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テクノロジーで私たちの住む場所が変わる

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【編集部注】執筆者のDan Laufer氏は、RentLingo.comの共同設立者。

カリフォルニア州知事のJerry Brown氏は、最近提出した法案をもとに、同州中で大規模都市開発を行うための道筋を整備しようとしている。同法案は、サンフランシスコで増加中の住宅供給量に大きな影響を与える可能性がある。具体的には、デベロッパーに対して事前に行われる冗長なレビュープロセスや、NIMBY(Not In My Back Yard)主義者から反対を受けているようなプロジェクトにその影響が及ぶと考えられている。

同法案が成立すれば、住宅の供給量増加に拍車がかかり、家賃上昇を抑えることができる。それ自体は良いことなのだが、結局のところはあまり関係がないのかもしれない。あと5年もすれば新たな技術革新で、人が居住地として選ぶ地域に大きな変化が起こり、嬉しい副産物として、法律とは無関係にサンフランシスコの住宅危機を解消することが見込まれているからだ。

まず歴史的な文脈から考えてみたい。1900年にはアメリカ人の30%が都市部に住んでいたが、2010年までにその数は81%へと増加した。1900年当時は、農家が労働力の40%を占めていたにも関わらず、今日ではその数が2%へと減少しており、人は仕事を求めて都市部へ移動してきたことがわかる。明らかに仕事が都市部へと移っていったことで、人口集中のサイクルが出来上がり、既に都市部に住んでいる人に対してサービスを提供する人員(レジ担当、ウェイターなど)が必要となった。そして人は職場の近くに住みたがる。問題はサンフランシスコで生活できる人口にも限界があるということだ。

しかし、もしもサンフランシスコに住む恩恵を全て受けられて、さらには海辺の家で目を覚まし、都市部と比べて半分の家賃で済むとすると、ほとんどの人が悩むことなくその選択肢をとるだろう。これはCraigslist上の詐欺広告ではないし、まだ選択肢としては存在していない。それでも、そのうちすぐに私たち全員が正にその選択をできるようになる。ある3つのテクノロジーが、私たちの不動産に対する見方を完全に変え、この理想的なシナリオを実現してくれるのだ。そのテクノロジーとは、自動運転車、ハイパーループ、そして仮想現実(VR)だ。

今後はテクノロジーの力を利用して、人はそれぞれ散らばって住むようになる。

自動運転車が早くも実現しようとしている。大手自動車メーカー各社は、2020年までの自動運転車実用化を公約しており、TeslaやGoogleにいたってはそれ以前に実用化を達成しようとしている。普及曲線に関してあれこれ言うこともできるが、それよりも私自身は、必要なときに目的地まで自分を運んでもらいたいと同時に、自分で運転するよりも安く抑えたい。これは恐らく私に限ったことではないだろう。

自動運転車の普及で2つの大きな変化が予想される。それは、1)駐車場のスペースを大規模に減らしてもっと有意義なことに使えるようになること、そして、2)「運転手」が効率的になり、さらには道路上を走る車の数が減ることで車詰まりや事故が解消され、結果的に交通渋滞が無くなるということだ。

アメリカの都市部のほとんどで、駐車場が地表面積の少なくとも25%を占めると言われている。そのうち全てのスペースが新たな開発に使えるわけではないし、開発自体にももちろん時間がかかるため、すぐにはその影響が現れないだろう。しかし、現在ある駐車場の4分の1だけでも、2〜3年の間に利用可能となれば、住宅供給量が急速に増加する要因となるだろう。もっと重要なのが渋滞の解消だ。学校や職場への移動、また、あるひとの社会的役割に応じた「便利な」場所という定義自体が、今日に比べて今後劇的に広がっていく。

例えばハーフムーンベイ(Half Moon Bay)は素晴らしい街ではあるが、現状の通勤の不便さから、シリコンバレーで働く人の中で真剣に引っ越しを考える人はほとんどいない。だが、もしもドア・ツー・ドアで30分しかかからず、さらには移動中に本を読んだり、テレビを見たりできるとなれば事情は変わってくるだろう。実際のところ、自分の活動の中心地から40マイル(65km)内にある場所であれば、どの場所でも理想的な居住地候補となり得る。それに伴って、住宅需要がもっと広いエリアに散らばり、中心から離れたハーフムーンベイやナパ(Napa)などの地域では家賃上昇が予想されるが、同時にサンフランシスコまたはシリコンバレー中心部の家賃が下がることとなる。

次の技術的なブレイクスルーが、ハイパーループだ。馴染みがない人向けに説明すると、ハイパーループは、銀行のドライブスルーに設置してあるチューブを等身大の大きさにしたもので、これを使うと最高時速700マイル(時速1100km)で移動できると言われている。もしもハイパーループの技術が実用化されれば、サンフランシスコからロサンゼルスまで約30分で移動できるようになる。

まだまだ実用化に向けて様々なハードルが残っているものの、誕生間もないプレイヤーのひとつであるHyperloop Oneもハイパーループの建設に挑戦している。Hyperloop Oneは、最近ラスベガス郊外でそのコンセプトを証明し、2021年までに人を運べるようにするというゴールを掲げている。

サンフランシスコで生活できる人口にも限界がある。

ハイパーループを自分の思いのままに動かせる自動運転車と組み合わせることで、シリコンバレーで働きつつも、「便利な」場所と呼べる地域をさらに広げることができる。その結果、住む場所が活動の中心地から半径40マイル以内にある必要はなくなり、活動地に繋がるハイパーループのいずれかの乗口から40マイル圏内に住めばよくなる。そうすると実質的に、太平洋沿岸地域のどこにでも住めるようになり、ハイパーループと自動運転車を使うことで、現在サンフランシスコからサンノゼに車で向かうよりも短い時間でドア・ツー・ドアの移動ができるようになる。その上、移動時間を全て運転以外の活動に使うことができるのだ。

うっとりするような街並みのエンシニータス(Encinitas)であれば、サンフランシスコ市内の家賃の60%で住むことができるし、デル・マー(Del Mar)であれば約半分で済む。高級住宅地のラホヤ(La Jolla)にだってサンフランシスコと同じ家賃で住むことができ、シリコンバレーへの通勤も今に比べると快適になるだろう。

最後に、VRの登場が生活のイメージを一変させ、恐らく通勤という概念自体を昔のものにしてしまうだろう。FacebookがOculusを20億ドルで買収したのには理由がある。Facebookは、未来の社会的交流はVRを介して行われると考えているのだ。Microsoftは既に関連デモを発表しており、デモビデオの中では、物理的に全く異なる地点にいる人同士がホログラムのように現れて違和感なく交流する姿が、若干気味悪くも素晴らしく映しだされている。(Microsoftはその様子をホロポーテーションとピッタリの名前で呼んでいる)

Gallupによれば、在宅勤務を断続的に行う人の割合は、1995年に9%だったのが、2015年までに37%へと増加した。しかし現在のテクノロジーを利用した場合、在宅勤務には欠点がある。一般的に、在宅勤務よりも同じ部屋で同僚と仕事をした方が何かと便利なのだ。その状況をVRは変えようとしており、在宅勤務者の割合は今後劇的に増えることが予想される。

恐らく同僚との友情を深めるために(バーチャルビールを一緒に飲むというのはそんなに楽しくないだろうし)、パートタイムでオフィスに居たいと思い続ける人もいるだろうが、週5日の通勤は被雇用者にとっても、雇用者にとっても望ましいものではない。雇用者にしてみれば、通勤をなくすことで優位な採用条件を提示できるようになり、被雇用者の就業可能時間も増えることとなる。

今日のように人口が密集した都市で生活する代わりに、今後はテクノロジーの力を利用して、人はそれぞれ散らばった場所にずっと安く住めるようになる。そして、サンフランシスコだけでなく全ての大都市で不動産価格にも変化が出てくるだろう。結果的に、普遍的な魅力(海辺や山の麓など)を持つ地域にもっと多くの人が移り住むようになるのだ。

Jerry Brown知事の法案に関しては、家の数が増えること自体は良いことだし、可決されてほしいと考えている。将来どのようなことが起きるか分からないし、手頃な家は、遠い将来ではなくすぐに必要になる。しかし、私は向こう10年のうちに今の状況を振り返って、結局法案自体は関係無かったよねと言うことになると信じている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter