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かつては誰もが移民だった―、移民の子孫の視点から見た現在のアメリカ

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ここ数年の間、世界は怒りで溢れている。まともに見えた国がヨーロッパ大陸から自らを切り離し、慈悲深く見えた国境警察が怒りで震え、移民は仕事を奪い、人を殺し、ドラッグや暴力事件を持たらすような存在だと言われている。

何かが間違っている。

移民賛成派の意見として、全体の数を比較すれば、移民よりもアメリカ生まれの人の方が犯罪率が高いという事実が知られている。一方反対派からは、全てを決定づけるように見える複数の凶悪事件についての話を聞くことが多い。さらに、アメリカやイギリスの労働者の苦境についても知っておかなければいけない。移民は実際にその国で生まれた人から仕事を奪っているのだが、ホワイトカラーの人たちはその影響を理解できていないのだ。『Chaos Monkeys』の著者であるAntonio Garcia-Martinezが、その様子をうまくまとめている。

青い州(民主党支持者の多い州)の人たちが、トランプや国境沿いに壁を作るという彼の発言を支持する、労働者階級の赤い州(共和党支持者の多い州)の人たちを馬鹿にするのも当然だ。というのも、ホワイトカラーにはH1ビザと言う名の壁が既に存在し、彼らはこのビザのおかげで、インド工科大学や精華大学の卒業生と職探しで張り合わずにすんでいるのだ。FacebookやGoogleのオフィスの前に、まじめで実力のある中国人やインド人のエンジニアが大挙する様子を(アメリカのHome Depotの前に集まるメキシコ人の様子のように)想像してみてほしい。無料のスペアリブを頬張っている甘やかされた社内のアメリカ人よりも低い賃金で同じ仕事をする覚悟が彼らにあるとしたら、不法移民に対する社内のエンジニアの意見はどうなるだろうか?

赤い州の人々が求めているのは、青い州の人々に与えられているような、移民労働者の制限という保証なのだ。

いつものように、政治的な意見は先を見据えた理想ではなく、権力や私欲をもとに決められてしまう。ホワイトカラーは、既に自分たちが守られているからこそ、移民を受け入れることに賛成しているだけで、Home Depotの外に列をなすメキシコ人たちを自分たちの生活を脅かす存在として(正しく)認識しながら、ルイスビルやデモインで生活する、高卒の配管工や土木作業員のことなど気にかけていないのだ。

誰もが正しいようで、誰もが間違っている。移民労働者の苦境とは無縁のハイテク業界は、プログラマーや海外のデータセンターに関しては、政府の気前の良さに頼り切っている。本来であれば、Home Depotの前に停められたトラックの中にいる男性から、Uberに乗ってGolden Gate(サンフランシスコのベイエリアにある橋)を渡っている女性まで、全ての人が現状を吟味し、移民に手を差し伸べなければいけないはずだ。

究極的に言えば、移民は国に変化をもたらす必要不可欠な存在だ。人口は高齢化し、文化は変わり、新しいテクノロジーが昔の問題を解決していく。市民に受け入れられた健全な移民制度を通じて入国してきた熟練・非熟練労働者、難民、外国人居住者がその全ての変化において、私たちを支えてくれるのだ。自分たちの問題を外から来た人たちになすりつけるというのは、人類の大きな失敗であり、これは暗黒時代から何度も繰り返されてきた。私たちは、自分と違う人を恐れると同時に必要としているのだ。だからこそ”よそ者”に対する恐怖心を払拭しなければならない。

この問題を短期的に解決するために、私がアドバイスできることはひとつかふたつしかない。まずひとつめは、自分のルーツや生き方を見つめ直し、自分と同じ道を進んでいる人に手をさしのべるということだ。例えば、私の祖父母はポーランド人とハンガリー人だ。これまで私は、自分なりのやり方でこの2国を発展させるために全力を尽くしてきた。両国の経済や各業界のエコシステムは既にかなり発達しており、私の手助けなどいらないということは重々承知しているが、彼らは依然投資や世界からの注目を必要としているため、私にもできることがある。

世界中に起業家精神を広めるというのも問題の解決に役立つだろう。数週間前に私が出会った、デンバーを訪問中のキューバ人起業家グループは、アクセラレーターについて知るためBoomtownを訪れた。男性・女性の両方から成るこのグループは、逆境や政治的陰謀に立ち向かって、キューバにネットインフラを構築しようとしているのだ。彼らは若い企業の成長を支えるアクセラレーターの仕組みを気に入ったようで、恐らくこの経験から新たな可能性に気づくことができただろう。私はせめてもの手助けとして、彼らを5月に行われるDisruptに招待した。

キューバ出身の起業家たちと出会って1番驚いたのは、ザグレブやアラメダなど世界各地の起業家と彼らの間にはかなりの共通点があるということだ。全員が明確なビジョンを持ち、変革を起こすために努力する覚悟ができていた。全員が苦境に屈さず、前に進もうとしていた。彼らは仕事を奪うためにアメリカにいるのではなく、仕事を生み出すためにここにいる。彼らは国家を崩壊させようとしているのではなく、悪人を排除して、善者を支えようとしている。そして彼らは、母国と世界の問題の両方を解決しようとしているのだ。

彼らは移民ではなく人間だ。ある場所から別の場所へと移り住みながら、少々の悪とそれよりもずっと多くの善を移住先にもたらしている。彼らは歩みを止めず、諦めることもないため、受入国は移民を抑え込むのではなく、彼らのエネルギーを有効活用するべきなのだ。

数年前ピッツバーグで行われた結婚式に出席した際に、私がポーランド人の血をひいていると知った年上の友人からある話を聞いた。その話の主人公は、1900年頃にワルシャワからグダンスク経由でアメリカに移住してきた、当時8歳、10歳、14歳の少女3人。鍛冶工で酒飲みの父親と一緒に彼女たちは海を渡り、体調不良と寒さで震えながらニューヨークにたどり着いた。そこから一家は陸路で炭鉱で有名な地域へと進み、最終的にピッツバーグに住み着くことに。父親は鉱山で働き、娘たちは学校へ通っていたが、ある日娘たちが家に戻ると、そこには父の姿がなかった。

父親は娘たちを残してポーランドに戻っていたのだ。実は父親はポーランドから妻を連れてこようとしていたのだが、娘たちはなぜ父が書き置きも残さずにいなくなったのかわからず、残されたお金もすぐに底をつきそうな程だった。結局彼女たちは、裁縫や清掃の仕事をしながら、長女が次女の面倒を、次女が三女の面倒を見ながら生活を続け、時間の限り学校へも通った。移民で溢れる近所の人たちの助けもあり、彼女たちは徐々に自立していく。しかし、彼女たちが知らないうちに両親はポーランドで亡くなっていたため、両親宛の手紙が戻ってくることはなかった。森に住む少女たちの貧しく、不安に満ちた破滅的なこの物語は、バッドエンドを迎えようとしていた。

しかし、話はここから好転する。

彼女たちはそのまま成長を続けて結婚し、かつては隅に追いやられていた新しい世界で自分たちの生活を築くことができたのだ。ピッツバーグにあるKościół Matki Boskiejの洗礼盤に浸りながら泣き声をあげる赤ん坊のように、彼女たちは目の前で次々と起こる出来事にショックを受けながらも、生き抜くことができた。父親は(もっと娘たちのことを考えた去り方があったとは言えるが)アメリカであれば彼女たちが無事に生きていけるだろうと考え、ポーランドに残した妻を迎えに行ったのだった。娘たちが住む世界は、彼が去った世界ほどは危険にあふれておらず生存の確率はずっと高いと考えた父親は、移民の流れに娘たちを託し、それが功を奏した。

話の最後に「三女が僕の祖母なんだよ」と言った私の友人は、現在ピッツバーグでエンジニアとして働くアメリカ人だ。

かつては誰もが、遠い場所から何も持たずにアメリカにやってきた移民だったのだ。だからこそ私たちの後に続く人のことを怖がってはいけない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter