Amazon、Alexaスキルの報酬対象を拡大――有料スキル・広告掲載は未だ非サポート

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本日(現地時間8/16)アマゾンは、Amazon EchoをはじめとするAlexaデバイス上で使える「スキル」(アプリのようなもの)の開発者向けに、新たな報酬プログラムを導入すると発表した。同社によれば、今後は5種類以上のカテゴリーで高パフォーマンス・高”エンゲージメント”のスキルに対して報酬が支払われるとのこと。なお、ゲームカテゴリーでは過去に似たプログラムを通じて開発者に報酬が支払われており、新プログラムでも同カテゴリーは報酬対象に含まれている。

ゲーム開発者向けの報酬プログラムは今年の5月に密かにリリースされ、人気ゲームには現金が支払われていた。

今回のアマゾンの発表によれば、ゲーム以外の教育・辞典、食べ物・飲み物、生活・フィットネス、ライフスタイル、音楽・オーディオ、プロダクティビティカテゴリーでも今後人気スキルには報酬が支払われることになる。

彼らの狙いは、正式なマネタイズプログラムのローンチ前に、スキルの開発者に何かしらの報酬を提供することだ。現在のところ開発者はAlexa App Store上では有料のスキルを販売できず、スキル内課金もできなくなっている。6月にはAlexa上で機能する広告ネットワークをシャットダウンするために、Alexaスキルに関するポリシーが変更された。

つまり、これまで開発者はテクノロジーへの愛からスキルを開発していたのだ。しかし、類似商品が次々に登場する中、Amazonはようやく音声アプリに何らかの対価を支払うことに決めたようだ。

同プログラムに関するブログポストの中では、”エンゲージメント”の指標に関する詳しい説明はなかった。むしろ同社は、「音声ファースト」でユニーク、かつ定期的に新しいコンテンツを紹介し、検索エンジン以外の手段で人びとの生活を楽にするようなスキルを求めていると記している。

例えば、あるフレーズを他の言語でどう表現するか調べるための翻訳スキルであれば、検索エンジンを使うよりもシンプルに必要な情報が手に入るとアマゾンは説明する。

さらに同社は、ゲームがもっともエンゲージメントの高いカテゴリーだと繰り返し述べている。同カテゴリーが以前の報酬プログラムの対象になっていたのには、これも関係しているのだろう。

アマゾンからはどの指標に基いて報酬額が決まるのかについて具体的な説明はなかったが、これまでゲームスキルで報酬を受け取っていたある開発者は、ランキングが報酬額に大きく関わってくるだろうと話す。彼によれば、ランキング1位の5000ドルをスタート地点に、6位が2000ドル、さらに7位が1000ドルで300位が100ドルくらいになるだろうとのこと。

しかし開発者が確認できる指標の数は(少なくとも現時点では)限られている。現状のダッシュボードにはセッション数やユニークユーザー数、インテント数、発話数(音声操作の数)などは表示されるが、これらの指標と報酬の間に直接的な関係は見られない。つまり、アマゾンが公表していない別の指標が報酬額に関わっていると考えられる。同社に確認をとったところ、利用時間(分)や新規ユーザー数、繰り返し当該スキルを利用するユーザーの数、ユーザーレーティングなどが報酬額と関係しているということがわかった。

アマゾンはAlexaエコシステムの構築にあたり、現金報酬にだけ頼ってきたわけではない。優秀な開発者にはAmazon Web Servicesの支払いに使えるクレジットを発行し、Alexaのワークショップを世界中で開催しているほか、開発者向けにEchoデバイスの無料配布も行っている。

しかし、フリーミアムモデルや有料のアプリ販売、広告掲載といった従来のマネタイズ手段をサポートせず、大々的な報酬プログラムも導入していなかったにも関わらず、Alexaプラットフォームに一定数の開発者が集まったというのは注目に値する。Alexa App Storeで配信されているスキルの数は、短期間のうち(アマゾン初のオフィシャルAlexaデバイスであるEchoは2015年7月リリース)に1万5000種類を超えた

とはいっても、スキルに対する一定額の現金報酬というのは長続きしないかもしれない。そのうち開発者は詳細不明の報酬体系に満足できず、きちんとしたビジネスが成り立つような形態を求めるようになるだろう。さらにAlexa(そしてEchoシリーズ)は、Google HomeやAppleのHomePodなど、アプリエコシステムをよく知る企業が発表した競合製品ともこれから本格的に戦うことになる。

その一方で、GoogleやAppleはアマゾンに遅れをとっている。Echoスピーカーやその弟分にあたる安価なEcho Dotをはじめとする各デバイス(こちらこちら)の人気もあり、Alexaは既にある程度のトラクションを築いているのだ。アマゾンは音声アシスタントを最初に開発した企業というわけではないが、音声スピーカーのあるべき姿を見極め、伸びゆく消費者の需要に応えているというのは間違いない。

ポケットやカバンの中に入った携帯電話ではなく、家のある場所に置かれたスピーカーに音声アシスタントを搭載したというのがアマゾンの目の付け所の違いだった。そのおかげで、話しかければコンピューター(=Alexa)が応えてくれるという、私たちが待ち望んでいたSFのような世界が現実のものとなり、今では誰もが使い方を心得ている。そんなアマゾンが音声スピーカー業界で現在のポジションを守るためには、持続的なアプリエコシステムを構築していかなければならない。そのためにも開発者への配慮を怠ってはならないのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake