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Amazon時代のeコマース投資を考える

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ブラックフライデーがAmazon CEO Jeff Bezosの総資産を1000億ドルに押し上げる

【編集部注】著者のSunny DhillonはSignia Venture Partnersのパートナーである。

Amazonが800ポンド(362キロ)のゴリラとして立ち塞がっているために、私の投資家仲間たちの多くはeコマース市場を無視することにしている。実際この業界は、取引や投資の面で最近低迷している。しかし、WalmartによるBonoboの3億1000万ドルの買収や、Stich FixIPOが示すように、この業界にも投資家たちにとってのエキサイティングな機会がまだ沢山あるのだ。

投資機会を探る中で、私はさほど多額の資本を調達することなく多くの売り上げを果たしたあるブランドにも遭遇した。ただし、この売り上げは旧来の小売チャネルを通して達成されたものだった。残念ながら、私のようなベンチャー投資家にとってとても大切なチャネル、すなわちeコマースを通してのものではなかったのだ。

私がこの消費者に直結するeコーマスのチャネルを高く評価している理由は何だろうか?1つは、eコマースのマージンが優れているからだ(従来の小売チャネルなマージンが50%程度なのに比べて、80%ほどのマージンが期待できる)。しかし、さらに重要なことは、単純に小売では実現できないスケールの可能性を提供するからだ。私の祖父はその織物業を、取引相手や店を1つ1つじっくりと増やすという形で、段階的に成長させた。それぞれの取引に賭ける根性と情熱は、子孫の1人として称賛に値するものだった。しかし、今日では、Facebook広告の助けを借りたDollar Shave Clubの古典的な広告や、インフルエンサーや有名人による推薦などで、セールスを一晩で急上昇させることが可能だ。

人びとは、20年以上に渡ってオンラインでショッピングをしていて、私たちも多くの象徴的なブランドが、オンラインから生まれたことを知っている。こうしたブランドの背後の多くには、Forerunner Ventures(Warby Parker、Glossier、Bonobos)や、Maveron(Everlane、Madison Reed)といった素晴らしい投資家たちが控えているだけでなく、Kal Vepuri、Divya Gugnani、Rohan Ozaなどの、消費者ブランディングに通じた素晴らしい起業家たちやマーケッターたちなどの存在もある。彼らはクールな物品を手頃な価格で作る手段を知っているし、適切な時期が来た時には、その会社を大きなM&Aの対象として位置付けるやり方も熟知している。

これらの投資家や個人たちが知っているように、10億ドル規模の買収は、eコマーススタートアップを拡大し取り込む事で、買収側の拡大を助けるために行われる。Jet.com (Walmart)、Dollar Shave Club(Unilever)、 Chewy.comPetSmart)、そしてLazada(Alibaba)といった買収は、人材、売り上げ、EBITDA(金利・税金・償却前利益)、サプライチェーン、そして強いオンラインブランドの獲得のために行われた。

こうした経験を通して、私は直接販売ブランド取引にアプローチする際に使う、3つのレンズ(判断基準)を手に入れた。以下にそれを説明して行こう。

破壊する(ディスラプトする)対象はどこか?

現状の問題を特定することが、しばしば新しい会社が必要とされる理由の出発点となる。例えばそれは、非倫理的もしくは不健全なサプライチェーン(Everlaneが破壊したようなもの)や、古い消費者たちに結びついている退屈なブランドや、あるいは多大な利益をとっている現行ブランドよりも安価で格好良い類似製品を提供すること(Dollar Shave対Gilletteのようなもの)といったものだ。

私はCAC(costs of customer acquisition:顧客獲得コスト)についても気にしている。eコマースに対する一般的な認識では、米国内商取引のオンライン取引は10%未満であるため、最終的には製品に対する潜在顧客が枯渇してしまう。FacebookやInstagramの広告では、これまでのところデジタルオーディエンスにしかリーチできていない。もし日頃オンラインショッピング生活をしていない顧客へと拡大したいと思うなら、一般的なアプローチは、従来のブリックアンドモルタル小売業者(レンガとモルタル=実店舗を持つ小売業者)とのパートナーシップを持つことだ。

例としてCasperを見てみよう。1ヶ月で100万ドルの売り上げを達成し話題になったあと、最初の1年では1億ドルのビジネスを成し遂げたこの会社は、発展しつつあるオンラインベッド業界の紛れもない王者である。eコマースの領域を超えた潜在的顧客の一群を狙って、Casperはまず家庭用家具の小売業者であるWest Elm、次いでTargetと提携した――これはミネアポリスの小売の巨人(Target)が上でも述べたような10億ドル規模の買収をCasperに対して行おうとした後である。ともあれこのアプローチは上手く行ったようだ。Casperの昨年の収益はおよそ2億ドルであり、CEOのPhillip Krimは今年の春の時点で、2017年の収益はさらに倍になるだろうとコメントしている

Casperに限らずeコマースブランド一般で、GoogleやAmazon上での顧客のレビューは本当に重要である。私はかつて自分がマットレスをオンラインで買うことになるとは思ってもいなかった。ベッドのようなものを購入する前には、「耐久性」を徹底的にテストしなければと考えていたのだ。しかし、私もミレニアル世代のショッピング習慣を身に付け、ベッドが快適かどうかを確かめるために自分でベッドを調べて回る必要はないということに気が付いた。なぜならユーザーレビューを信じることができたからだ。

マットレス業界をディスラプト(破壊)するCasper

最終的に対象をどのように攻略するのだろうか。私はeコマース取引関係を改善するために、どのようにデータを利用しているかに関心がある。Constructor.ioのような企業は、巨大なeコーマス企業たちの検索機能を強化し、プロダクトに対するサイト内検索機能を構築する効果を実証している。人びとが探しているものを分析することで、ベンダーがストックすべき新規もしくは隣接したプロダクトカテゴリー戦略への、豊富な洞察が得られるのだ。

また、どの顧客に対してどのプロダクトのリピートが成功したのかという情報からも、多くの洞察を引き出すことができる。もし小売店舗を持っているのなら、顧客が物理的な店舗内にいる間に集められるデータを活用しているだろうか?例えばRetailNextは、戦略的に配置されたカメラとコンピュータービジョン技術を使って、顧客候補が来店してから売り上げに至るまでの全ての出来事に関する洞察を、小売業者たちに提供する。

中間業者を排除しサプライチェーンを圧縮して、どれだけプロダクトをより直接的に顧客のもとに届けことができるだろうか?

このような中間業者の人間たちを排除する

デジタルファースト(場合によってはデジタルオンリー)ブランドは、サプライチェーンに対する迅速なオペレーションから利益を得ることができる。一方大規模なブリックアンドモルタル事業は、依然として各ショップで働く販売員と、そうした大規模事業者に対する全国的な配送事業者を通じて行われている。eコマースの買い物客たちは、デジタルブランドが提供する、簡便な比較ショッピングや無料配送、その他の魅力に引き寄せられている。

新しいデジタルブランドが、破壊(ディスラプト)しようとしている既存のブランドと、同じ工場や調達先を使っていても問題はない。新しい会社はミレニアル世代が共感するライフスタイルを売っていて、これに対して既存の会社は両親たちや「老人」向けのものを扱っているからだ。

eコマースプラットフォームを運営しようと考える場合(それ自身がブランド化可能だが)には、Amazon Marketplace、もしくはSignaの投資先の1つであるBoxed Wholesaleのことを考えれば十分である。顧客が一度オンラインマーケットプレイスを信頼すれば、プラットフォーム自身から提供される独自ブランドの製品も信頼するようになる。サードパーティのプロダクトを販売するよりも、垂直統合されたサプライヤーになる方がマージンを高くとれるので、これは一般的に、プラットフォームに対してとても大きな利益をもたらすことになる。

プロダクトにはどのようなブランド化が可能なのか?

オンラインでのブランド化能力、特にInstagram上でのプランド能力は、成功したeコマースを現在構築するためには、欠かせない能力だ。以前の記事で、私はインフルエンサーマーケティングの重要性が増していることについて説明したが、同時にブランド自身の力も重要であることも以下のように指摘した。「インフルエンサーマーケティングが多くの形態をとる一方、偉大なプロダクト、偉大なストーリー、そして魔法を解き放つための優れたストーリーの語り口が常に必要とされている。インフルエンサーをブランドに連れてくるだけで、セールスが上手くいくようになると期待することはできない」。

「オフライン」でのブランド化も重要な考慮事項だ。消費者直販(D2C)ブランドが小売りに参入するときには、その戦略の一部には、CasperがWest ElmやTargetと行ったような、大規模な既存の小売業者とのパートナーシップが含まれることになる。他には、小売りのための「ブランドアンバサダー」(ブランド大使として振る舞う店舗)を開くことも含まれるかもしれない。たとえば、モンゴル系アメリカ企業である、高級カシミアブランドNaadamは最近、モンゴルの遊牧民のライフスタイルと、ブランドのエキゾチックな東洋のルーツのイメージに触発された工芸品を売る期間限定のショップを、ニューヨークに開設した。Glossierは最近ロンドンで期間限定ストアを開き、多くの美容業界のインフルエンサーたちを招いたディナーを主催した。こうした物理的なIRL(in real life:現実の生活)イベントや場の設定は、消費者たちを、彼らの愛するデジタルブランドにさらに固く結びつけるための、実世界でのブランド体験を与えることができる。

上に挙げてきた基準を満たすことは容易ではない、しかしそれらを満たすことのできるスタートアップたちは、私の注目と投資金を引きつけることになるだろう。他のベンチャー投資家たちには賛同して貰えないかもしれないが、eコマースは魅力的な投資機会を提供する、幅広い革新的企業を生み出し続けているのだ。

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(翻訳:Sako)