クラウド化時代に取り残されそうだと不安な人へ

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JustinMoore編集部注Justin Mooreはデータ、アプリケーション、およびシステムの稼働率を高めるためのクラウドソリューションを提供するAxcientのCEO。Twitterでは@justinrmooreのアカウントで活動している。

影響の大きな新技術が出てくると、アナリストたちは当該技術がいつまでに主流となるのかとの予測を立てずにはいられなくなるようだ。たとえば2007年、Gartnerは全PCが2010年までに仮想化されると予測していた。しかし予測は未だ実現せず、そのうちに実現しそうだとも思えない。最近ではビジネスリーダーやアナリストが、ビジネスで利用するすべてのシステムは5年以内にクラウド化するだろうと予測している。これは少々極端に走った意見だというべきだろう。こうした極端な意見はそのまま鵜呑みにすべきではないだろう。

1. 蓄積した情報資産が膨大に過ぎる

ビジネスの運用方法と、変化を導入するやり方を経験したことがある人ならば、何らかの変化には多くの時間と費用がかかることをご存知だろう。非クラウド環境のサーバを利用するネットワークや、デスクトップで利用するソフトウェアなどが数十年にわたってビジネスを支えてきた。大切なデータおよび業務用システムが、従来型ネットワークの中に貯めこまれている。また、システムを効率的に稼働させるにいたるまでには、非常に多くのリソースが投入されているのが一般的だ。「壊れていないものを直してはいけない」という言葉も何か極端な言葉ではある。しかし一般的にIT部門のひとたちは、限られたリソースをどこに投入して変更を行うべきかの判断に、しばしばこの言葉を基準にしていることも事実だ。

誤解されないように言っておくが、決して個人的に「アンチクラウド」の立場にあるわけではない。むしろ、クラウドの持つ可能性がほとんど理解されていない頃にクラウドソリューションを提供するサービスを立ち上げたりもした。アクセシビリティやスケーラビリティの面で、方向としては確かにクラウド化へと進んでいくだろうと考えている。しかし自身をリアリストだとも考えている。企業には予算に基づくプライオリティというものがある。そして既存インフラをすべて捨て去ってリニューアルするというのは、ビジネス的にはほとんどあり得ないことでもあるのだ。運用部門のチーフがクラウドの信奉者であったとしても、1年の予算をすべてインフラの更新に使うことはできず、ビジネスを成長させるための仕事をこなしていく必要があるのだ。クラウド化をするにあたっても、どの部分について行うべきであるのかをきちんと判断し、そして徐々に変更していくのが一般的なあり方であるはずだ。

2. クラウドの費用がいつも安いとは限らない

「クラウド」という言葉が一般にも知れ渡るようになり、そして利用者側企業が学習したことだ。すなわち「クラウド化は費用対効果の面でも勝る」という言葉は、常に真実であるとも限らない。クラウド化していない既存システムを全面的に乗り換えるとなると尚更のことだ。利用するシステムのサイズやニーズによって、クラウド化によって費用効率が上がるということはあるだろう。会計にSaaSを用いたり、CRMにSalesforceを使ったりすれば、費用を抑えて生産性を上げることができるだろう。しかしそうはいってもクラウド化システムを利用するのにも費用はかかる。たいていはさほど高価とも思えない額で利用することができるだろう。しかし月間の運用費に加わることとなり、クラウドサービスを使えば使うほどビジネスコストも上がっていくことになるわけだ。

こうした面からも、既存の非クラウド化サービスを使い続けるという選択肢も当然出てくるものだろう。たとえばAxcientではいまだにSharePointを使っている。使い勝手がよさそうなSaaS製品があることは知っている。しかしそれが全てにおいて完璧なソリューションを提供しているわけでもない。まだまだ既存の仕組みを使い続けることは可能で、乗り換えについてはプライオリティ付けも行なっていない。もちろんこうした状況は用いているクラウドサービスによっても大いに異なるものだ。中には利用を開始すれば直ちにメリットがあるというものもあるのは当然だ。

3. クラウド導入による効果が等比級数的であれば導入は進む

クラウドサービスの導入により、非常に多くの面でのメリットが期待できるのであれば、導入も一層進んでいくことだろう。費用と時間をかけて、既存システムに入れ替えて導入を行うのであるから、生産性の面で爆発的な工場が期待されるのだ。現行システムを導入するのにも費用はかかっており、またIT部門がシステムの運用を行なっている。「どうしても」という事情がなければ、システムの乗り換えなどは必要ないものとして却下されてしまいがちとなる。

たとえばバックアップや復元サービスの世界では、中小企業を中心に未だに磁気テープベースのシステムが運用されていたりもする。10年前には屋根裏部屋からすらVHSテープも消え去り、もう磁気テープなどはほとんど目にしないものとなった。しかしその後に登場したディスク等のバックアップメディアが革新的に優れているというものでもなく、費用を大幅に削減することができるというわけでもないため、従来の仕組みを踏襲しているわけだ。但し最近になって、クラウドベースのバックアップおよびリカバリサービスが、ビジネスにとって圧倒的なメリットを提供できるような形に進化してきた。データおよびアプリケーションをAxcientなどのサービスによりバックアップしておくことで、障害発生後直ちにシステムをリカバリして業務を遂行することができるようになってきた。テープはもちろんその後のディスクベースによる時代でも、データおよびシステムの復元には数時間ないし数日を要するのが一般的だった。クラウドによっていつでも常にシステムを稼働させておくことができるようになり、生産性と売上の確保に役立つようになったわけだ。このような目に見える進化が現れてようやく、既存システムから乗り換える企業が出てくるようになる。

いつクラウド化を行うべきなのか

デスクトップソフトウェアや、社内サーバーなどをすぐにでも引退させるのが時代の流れであると考えていた人にも、落ち着きを取り戻してもらえただろうか。それが本稿の目的であるわけだが、しかしクラウドの重要性や今後の成長を否定するつもりはない。クラウドサービスは、一般的な新技術がそうであるように、徐々に広まっていくことになる。新たな企業が生まれる際は、当初よりすべてのサービスをクラウドで賄うということもあるだろう。既存ビジネスにとっても、クラウドの提供する内容が、十分にペイするものとなればシステムの乗り換えが行われることになる。

但し、クラウド化技術だけが、突如として魔法のように広まり、1年や2年、あるいは5年のスパンで全てを置き換えることになるというのは考えられない。そうは言ってもビジネスロジックやアプリケーションなどは既に多くクラウド化されつつある。いつか既存のローカルサーバ型システムとクラウド化システムの比率が入れ替わることになる。これはおそらくそう遠くない未来にやってくることになるだろう。しばらくのあいだは、クラウド化のもたらすメリットとデメリットのバランスをしっかりと見極めることが大切だろう。単なる流行からでなく、真に役立つSaaSソリューションを発見すること。そしてタイミングを見極めることが、ビジネス面でのアドバンテージをもたらすことになるだろう。

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(翻訳:Maeda, H)