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モバイルアプリ数十万の時代…従来の検索エンジンは無能, その惨状に立ち向かうXyologic

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初期のWebは、いろんなページのランダムな寄せ集めだった。‘Webサーフィン’は文字どおり、波頭から波頭へではなくリンクからリンクへ気ままに移っていくサーフィンだった。しかも、できることはそれしかなかった。そこへYahoo!が現れて、サイトをディレクトリに入れて分類した。でも、Webの‘ロングテイル’*がその姿をわれわれの目の前に現すのは、Googleの登場以降だ。しかしモバイルの世界は、今がまさに、Google登場以前の1994年だ。アプリのロングテイルを露出させるという点ではZwapp、Appsfire、Yappler、Apptizr、Appoliciousなどのスタートアップが頑張ってはいるが、しかしそれでも、iTunesストアやGoogle Play、Widows Market などの店頭は混沌状態だ。今モバイルのユーザは、Webをリンクからリンクへではなく、アプリストアを、あるアプリから別のアプリへとランダムにサーフィンしている。〔*: 日本語Wikipediaの“ロングテール”の項の記述は、Webの構造という文脈では正しくないので、英語版を見てください。(膨大な数のWebサイト集合における)ロングテイルという言葉の原点となった論文が、これです。〕

また、だからこそ、アプリ用の検索エンジンを手がけるスタートアップが後を絶たない。そしてアプリ検索エンジンChompがAppleに買収されたのも、その背景にはこんな厳しい状況がある。

さらに先週は、Chompに前からある機能の一部が、iOS6のApp Storeアプリケーションに実装された。しかしアプリケーションを整理整頓するAppleのシステム自体は(App Storeアプリ自体がまだプレリリースのせいか)前とあまり変わっていない。Appleはアプリの発見方法を改良する好機を、逃してしまったのか?

というより、今では多くの人が、アプリの検索エンジンの有効性に疑問を抱いている。ベルリンのZoe AdamoviczとMatthaus KrzykowskiとMarcin RudolfがXyologicを作ったのも、同じ疑問からだ。

彼ら自身に、語ってもらおう。

“検索という概念は、陳腐化している”、とAdamoviczはオフィスのテーブルに座って語る。窓から国会議事堂が見える(上の画像)。

“古典的な検索エンジンは、ユーザがその意図を検索のクェリで表現する/できる、と想定する。でも、これからは違う。将来的にはアプリケーションはデバイスに最初から内蔵されている。どの車にも照明器具やドアノブなどがあるように。でもそれらのアプリが意味を持つためには、人が実際にそれを使ってみる必要がある。不思議の国のアリスのように、私たちは今、兎の巣穴を転げ落ちている。落ちる先は、新しい世界だ。検索エンジンは、ユーザが情報を求めていると想定する。でもアプリ経済の爆発が、そんな世界を変えてしまった”、と彼女は言う。(ユーザは情報ではなくアプリそのものを求める。)

本当かな? でもその話へ行く前に、Xyologicの主張を検討してみよう。

これまでのXyologicは、アプリの分析企業だった。今は、違う。

最近衣替えした同社は、分析企業というより、メインストリームのユーザを対象とするモバイルアプリ検索エンジンだ。とくに、Androidのゲームに焦点を当てている。次の対象はiOSのアプリだ。彼らの大きなディレクトリは、700あまりのカテゴリーに枝分かれしているが、そのうちの100がゲーム関連だ。下の画像は、ベータ時のインタフェイスだ。

これを達成するためにXyoは最近、Signia Venture Partnersからの大きな資金調達を発表した。このVCは、ゲームの起業家Rick Thompson(Playdom)やKlaas Kersting(Gameforge)、そしてSoundcloudのファウンダEric Wahlforssらが率いている。

しかし、彼らの目の前にそびえている問題は大きい。Apple自身も、今のApp Storeが混乱の極みであることを理解している。

今年Xyoは、iOSアプリの60%は、まったくダウンロードされたことがないと主張した。

60%は多すぎるようにも思えるが、でもiOSアプリは今65万以上あるのだから、だいたい正しい数字ではないか。とりわけ問題は、ふつうの人が自分の関心や欲求に合うアプリを見つけるのは至難だ、ということ。

ボットではなく人間がアプリを見つけている率は、Apple App Storeでは10000本に対し、そしてAndroid/Google Playでは15000本に対し、わずかに200本なのだ。

だから、だーれも、なぁんにも、見つけることができない、という極端な言い方がむしろ当たっている。iOSアプリでは、全アプリの0.1%が全ダウンロード数の50%を占める。Androidでは、一度でもダウンロードされたことのあるアプリは全体の約30〜50%だ。

これでは、とうてい、気楽にデベロッパなんかやってらんない。

しかも困るのはデベロッパだけではない。VCたちはアプリストアに対して激しく欲求不満だ。せっかく投資したスタートアップが、ブラックホールの彼方に消えてしまうのだから。

そしてここにXyologicの主張が出てくるのだが、彼らによると、消費者が自分の意図や欲求を検索で正しく指定できることは、きわめて稀である。だいたいみんな、ありふれた一般的なキーワードで検索するから、人気アプリばかりが上位に出てくるのだ。

その結果、同社によると、モバイルアプリの世界は、フィットネスアプリとか、7歳児用の教育アプリとか、そういう一般的なカテゴリーで分類されてしまう。Krzykowskiによると、検索でZyngaやAngry Birdsなど、固有名詞が指定されるケースは5%に満たない。

それでは、たとえばAngry Birdsが結果の上位に出るクェリは何だろう? “豚を撃つ”か? “鳥を投げる”か?

人びとはブランド名で検索をしないから、逆にタクシーやバスの車内の広告にはブランド名が氾濫するのだ。ブランド名の知名度を上げたいから。それでも消費者の80%以上は、“パズルゲーム”とか“音楽”など一般的な言葉を検索で使う。

Krzykowskiによると、ゲーム以外では人びとは、睡眠介助とかタスクリストなど、具体的な言葉を使う。“ビジネスアプリ”という一般的な言葉は使わない。同じく、健康とフィットネスという一般的な言葉ではなく、トレーニングのアシスタントとか、射撃ゲームなど具体的な指定をする。

Xyoが取り組んでいるのが、こういった問題だ。“ビジョンを語ったことはないが、うちはデータ分析の会社だと思われている。でもそのころは、自己資金だけだった。当時から実際に何をやっていたかというと、モバイルアプリの発見と検索、という問題に取り組んでいたんだ”。

彼によれば、Xyoはベルリンからも、技術をパテントで独占する企業だけでなく、独創的なスタートアップが生まれることもある、という一例だが、 “うちの技術も真似するのはすごく難しい”、と言う。

今同社のプロダクトはAndroid用のみだが、もうすぐiOS用も出る。彼によれば、“iOSユーザからも、とっても期待されている”そうだ。

Xyoはアプリの発見という問題を、こう捉える: たとえばiTunesストアへ行くと、ロゴがあり、タイトルがあり、一般的なカテゴリーがある。でもXyoは、人びとはロゴには関心がないことを見つけた。人びとが実際に困っているのは、アプリの格付け(既存ユーザによる評価)がないことだ。

そこでXyoは毎月4000万のユーザによる格付けを調べることによって、アプリのロゴを軽視し、カテゴリーの種類〜数をうーんと増やし、それらのアプリのダウンロード数を表示するインタフェイスを作った。

そこには、‘このアプリをダウンロードした人はxxxとyyyもダウンロードしました’という案内もある。これをやるのに、Facebookはまったく利用していない。

“うちはまだ、データを公開していない。でもこれまでの利用実績を見ると、アプリのロングテイルを露出することに、ある程度成功しているようだ”、と彼は言う。“今後は、ソーシャルグラフとアプリとの関係を見ていくことが重要になるだろう。アプリとゲームの関心グラフとの関係は、かなり把握したが、ソーシャルネットワークの取り込みがこれからの課題だ”。

彼らは、Facebookのストリームに名前が登場するアプリと、実際にヴァイラルに人気が広まるアプリとは無関係であることも、発見した。

ただしXyo自身はストアではないので、アプリとユーザに関する彼らが発見したデータで、どこかのストアと競合するようなことにはならない。

現在Xyoは、Android、Google TV、iOS、Windows、それにAmazonのアプリをクロールしている。iOS用のXyoの発売は1か月後を予定している。

Adamoviczはこう概説する: “昔はみんな、大きなシステムの構築を勉強させられた。今では、小さなアプリがあちこちでたくさん作られて、それらが互いに接続していく時代だ。車にたとえると、その車専用の大きな特殊なソフトが動くのではなくて、複数の汎用的なソフトの組み合わせが動くようになる。またハードウェア側も、最初から、そういう標準ソフトへの対応を前提して作られるようになる”。

彼女によると、そういう傾向の進展により、今後はあらゆる製品がインテリジェントになり、相互接続が可能になる。あらゆる工業デザインが、有脳と相互通信を前提して行われるようになる。

“5〜10年後には、身の回りのあらゆる物がインテリジェントになるわ。それらがすべてユーザと対話すると、情報量が膨大になりすぎるから、検索ではなく情報の発見と問い合わせがまったく新しいコンセプトの技術にならないといけない”、と彼女は言う。“今のモバイルのアプリストアの現状は、そういう、膨大すぎる情報量==ロングテイルのブラックホール化、という未来の問題を先取りしている。だからそれは、うちとしても取り組む価値が大きい。今のアプリストアの問題を解決できれば、未来のオールインテリジェント時代に対応する情報発見/問い合わせテクノロジのヒントがつかめるはずだ”。

確かにそうだ。Googleが依拠しているユーザの意図を推量する技術は、アプリ全盛の時代には通用しない。また、アプリを単純にソーシャル化するだけでは、問題の解決にならない。人が本当に必要とする‘発見’を、それはもたらすことができない。

“うちのアルゴリズムは、データの中へ入っていって、どんな“関心集合”があり得るかを見つける。それを見つけたら、人間ユーザに有益な情報を配布できる。データが関心をインスパイアするのよ”、と彼女は言う。

だから未来のある日には、あなたが街を歩いているとXyologicが、「今こんなものがありますよ」と、アプリの名前や内容ではなくて、関心事項を教えてくれる。それがあなたの今の関心にフィットしていたら、その先に、適確なアプリが見つかるだろう。

Adamoviczも曰く: “Zyngaがタクシーで広告してるなんて、あほらしいわ。それは、カラシニコフ方式よ!(めくら撃ちの一斉射撃)”。

たしかにそうだ。アプリが引っ張る世界は、広告のめくら撃ちから、個人の関心への正しい対応、に変わらなければならない。

  「ここからどっちへ行けばいいのか、教えてくださらない?」
  「それは、あんたがどこへ行きたいかによるのぉ」、と猫は言った。
  「どこでもいいのよ、私」、とアリスは言った。
  「じゃあ、どっちへ行ったっていいじゃろうよ」、と猫は言った。
  「…どこかへ行ければそれでいいの」、とアリスは説明を加えた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))