企業のストレージを変えた四大特許

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テック企業と政府の官民恊働プロジェクトの行く末

[筆者: Satyam Vaghani]

編集者注記: Satyam VaghaniはPernixDataの協同ファウンダでCTO、同社はシリコンバレーに拠を置くエンタプライズ(企業向け)ストレージのスタートアップだ。

スポーツファンはFinal Four(準決勝に残った4チーム/4人)に興奮する。それは大学フットボールの4チームによるプレイオフのこともあれば、ウィンブルドンのセミファイナルの選手たちなど、そしていちばん有名なのはNCAAバスケットボールのMarch Madnessで勝ち上がったチームだ。今年のトーナメントはもう始まっているから、ここでは、世界でいちばんインパクトが大きかったストレージ関連の特許4つを、Final FourあるいはFab Fourとして取り上げてみよう。

その競争は実に激しい。大学バスケットボールのMarch Madnessは68校で始まるが、コンピュータ技術の分野は、合衆国特許庁がこの50年間に認めた特許の数だけでも1100万件あまりある。ITストレージ関連がいくつあるか、よく知らないけど、少なく見積もっても数千は下るまい。

その中から4つを選ぶ基準は、きわめてシンプルだ。その特許が本当に偉大で革新的なイノベーションであること、発明した企業に大成功をもたらしたこと、そして、セクシーであること。ストレージの世界での“セクシー”のことだけど、もちろん。

では始めよう。今あなたの前にはトーナメント表があり、そして私は、ストレージゲームの実況を担当するスポーツキャスターだ。では、エンタプライズストレージの世界を変えた4つの特許を、順不同で取り上げよう。

1. 重複排除…2005年にData Domainが取得した特許6,928,526

Data Domainは21世紀の初めに、ある明確な使命を抱(いだ)いて創業された企業だ。それは、バックアップストレージの市場を、コスト効率の良いディスク方式でディスラプトし、テープを置換することだった。

当時は、予備的ストレージやバックアップストレージといえば、もっぱらテープだった。テープは容量が多くて、しかも安上がりだった。毎日アクセスする必要のないバックアップデータを高価なディスクストレージに保存するのは、意味のないことだった。

ここから、クラウドベースのバックアップなど新しい技術が生まれ育った。

そして2005年の8月22日に、Data Domainが、“Efficient Data StorageSystem”(効率的なデータストレージシステム)と題する特許を取得した、と発表した。Ben ZhuとHugo Pattersonと同社のチーフサイエンティストKai Liが発明したこの技術は、平凡なタイトルであるにも関わらず、重複除外(deduplication)と呼ばれる革命的なイノベーションだった。

重複除外はデータの冗長部分を素早く見つけて削除するので、複数の小さなファイルのバックアップコピーを作るとき、無駄が生じない。たとえば一つのファイルを5つのディレクトリに計5回コピーしようとしているとき、Data Domainが発明した方法は重複を見つけて1回だけそのファイルを保存する。

この技術で、ディスクストレージのコストがテープと肩を並べるまでになった。ここから、クラウドベースのバックアップなど新しい技術が生まれ育った。クラウドでテープを使うことはなく、どうしてもネットワークからディスクを読み書きする形になるからだ。Data Domainの特許は、データバックアップのあり方を変えた。

2009年に、EMCがData Domainを20億ドルあまりで買収した。

2. WAFLでリード/ライトを効率化…2001年にNetAppが取得した特許6,289,356

NetAppは、ディスクの問題を解決した。ディスクでは、シーケンシャルなリード/ライトはきわめて速いが、ランダムなリード/ライトがとても遅い。しかし、シーケンシャルなリード/ライトをもっぱら使うアプリケーションは、世の中にほとんどない。

NetAppのDavid HitzとMichael MalcolmとJames LauとByron Rakitzisは、データやメタデータをディスク上の決まった位置に保存しなくてもよい方法を見つけた。彼らはその方法を、Write Anywhere File Layout(WAFL)(どこにライトしてもよいファイルレイアウト)と呼んだ。こうして、シーケンシャルvs.ランダムの問題は解決した。〔参考記事(1)(2)

シーケンシャルなリード/ライトをもっぱら使うアプリケーションは、世の中にほとんどない。

WAFLの重要な特長は、ファイルシステムのリードオンリーのコピーであるスナップショットを素早く作る能力だ。これによってユーザはうっかり削除されたファイルを回復できるし、データを喪失した場合でも仕事を続行できる。WAFLは、エンタプライズ級のストレージシステムの重要な機能として、スナップショット作成をプロダクト化した。今ではフラッシュメモリの配列がWAFLを恐竜の仲間へと貶(おとし)めようとしているが、それはストレージの進化において非常に重要な技術であり、NetAppはこれで有名になった。またWAFLが起こしたディスラプトは、過去の方式にしがみつくことの危険性を示している好例だ。

3. 仮想ホットスペアつき分散FS…2006年にIsilon Systemsが獲得した特許7,146,524

特許にはまるで文章のような長い名前が多いが、これもまさにそうだ: “Systems and methods for providing a distributed file system incorporating a virtual hot spare“(仮想ホットスペアを持つ分散ファイルシステムを提供するためのシステムと方法)。この名前が指しているのは、単一の論理的ファイルシステムのようにアクセスできる複数のスマートストレージユニットにファイルデータを保存する、革新的な技術だ。

当時の同社のプレスリリースはこう言っている: “この中核的なデータ保護機能…Isilon IQstorageクラスタの空きスペースにデータを動的に再生産する技術は、無用で余分なストレージユニットやサーバやスペアのディスクドライブの必要性を排除し、顧客のストレージ環境のコストと複雑性を大幅に削減する”

良いプロダクトは時間と使用経験に基づくデータによって、偉大なプロダクトになりえる。

この特許はSujal PatelとPaul Mikesell、Darren Schack、およびAaron Passeyの発明で、これに基づいてIsilonは、実用性のある分散ストレージシステムを作って発売した。それは当時のこの種の商用製品の中でおそらく、もっとも成功した製品だった。

分散システムのソフトウェアは、部位の数が多くて、独特の性格があるため、とても作りにくい。Isilonの連中は特定のハードウェアを前提としてファイルシステムを書いたので、 面倒な部分を省き、工程を単純化できた。それは、エンジニアリングの良きレッスンでもあった。良いエンジニアリングは、とりあえず今の需要を満たすもっとも実用的なプロダクトを作ることであり、必ずしも今から10年後のもっともパーフェクトなプロダクトを作ることではない。良いエンジニアリングは、反復的な工程でもある。良いプロダクトは時間と使用経験に基づくデータによって、偉大なプロダクトになりえるのだ。

EMCは2010年にIsilonを22億5000万ドルで買収し、今でもHadoopやそのほかの需要に応じて中核的技術のアップデートを継続している。

4. 仮想マシンのストレージ…VMwareが2014年に獲得した特許8,650,359

言うまでもなくVMwareは、物理的なコンピュータを複数の仮想コンピュータに仕立てる技術のパイオニアで、x86のアーキテクチャを仮想化した初の企業だ。ちなみにVMwareのScott DevineとEdouard BugnionとMendel Rosenblumが特許第6,397,242号 – “Virtualization system including a virtual machine monitor for a Computer with segmented Architecture”(セグメント方式のアーキテクチャによるコンピュータのための仮想マシンモニタを含む仮想化システム)を出願したのは1998年の10月26日で、公示されたのが2002年の5月28日だ。〔Computer with segmented Architecture, x86のこと。〕

しかしVMwareは、ストレージの能力を高度化するための技術でも、特許をいくつか取っている。(情報開示: 私は当時VMwareのストレージグループのCTOとしてこれらの特許のいくつかに関わった。)

新しいやり方の登場により、ストレージのインテリジェンスをサーバに置いてVMの分析項目を増し、リソースの管理を効率化するニーズが興ってくる。

たとえば特許第8,266,099号は、VAAIを記述している。これにより仮想化プラットホームが、仮想マシンのストレージ操作をストレージシステムへメタレベルで送れるようになり、ストレージシステムがVMの操作を、サーバ不要で内部的にかつ効率的に行える。特許第7,849,098号は、これによりVMFSが世界で唯一の、サーバ間ネットワーク通信を要しないクラスタ化ファイルシステムとなるための発明だ。共有ストレージをプラグインするだけで、即使えるのである。

しかし本節のタイトルになっている特許第8,650,359号は、“Computer system accessing object storage system”(オブジェクトストレージシステムにアクセスするコンピュータシステム)と題され、ストレージの未来にとってもっとも重要な意味を持つ、と私は考えている。私とVMwareの数名の同僚(Ilia Sokolinski、Tejasvi Aswathanarayana、Sujay Godbole)が作ったこの特許は、VMの上で保存したり操作したりするストレージシステムを、ファーストクラスの(通常の、本物の)オブジェクトにする。

これによりたとえばSCSIやNFSのストレージシステムがVMを認知するストレージシステムになり、そのためこの特許は、今では市場に導入されている仮想ボリューム(Virtual Volumes, VVOLs)の基盤となる。個々の仮想マシンに物理マシンと同じように独自のストレージ(仮想ストレージ)がある、という形とそのための要件をVVOLはほぼ完全に満たし、ストレージを仮想化の時代へと持ち込んだのだ。

今日のストレージの世界には、たくさんのことが起きており、これらの特許の‘地位’はもしかして揺らぐかもしれない。非結合ストレージのような新しいやり方の登場により、ストレージのインテリジェンスをサーバに置いてVMの分析項目を増し、リソースの管理を効率化するニーズが興ってくる。そういうニーズに未来がどう対応していくのか、もう今から興味津々だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa