コンプライアンス
マイル単位経済

ドライバーレス時代のビジネスとは

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【編集部注】著者のShahin FarschiLux Capitalのパートナー。

業界が「車単位経済」から「マイル単位経済」に移行するにつれて、都市交通には巨大な機会が生まれつつある。

若いころの私は、ピカピカに磨き上げて、ちょいと自慢気に近所を走り回る車を所有することを夢見ていた、しかし、現在は、急速に価値を失っていくプラスチックと金属の塊に対して、心配ばかりする気持ちで尻込みしている。今私が欲しいのは、快適な移動体験だけだ。

車の所有に対するこうした私の気分を、ミレニアル世代なら共有していることだろう。そしてそうした人の多くが(UberやLyftなどの)配車サービスの便利さを取り入れている。

1兆ドルの自動車産業はその岐路を迎えつつある。車の販売台数が減少し、新規参入者がマージンを奪うにつれて、自動車会社は徐々に押し出されている。

この移行の一環として、業界は「車単位経済」(per-vehicle economics)から「マイル単位経済」(per-mile economics)へと移行しているのだ。歴史的に、これまで自動車産業の評価は、如何に素早く自動車を組み立てて、顧客へ届けて、彼らにお金を貸し付け、そして保守とアップグレードでお金を回収することができるかによって行われてきた。

しかしこれからは、乗客たちを何マイル移動させたのか、そして1マイルあたりどれだけの利益を得ることができたのかで評価されるようになる。

自動車は2017年に、のべ3兆1700億マイル(約5兆1000億キロ)の距離を走行すると言われている。これは5年前と比べて7.8%の増加だ 。この傾向は今後も続くだろう:電気自動車と自動運転の台頭は、環境へのインパクトと労働の必要性を減らすだけでなく、価格も引き下げることになることを意味する。

自動車メーカーは、ビジネスから撤退する心配をする必要はない。進化を生き延びられない会社もいくつかはあるだろう。しかし、未来のマイル単位経済時代では、その多くがキープレイヤーになっていることだろう。Uber、Lyft、またはZoox向けの、ノーブランド車両を生産するものも出てくるだろう。GM、Audi、そしてBMWなどの企業は、そうした配車サービスの巨人たちと競争するために、自社で車両群を編成する可能性もある。

ドライバーレスの未来では、従来の自動車会社たちが、消費者が1マイル移動する毎に得ていた利益は減っていく。残りを奪うのは新興のサービスたちだ。

何十億マイルもの移動に対して投入されるお金の、大きな部分を掴むチャンスのあるビジネスはどれだろうか?いくつかの可能性を考えてみよう:

  • 保険:ロボットタクシー技術はもうそこまで来ている。これまでは、事業者が自律サービスを提供できるようにする法的枠組みは存在していなかった。そのような枠組みは、乗客、事業者、技術ベンダーの債務に限度を設けるのに役立つだろう。これらの債務の限度額が分かっていれば、保険会者はそれぞれのグループごとに保険契約を策定し提供することができる。コンピュータビジョン、AI、およびその他の技術的機能不全のリスクを、保険会社がモデル化しようとする際には、スタートアップたちはそれを積極的に支援する必要がある。自動車販売の低迷が予想されることを考えれば、現存する保険会社たちはこの新興市場を、積極的に追い求めるべきである、いつかはその事業の大半を占めるようになる可能性がある。
  • コンプライアンス:事業者の債務を制限するためには、厳しい安全規制の遵守が必要だ。これらの規制には、遠隔操作(すなわち、自律車両を遠隔監視する人間の)のモニタリングと監査だけでなく、AIに対するシミュレーションの構築と実行も含まれる。
  • 運用:今日、UberとLyftは配車サービスの主要なチャネルを所有している。彼らの所有するドライバーの広大なネットワークと巨額の資金は、業界を専有し競合他社を圧倒することを可能にした。これまでのところ、どちらも自社の自動車を製造してはいない。従来の自動車メーカーたちにも、乗客体験を再考する機会が与えられている。もし彼らが最初の原則から始めるならば、これまでに製造してきたものとはとても異なる自動車をデザインし製造することになるだろう。Zoox(情報開示:私の会社が投資している)のような新興企業は、ドライバーレス輸送の新しい時代のために、洗練された輸送ロボットをデザインし運用しようとしている。
  • 車内サービス:モバイルデバイスのことは一旦忘れよう。「ドライバーレス」は新しいプラットフォームだ。高度にパーソナライズされた豊かな環境を作り出し、乗客に刺激を与え、夢中にさせることができる。音声インターフェイスは、車両内の様々な体験を調整し、単に1度の移動だけではなく、複数の場所で、複数の車両を乗り継ぐ、連続した移動に対するコンシェルジェとして振る舞う。例えば、乗客の興味や嗜好、以前の目的地などを「知っている」ロボットカーが提供するツアーを、想像してみよう。バンコクであなたを案内してくれるドライバーレスツアーガイドは、以前ローマとサンパウロを旅行したあなたの嗜好を「知って」いる。彼らはあなたのソーシャルメディアのプロファイルを利用して、食事、ショッピング、エンターテイメント体験をお勧めしてくるだろう。
  • 自動運転技術:自動運転を可能にする独自の技術を構築した企業は、大きな利益を得ることができる。非自動車産業の企業たちが、機会を見ながら革新的な企業を手に入れようとしている。インテルはMobileEyeに大金を払い、自身を主要な自動車部品サプライヤーとして位置付けた。この購入を通してインテルが手に入れたチャネルにより、チップ、センサー、そしてソフトウェアなどの他の多くの技術を自動車サプライチェーンに供給することが可能となった。

何兆ドルもの価値を持つ新しい機会が、きたる自動運転旅行の時代には豊富に待っている。もし歴史が私に何かを教えてくれるとすれば、この新しいパラダイムは、これまで私たちが全く考えて来なかった新しい生活様式に拍車をかけるものだろうということだ。で、私自身はどうかって?

ギアヘッド(新しいもの好き/クルマ好き)としては、私はロボットによってA地点からB地点へと移動できることを楽しみにしていて、かつレーストラック上では手動によって高性能車を限界まで走らせることに惹かれている。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: DAVID BUTOW/CORBIS/GETTY IMAGES