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AIを用いて法務の仕事をスマートに——弁護士起業家が立ち上げたLegalForceが8000万円を調達

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業界の課題を現場で体験した専門家が起業し、テクノロジーを駆使して新しいソリューションを提供する。近年のスタートアップをみるとそんなケースが増えたきたように思う。

今回紹介するLegalForceもそのひとつ。もともと森・濱田松本法律事務所で働いていた2人の弁護士が2017年4月に設立した、「テクノロジーの活用で企業法務の効率化」を目指すスタートアップだ。

同社は4月2日、京都大学イノベーションキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、京都大学学術情報メディアセンター/情報学研究科知能情報学専攻兼担 森信介教授を含む複数名の個人投資家から8000万円の資金調達を実施したことを明らかにした(資金調達は2018年2月〜3月にかけて実施)。

条文の内容をAIがレビューし、修正案を提案

LegalForceが現在開発を進めているのは、自然言語処理を用いた契約書レビュー支援サービス「LegalForce」。同サービスではAIやクラウドによって契約書のレビューにかかる負担と、それにまつわるコミュニケーションや情報管理の手間を削減する。

大きな特徴となりえるのがAIによる修正案のサジェスト機能だ。これは契約書内の条項を選択すると、過去の修正履歴やLegalForceのデータベースをもとに修正内容が提案されるというもの。イメージとしては「ここの箇所に漏れがあるので、○○のように修正してはどうですか?」といった具合だ。従来は担当者がフォルダを引っ張り出して、手作業で行っていた業務を自動化する試みとなる。

開発中のサジェスト画面のイメージ

LegalForce代表取締役の角田望氏によると、この機能はレビュー業務の効率化はもちろん、担当者が気づいていなかった要素を“発見”できるメリットもあるという。「すでに記載のある内容を修正することは、そこまで難易度は高くない。一方で『もともと書かれていないが、本来は書いておくべきこと』をゼロから発見することは難しい」(角田氏)

これまでであれば、担当者の経験や知識レベルに依存する部分もあっただろう。だからこそ過去のデータを基に、抜け漏れも含めてAIが修正案のチェックをサポートする利点も大きい。

ただ角田氏の話では「技術的にチャレンジングな領域」であり、同社の株主で自然言語処理技術の専門家の森教授と開発を重ねている段階だという。契約書は企業ごとに色があるため、ユーザーごとにデータを蓄積していき、個々に最適な提案をする必要もある。今後のステップとしては、企業の法務部や法律事務所とパートナーシップを組み、実証実験という形から始める方針だという。

法務担当者の負担を削減する業務支援サービス目指す

また上述した通り、LegalForceは契約書レビュー時のオペレーションを効率化する機能も備える。これは角田氏の言葉を借りると「(契約書に特化した)グーグルドキュメントとチャットワークを足したようなもの」に近い。

開発中の契約書レビュー画面のイメージ

ドキュメントの共有やステータスの管理、関連するコミュニケーションをクラウドに一元化。各条文ごとにチャット機能を備えることで、従来はWordのコメントやメール、ビジネスチャットで行っていたコミュニケーションをLegalForce上だけで完結できるようにする。

「実際に現場でレビューしていて、コミュニケーションの部分で課題を感じることが多かった。たとえばチャットでやりとりする場合は情報がどんどん流れてしまうし、メールでは話が混線してしまう。大事な内容を見落とす原因にもなるので、やりとりを一元化したいという思いがあった」(角田氏)

まずは4月末を目処にベータ版の公開、そして複数社との実証実験にも着手する予定。ベータ版にはAIを活用したサジェスト機能は搭載されず、正式版からの提供になるという。

「契約書×テクノロジー」といえば、弁護士ドットコムの「CloudSign(クラウドサイン)」やリグシーの「Holmes(ホームズ)」など契約書の作成や締結をスムーズにするサービスの印象が強い。LegalForceのようにレビュー支援に着目したサービスはあまりなかったように思う。

「弁護士や法務部の担当者に聞いても(レビューを含む)契約書業務が大変という話をよく聞く。なにより自分自身もそうだったので、自然言語処理の技術をはじめとするテクノロジーによってもっと便利にできるのではないかと感じていた。最近はAIというと『仕事を奪う』という文脈で捉えられることもあるが、そうではなく弁護士や法務担当者の負担を削減し、自分の価値を発揮できる仕事、クリエイティブな仕事により多くの時間を使ってもらえるような業務支援サービスを目指したい」(角田氏)