出版社側には良いことずくめのKindle MatchBook。プログラム参加を躊躇う理由はなし!

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少し前に、Amazonは電子書籍リーダーであるKindle Paperwhiteの新版をアナウンスした。これはこれでなかなか良さそうなものに見える。但し、この発表について世間の耳目を集めたのはMatchBookという新たなプログラムの方だった。紙の書籍を買った人に対し、電子書籍版を無料ないし安価で提供するというものだ。提供するかしないか、価格をどうするかについては作家や出版社側が決定する。

このプログラムについての要件等を確認してみると、紙の本や電子(Kindle)書籍を出版している作家にとって、なかなか魅力的なものであるようだ。Gooseberry Bluff Community College of Magicの作者であるDavid Schwartzも次のように述べている。「デメリットは何もないように思う。少なくとも私にとっては、良いことだらけに見える。ロイヤルティは変わらないし、(理論的には)販売のチャンスが増えることになるわけだ」とのこと。確かに良いことばかりのように思えるのだ。

Kindle Matchbookプログラムには、いろいろと参加要件が定められている。但し、厄介に感じるようなものはない。「これまでに書いた書籍の売り上げを伸ばす手段を提供する」という目的にしたがって運用されるものであるようだ。基本的に、Amazonで扱う紙の本を出版していて、かつKindle Direct Publishing(KDP)プログラムに参加していれば、誰でも使うことができるようだ。

Amazonにも確認したのだが、Kindle Direct Publishing Select(KDPセレクト)プログラムの方に参加している必要はないようだ。

つまり、紙の本を既に販売していて、それに加えてKindle版を販売したいと考えた場合、Amazonの独占販売期間を確保する必要はないということだ。KDPセレクトのメンバーは、90日程度の間、Amazonでの独占販売期間を設ける必要がある。

MatchBookでの提供価格については2ドル99セント、1ドル99セント、99セント、そして無料の4つから選ぶことになる。プログラムに参加するタイトルを選ぶのは非常に簡単で、リストからチェックボックスをクリックするだけだ。ほとんど手間のかからないオプトイン方式はいかにもAmazon風のもので、きっと数多くの作家がこのプログラムへの参加を検討するようになることだろう。ともかく参加する作品を決めれば、あとは価格を設定するだけだ。尚、これにともなって「プロモーション価格」の設定もする必要がある。これは通常価格の50%以上、割り引く必要がある。Amazonは「キャンペーンであるからには50%は割り引くことにしたい」としている。

現在用意されているロイヤルティレートは2種類ある。これは販売地域の差によって変わってくるものだ。電子書籍にも同じ率が適用されることになり、やはり35%あるいは70%を受け取ることになる。電子書籍を安価で配布するということは、当然にロイヤルティーの額も低くなる。しかし「新たな販路」が拓けたわけで、むろんプラスに評価すべきことだと思う。

まだこのMatchBookプログラムについての表示が現れないという人もいるだろう。まずは出版社レベルでのオプトインが必要であり、それが済まないと個々の書籍についての処理ができないこともある。ともかく10月に予定されているプログラム開始時には1万冊程度を準備するということになっている。ただしAmazon Publishingの利用者(標準でMatchBookオプションがオンになっている)およびインディーズ系の出版者は直ちにプログラムに参加することができるし、すべきであろうと思う。デメリットはほとんどないと言える。もちろん紙の書籍を販売していなければ参加できないのだが、実はこれについてもAmazonは解決策を提供している。電子書籍を紙化するプログラムの提供も行っているのだ。

また、New Island BooksのエディトリアルディレクターであるEoin Purcellは次のように言っている。すなわち、MatchBookプログラムの導入により、電子書籍化していないものを電子化しようという動機付けになるとのこと。売り上げのためのチャネルがひとつ増えることとなり、デジタル書籍化を躊躇っていた人が考えなおすきっかけとなることもあるだろうという話だ。

個人的には、このプログラムがむしろ紙の書籍の売り上げをも伸ばす方向に機能すると考えている。1ドルだか2ドルの追加料金でKindle版も入手できるのなら、紙の本をもっと買うようになるだろう。紙版があれば、電気のないところ、ないしは電子デバイスが使えないところでも本を読むことができる。手に触れる紙の感触も好きだ。さらに、コレクターアイテムとして将来的に価値を持つことになる可能性をもつのも、むろん紙の本の方だ。

また、本のコレクターであるわけではないのだが、Ozの初版などについてはやはり痛めてしまうのがもったいないとは感じる。それで再読する際にはKindle版を読むというようなことをしているのだ。Amazonの新プログラムがこうした古い本を対象にするものでないことは理解している。しかし豪華装丁本などについては、実際に読むためのものとして、電子版を欲しがったりする人もいるだろう。

一般の人が、紙版と電子版の双方を購入しようと思うのかどうか、それはわからない。

Schwartzは卑近な例に過ぎないとしつつ、自著のGooseberry Bluffについては紙版とKindle版の双方を買ってくれた人がいると話す。「Kindleを持っていない人や、紙版でないとダメだと言っている人もいます。但し、MatchBookプログラムのスタートにより、電子書籍を買うべきかどうか悩んでいる人にもきっかけを与えて、考えてもらうことができると思うのです。これまで通りに紙版を購入して、そして安価に電子書籍版も購入できるわけですからね。Amazonとしても、そういう層を取り込んで電子書籍の普及にはずみをつけたい意味もあるのでしょう」。

取り敢えずのところ、これまでに多くの書籍を出してきた出版者や著者にとって良いことずくめの話であるように思える。紙版の本のオーナーが、改めてデジタル版を買い足す動きも出てくることだろう。プログラムが発表になってから、これまでのAmazon利用歴をチェックしてみた(利用頻度にはかなりの波がある)。そして懐かしく思い出して、ぜひ読み返したいという本も見つけた。しかし箱か何かにいれて、どこかにしまいこんでしまって行方がわからない。きっとAmazonは、そういう人が多いはずだと考えたのだろう。躊躇っている出版者があれば、ぜひともプログラム参加を検討すべきだと思うのだ。

Image Credit: amy gizienski / Flickr CC

(訳注:本稿はすべて米国Amazonでの話です)

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(翻訳:Maeda, H)