5人の本物の経済学者たちはBitcoinの未来をどう考えているか

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編集者注記: Semil Shahは本誌TechCrunchの寄稿者だ。彼をTwitterでフォローするには、@semilへ。

今はBitcoinにバブルがあるだけでなく、Bitcoinに関する記事にもバブルがある。ぼくのこの記事も、その屋上屋を重ねるようなものだが、今週事故があったにもかかわらず、性懲りもなく書いているのには、ちょっとしたねらいがあるからだ。数週間前にはBitcoinに関するぼく自身の考えを書いたけど、ずっと気になっていたのは、この通貨の将来について書くことはぼくの適任ではない、ということだ。そう思った理由の一つはたぶん、この現象がわれわれ全員をあまりにも魅惑しているからだ。だから、自分の得意でない分野に手を出したり、Twitterの上のみんなのように“にわか大学教授”を気取るよりも、餅については餅屋を探すべきだ、と判断した。そして、今実際に経済学者である人たちを、ぼくの在学時の教授やクラスメート、友だちに紹介してもらった人などの中から選び、Bitcoinの未来について手短に意見を述べてもらった。ただし、本格的な評論ではなく、カジュアルで楽しい文を、とお願いした。おもしろいことに、ぼくの在学時の教授たちは、Bitcoinのことを知らない人が多くて、この執筆機会をパスすることを選んだ。あとで彼らに、Bitcoinについて“講義”してあげようと思う。運良く、何人かの経済学者に協力してもらえたので、その人たちの考えを以下に再掲しよう:

Chris Robert, 現職はハーバード大の公共政策と経済開発の教授:

知性のある人たちが、人民の人民による政府が管理している通貨システムよりも、匿名のコンピュータハッカーたちが作って管理している通貨システムの方を信頼しているのなら、真剣な考慮と対応を要するだろう。幸いにもまだ、そこまでは至っていない。今日、Bitcoinは、経済の長期的な混迷とグローバルな金融システムへの不信の増大から生じたメディア投機であるにすぎない。ただし、このメディア投機はかなり長期の金融投機として持続するかもしれない。そしてその間に、ある程度金融の知識を持った技術マニアたちが、新しいバブルに乗ずることをねらって、ますます多く投機に参加するだろう。

企業の有価証券や、先物契約、あるいはデリバティブでさえ、Bitcoinほど放恣な価値感を有してはいない。そのバブルは、需要が供給よりも高速に増えるかぎり、いくらでも肥大していく。そしてネットワークがクラッシュしないかぎり、新しい暗号化手法がバブルを抑制することもなく、基盤にある匿名性の欠如に人びとが思い悩むこともなく、プライベートキーを失っていくらかの財を失った人が大声で嘆くこともなく、“発掘”の改良(やハック)が供給を突然刺激することもない。どんなバブルでも、バブルから利益を得ようとすることにはリスクが伴う。しかしわれわれのグローバル経済は、それにあえて挑戦する人びとに事欠かない。だから、金融投機の新しい、ひょっとしたらエキサイティングな手段として、Bitcoinは当分存続するのだろう。

Robert McMillan, 元合衆国通商委員会のエコノミストでスタンフォードの経済学教授。今はHNC Advisors AGのポートフォリオ管理部長兼計量調査部長:

今のBitcoinは死んでる。彼の冥福を祈ろう。保存しやすくて、盗まれにくくて、偽造も困難な交換媒体には、本物の価値がある。しかもそれは、子安貝や象牙のように絶滅の危惧がなく、金(きん)のように環境によって劣化するものであってはならない。残念ながら、流動性の罠に関するPaul Krugmanの著作を読んだ人なら知ってるはずだが、Bitcoinは供給が有限であり、しかもそのことが知られているので、通貨としての有用性には本質的に限界がある*。さらにまた、Bitcoinにはプラチナなどのように使用価値がない。このことも、致命的だ。にもかかわらずその欠陥は、実装にあり、アイデアそのものにあるのではない。いずれ“通貨3.0”の時代がやってきたときには、通貨としての欠陥を完全に修復したBitcoinが、メジャーな通貨の一つとしてForex先物の流動化市場に乗るかもしれない。あるいは、新たに発見された素数を交換の単位とする新通貨が登場するかもしれない。それらの“発掘”は高費用で、供給が有限だが、暗号技術にような使用価値はあるだろう。貨幣の一大変化が、きみのそばにもやってくるかもしれないぞ。

〔*: 関連記事。〕

Matthew Bishop, 現職はThe Economist誌の合衆国編集長。今日まで、22年在職:

貨幣の未来について最近“In Gold We Trust?”という本を書いたが、そこでも言ってるように、金(きん)の再流行とBitcoinは、同じコイン(!)の裏表だ。どちらも、量的緩和の時代における、政府が支える公認貨幣の健全性に対する信頼の下落、に対する反応だ。しかし私の考えでは、Bitcoinなどシリコンバレーで開発されたデジタル通貨の、アルゴリズムで貨幣供給をコントロールするやり方は、なかなか健全な価値保存媒体になりえないだろう。これらの通貨が抱える最大のリスクは、政府が腰を上げて、公認通貨に代わる代替通貨を破壊するかもしれないことだ。そもそも、主権国家がアルゴリズムに基づく通貨を発行したら、どういうことになるのか? それは、公認通貨を無用にしてしまうのだろうか?

Brett Gordon, 現職はコロンビア大学経営学科大学院(スクールオブビジネス)の教授:

Bitcoinの未来について議論するには、二つの視点がある。ひとつは短期的な視点: もしもこれがバブルなら、はじけるのはいつか? 投機的バブルの終わりを予言することは、難しいことで悪名高い。運良く正しく時期を当てた者は、大儲けできるが、その他大勢のわれわれには縁のない話だ。Bitcoinの価格変動表は、1995年から2000年初めごろまでのNasdaqを思い出させる。両者は大きく違ってはいるけど、でもあのときのNasdaqははじける直前のバブルの典型だった。BitcoinのGoogle Trendsのチャートも、同じ形をしている。デジタル通貨をめぐるメディアの狂乱が収まったら、投資家の関心も冷えるのではないか。

第二は、長期的な視点: 5〜10年後に、Bitcoinの市場はどうなっているか? これは、バブルのピークを予言するよりも難しい。Bitcoinは、分散暗号化通貨というものの、概念実証になりうるのか? その答が、Bitcoinの長期的な命運を左右するだろう。二つの利点は、Bitcoinは本質的にデフレ指向であることと、トランザクションが匿名であることだ。最近は金融危機が頻発し、またオンラインのプライバシーに関する懸念も増している。この二つは、Bitcoinに有利に作用するだろう。というか、未来の暗号化通貨全般に対して。

Peter Rodriguez, 現職はヴァージニア大学ダーデンスクールオブビジネスの教授:

一見したところ、Bitcoinには特別なものはなにもない。基本的には、何でも擬似通貨として使える。また公認通貨に対する不安も昔からあり、中央銀行に依存しすぎることのリスクを避けようとする動きも、新しいものではない。というより、金本位制以後の世界における公認通貨(とくに紙幣)の支配はほとんど驚異だ。しかし、公認通貨を支える信任が揺らぐと、人びとはほかの、管理の容易な価値保存手段に頼ろうとする。ベルリンの壁の崩壊後に、ロシアやそのほかの旧ソ連邦構成国では、タバコとウォッカとコニャックの三つが、通貨に代わって横行した。タバコは1ドル札、ウォッカは10ドル札、コニャックは100ドル札、それぐらいの価値感で流通した。

ある意味でBitcoinは、仮想タバコの一箱にすぎない。しかし別の意味では、革命的だ。タバコには本質的な価値と用途がある…木綿や、あるいは金(きん)にさえも、使用価値がある。それらに対し、Bitcoinはそれだけで価値がある。紙幣や野球カードのような用途〜使用価値は、Bitcoinにない。だから、存在価値を確立して投資家たちの信頼を長くつなぎ止めることができれば、Bitcoinを、その一時的に流行している価値保存形態から本物の通貨に変える機関も育つだろう。そしてそうなれば、Bitcoinは信頼できる交換媒体および金額表現になり、世界に公式の場を得るだろう。あくまでも、最終的には‘本物の’通貨で取引される物品の価値を一時的に表現するにすぎなくても、Bitcoinはまったく新しいものになる: それは、本当の、ステートレスな仮想通貨で、それらを取り巻く一連のルールに対する信任以外の何ものにも根ざしていない〔国家による公認とかはない〕。全部が内部崩壊することもありえるが、まずそれはないだろう。しかし通貨はつねに試練に遭っているのであり、いわゆる本物の通貨でさえ、存立の危機を何度も経験している。したがって、Bitcoinがぐらつくか、墜落するか、われわれ全員を恐怖のジェットコースターに乗せてしまうか、などの問いはどうでもよい。問うべき唯一の問題は、それが通貨が必ず経験する試練を生き延びるかどうかだ。それが生き延びるなら、どんなに低い価値しか持たなくても、価値の保存媒体と、金融と、仮想経済の独立性に関するわれわれの概念を変えるだろう。

写真クレジット: Glen Cooper / Creative Commons Flickr

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))