デジタルガレージと弁護士ドットコム、りそな銀、ローン業務にスマートコントラクトを使う実証実験

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デジタルガレージ弁護士ドットコムりそな銀行の3社は、個人向けローン業務の効率化をブロックチェーン技術およびスマートコントラクトにより効率化する実証実験を開始した(プレスリリース)。ブロックチェーン技術として、ビットコインの技術を利用した製品であるElementsを利用する。

従来の個人ローン業務では、契約内容の確認や、取引の執行、途上管理などに人の手が多く介在していた。スマートコントラクトを活用し、顧客と銀行間であらかじめ設定した条件に基づき、取引とそれに付随する手続きを自動執行するシステムを構築する。実証実験でスマートコントラクトの対象となる業務には「自動借入」「自動返済」を含む。

スマートコントラクトの活用により業務効率の向上、シームレスな取引を目指す。実証実験の期間について、デジタルガレージは「実験的な取り組みで走らせながら期間イメージを図っていく。最初のフェーズは2〜3カ月程度と考えている」と話している。実証実験ではプライベート型/コンソーシアム型のブロックチェーンとするが、将来は「ブロックチェーン本来のメリットを引き出す構成であるパブリック型ブロックチェーンでの展開を見据えている」としている。

図は3社の役割分担を示したもの。デジタルガレージ(および同社が出資する研究開発組織DG Lab)と弁護士ドットコム、研究開発組織ブロックチェーン技術の開発と運用を、また弁護士ドットコムはそれに加えて契約内容の精査、実用面における法的観点からの検討・検証を、りそな銀行は従来の個人ローン業務の知見を元にした検証・提言および業務設計を担当する。デジタルガレージと提携する米Blockstream社は後述するElementsの提供という形で協力する。デジタルガレージにとって、スマートコントラクトとElementsによるリーガルテック分野のサービス開発は、同社がBlockstream社に出資した2年前から暖めてきたアイデアとなる(関連記事)。

「信用を見直す」アプローチに基づく新たなシステム構築手法を採用

今回の実証実験は、技術面から見ても興味深い。業務執行を自動化することだけが目的なら、ブロックチェーンやスマートコントラクトを使わずとも従来型のシステムで可能だと考える人もいるかもしれない。だがその場合はシステムを信用して利用する使い方となる。システム開発の常識からは当たり前の話だと思われるかもしれない。だが、金融分野の大規模システム開発の失敗事例が続き、サイバーセキュリティの脅威が激化している現状を見ると、別のアプローチに基づくシステム開発を検討する意味はあるだろう。

業務システムに対してビットコインのブロックチェーンやスマートコントラクト技術を適用することの意味は次のようになる。従来型のやり方はシステムを信用するアプローチであり、重厚な開発プロセスや厳重なテストにより不具合を取り除く(別の言い方をすれば「信頼性を作りこむ」)。一方、この分野でのブロックチェーンと(オンチェーンの)スマートコントラクトのイノベーションは、機械的、暗号学的に検証することが可能である点だ。この両者の違いを表す言葉として象徴的なのが、今回採用する技術であるElementsの開発元、米Blockstream社のスローガンである “Rethink Trust”(信用を見直そう)、それに”Don’t Trust. Verify.”(信用せず、検証しよう)だ(関連記事)。

今回の実証実験では、ブロックチェーン技術としてビットコインのブロックチェーン技術を応用した製品であるElements(米Blockstream社の製品)を利用する。Elementsは、ビットコインのブロックチェーンと2-way Pegするサイドチェーンを構築することを狙う技術として開発し、オープンソースソフトウェアとして公開している。DG Labでは「セキュリティと安全性で最も厳しい要件が求められる銀行業務システムにおいて、ビットコインをベースとするブロックチェーン技術は、その実績から他のブロックチェーン技術に比べ大きな優位性を持つと考えている」と説明している。9年間の連続稼働の実績、数千というノード数、世界最速スーパーコンより何桁も高いハッシュ計算能力を背景とするビットコインは、今のところ安全性という点で最も高い評価を得ているパブリックブロックチェーンであるといえる。

スマートコントラクトは、今回の発表の文脈ではブロックチェーンと連携して自動執行するプログラムを指す概念である(なおスマートコントラクトという用語をNick Szaboが提唱した時期は1990年代でビットコインより早いことには注意しておきたい)。今回の実証実験では、当面は「Elementsをベースにしながら、スマートコントラクトのロジック部分は別機能として実装する。金利など変動要素が大きいものはオフチェーン(ブロックチェーンの管理外)、それ以外は基本的にオンチェーン(ブロックチェーンの管理下)にする想定」(デジタルガレージ)としている。

近い将来、Elementsがスマートコントラクト用のプログラミング言語Simplicityを搭載する予定だ。「そうなれば、順次そちらに移していく計画」(デジタルガレージ)としている。Simplicityは米Blockstream社が開発しオープンソースソフトウェアとして公開しているプログラミング言語で、安全なスマートコントラクト開発に向けて特化したシンプルな言語仕様を持つ。Simplicity言語のホワイトペーパーも公開されている(専門家向けとなるが、日本語で読める資料として「暗号通貨輪読会#13」のJoe Miyamoto氏のスライドがある)。