過去5年間でデザイナーの採用目標が倍増――大手6社のデータに見るデザイン人材の動向

【編集部注】執筆者のDylan Fieldは、デザインに特化したクロスプラットフォーム・コラボレーションツールFigmaの共同ファウンダーでCEO。Figma設立前には、LinkedInやFlipboard、O’Reilly Mediaでインターンをしていた。
テック業界の古風な父親的存在であるIBMがデザインに力を入れ始めた瞬間、何かが変わりつつあると気づいた。ビッグブルーとも呼ばれる同社のデザイナー対ディベロッパーの比率は、過去5年間で1:72から1:9に変化した。
これはIBMに限った話ではなく、シリコンバレー全体でこれまでにないくらいデザイナーの需要が高まっている。実はFigmaの創業から何年間も、私はこの採用傾向の変化に関する話を耳にしてきた。
統計
このトレンドを裏付けるような数字を入手するため、私たちは知り合い伝いで情報を集めることにした。そして集まった情報をもとに、6つの企業のデザイナーとディベロッパーの比率を割り出し、今年と5年前の数字を比較した結果が以下の図だ。あまりに変化が大きかったためか、このデータはKleiner Perkinのインターネットトレンド2017にも掲載されている。
図を見てもらえればわかる通り、例えばAtlassianは2012年時点ではデザイナー1人に対し、25人ものエンジニアを抱えていたが、2017年にはその割合が1:9にまで変化している。さらにUberのデザインチームの規模は、2012年から70倍以上に成長し、現在の割合はデザイナー1人に対しエンジニア8人だ。

デザインの重要性
まず、テック業界ではエンジニアのコモディティ化が進行しつつある。AWSやReact Nativeのようなフレームワークの登場で、誰でも簡単にアプリが作れるようになった。
その結果、「3人向けのTinder」や極限まで簡素化されたメッセージアプリ「Yo」が誕生した。今やサービスの違いを決定づけるのはユーザーエクスペリエンスであり、これこそデザイナーの専門分野なのだ。
IBMのデザイン部門のジェネラルマネージャーも、最近のポストに「誰もがデザインに長けているわけではないが、誰もがユーザーのことを第一に考えなければいけない」と記している。
デザイン思考は自動化できないスキルのため、大統領候補者が浮動票の多いオハイオ州の有権者にアピールするのかのごとく、各企業がデザイナーの採用にやっきになっているのにも納得がいく。
しかし残念なことに、急増する需要に応えられるだけの人材が市場にはいない。大学はシリコンバレーの動向に遅れをとっており、テクノロジーデザインを専攻できる芸術大学はほぼ存在しない。労働統計局の調査には、UX/UIデザイナーがキャリアの選択肢としてさえ含まれていないのだ。

未来への投資
優秀なデザイナーを雇うためには、悪魔に第一子を手渡したり、自分の命をどこかに宿らせるくらいの覚悟が必要だ。そして各社がデザイナーの採用目標を増やすにつれて、状況は悪化していくばかりだ。
次世代のデザイナーを生み出すためには、教育機関やテック業界、デザインツールを開発する企業が一丸となって問題に取り組まなければならない。
Figmaでは学生ユーザーの利用料を無料にし、デザイン職への参入障壁を下げようとしている。しかし、これだけでは十分とは言えないため、現在私たちは他の手段を模索するとともに、他社のアプローチからも学ぼうとしている。もしも、あなた(もしくはあなたの知っている人)がデザイナーを増やすためにやっていることがあれば、是非私たちにも教えてほしい。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)