか?サーバーに個性はあるのか?こうした疑問は今は滑稽に聞こえるが、10年50年100年前の同じ種類の質問に、今はイエスと答えられるかもしれないことを忘れてはいけない。コンピューターはしゃべるのか? ロボットは家を掃除するのか?人類は月面を歩くのか?

将来、最も変革をもたらしうるテクノロジーは、現在最も悪いメタファーを持っているテクノロジーである可能性が高い。奇妙に聞こえるかもしれないが、これは、われわれが作ってきたものは世界の何物にも似ていない、ということを意味している。もしあなたが、自分のデバイス、サイト、サービスあるいはアルゴリズムが正確に何をするのかを説明しようとして言葉に詰まったなら、あなた自身の説明が不十分である可能性もあるが、同時にそれはあなたが何か根本的に新しい強力な何かに取り組んでいる証拠かもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi)