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ビジネス向けYouTube―、CRM統合の動画プラットフォーム「Vidyard」が日本上陸へ

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C Chanelをはじめとしてソーシャル上に拡散することを狙う「分散動画」を扱うスタートアップ企業が伸びているが、その一方で、プラットフォーム側にもイノベーションは引き続き起こっている。

2011年創業のカナダのスタートアップ企業のVidyardは、CRMなどマーケティングオートメーションを統合した企業向けの動画配信と解析のプラットフォームとしてビジネスを拡大していて、現在日本市場への展開をうかがっている。

視察のために2016年12月に来日していたVidyard共同創業者のマイケル・リット(Michael Litt)氏がTechCrunch Japanに語ったところによれば、現在Vidyard上での動画視聴数は1日に5000万回。2016年秋にリリースした新機能の利用において、Vidyardの日本からの利用シェアが7%と伸びつつあることから、本格参入を検討しているのだという。

アニメーション制作ツールで創業し、プラットフォームへ転換

Vidyardは当初からビジネス向け動画を主軸に創業しているが、当初は動画の請負制作を手がけていた。動画制作とはいえ、カナダのウォータールー大学でエンジニアリングを学んだリット氏も共同創業者も2人ともエンジニア。当時伸びつつあったアニメーション動画をソフトウェアの力で安価に制作するというアイデアで創業して、これを軌道に乗せたという。

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Vidyard共同創業者のマイケル・リット(Michael Litt)氏

収益性の高いビジネスではあったものの、2011年にY Combinatorの夏バッチに参加した前後から動画制作はやめて、動画解析プラットフォームに転換。動画のA/Bテストや、CRMと統合した形でリード生成を行うビジネス向け動画プラットフォームとしての成長の道を選び、直近2016年1月の3500万ドル(約40億円)のシリーズCラウンドの資金調達を含めて、Y Combinator、Andreessen Horwitz、SV Angel、Battery Venture Partner、Salesforce Venturesといった著名VCから累計6065万ドル(約70億円)を調達している。

「最初は動画制作で得たお金でプラットフォームを開発していました。でも、それだと結局プロデューサーの数でしかスケールしないんです。それが動画制作というものです。でもソフトウェアは違います。小さなチームでも何百社という顧客にスケールできます。Y Combinator創業者のポール・グレアムは我々Vidardのことを『YouTube for business』だと言いました」(リット氏)

企業から請け負って動画制作ビジネスをしていたときに、どうやれば視聴者の60%が途中でドロップせずに最後まで見るのかという改善をし、「60%達成保証」をやっていたという。どういう動画だと最後まで見てもらえるのか。例えばイントロが無駄に長いものは冒頭でのドロップ率が高いというのは動画制作に関わっている人なら誰でも知っていることだろう。Vidyardでは簡易動画編集機能を使って長すぎるイントロを削ったり、ドロップ率の多いところに補足説明となるアノテーションを付けるといったことができるそうだ。

スプラッシュ画面のA/Bテストも簡単に

Vidyardの「Splash Screen」も面白い機能だ。動画のリンクをクリックするかどうかを、サムネイル画像で決めていないだろうか? 動画の中身と同じくらいサムネイル画像は大切なものだが、VidyardではA/Bテストができる。Splash Screenを使うと、動画中から好きな部分を静止画として抜き出し、4〜8つ程度の候補画像として、どの画像がいちばんクリックされるかをテスト可能だ。十分なデータが集まったところで最も成績の良いもの1つを残せる。

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こうした機能はYouTubeにはないが、YouTubeから動画をVidyardに持ってきたり、逆にエクスポートして戻すといったことができるので、「YouTubeはインバウンドのプラットフォームで補完的な存在です。VidyardにはYouTubeの創業者も投資していますしね」とリット氏は説明する。Vidyardは動画配信、簡易編集、アナリティクスのプラットフォームだが見え方としてはWebサイト制作サービスのWeeblyやWix、Jimdoのように、企業向けに動画ホスティングをまるっと提供している形だ。

ドロップ率を見たり簡易編集をすることならYouTubeでもできるが、Vidyardはビジネス向けプラットフォームとしてCRMとの統合で威力を発揮する。

例えばSalesforceが展開するマーケテイングオートメーションプラットフォームのPardotと合わせて使うと、どの動画を誰が、どこまで見たかが分かるようになる。誰が、というのは社名と肩書きなど本人が入力したものに限るが、それでも営業案件のリードとしては強力だ。さらに、Vidyardでは動画の任意のポイントに問い合わせフォームを表示する機能もある。一般消費者向け動画としてはウザい話だが、動画コンテンツをリード生成に利用するという法人ニーズにはピッタリだろう。法人向け機能としては、ほかにも各動画についてドメインやパスワードによる視聴制限や、タイマーによるエクスパイア機能が利用できる。マーケティングオートメーションのプラットフォームとしては、PardotのほかにMarketoやEloquaなどもサポートする。

テクノロジー企業らしいエッジの効いた新機能として2016年秋にローンチしたものが、ちょっと面白い。例えば動画中に登場する誕生日ケーキに利用者の名前やブランド名を埋め込む機能だ。動画解析によるモーション検知を使っているそうだ。

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何かソリューション導入を検討中の特定ユーザーに対してプロダクトの説明するとか、導入直後のユーザーサポートをするというとき、そのユーザーにのみ向けたスクリーンキャストを作りたいということがあるだろう。説明員の顔を右下に表示したままプロダクト画面を見せながら説明する、というものだ。VidyardではPCやAndroid端末で特定ユーザー向けのスクリーンキャストを作成できる。URLリンクをメールすれば、実際にスクリーンキャストが対象顧客に見られたときにノーティフィケーションを受け取って「いかがでしたか?」と顧客とコミュニケーションを続けることができるというわけだ。

統合プラットフォームとしてのVidyardの強みは多くのデータが集まっていること。MailChimpを使ったことがある読者なら分かるだろうが、何曜日の何時にメールを送ると開封率が高いかだとか、業界ごとの平均開封率と比べて自社のメールの開封率は高いのか低いのかといった知見が得られる。Vidyardでは、どのタイミングで動画を出すべきかといったことも教えてくれるのだそうだ。CVRや最後まで動画を見た人の比率などが競合他社と比較できる。

Vidyardは現在アカウント登録数は約5万。LenovoやSalesforceといった大手企業のユーザーは約1000社で、顧客の平均単価は年額2万〜3万ドル。もっとも、中堅向けサービスは料金が安いが、中には年間約1億円の利用料をVidyardに支払っている顧客もいるという。ちなみにリット氏にエグジットについて聞いたところ現在はIPOを目指していて、ちゃんと高い利益がでてビジネスが回るプラットフォーム構築を目指しているのだそうだ。