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日本発の仮想通貨ウォレット「Ginco」がビットコインに対応、分散型サービスの入口となることを狙う

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仮想通貨ウォレットアプリ「Ginco」を開発・提供するGincoは4月24日、同アプリをビットコイン(BTC)にも対応させ、本格リリースしたと発表した。BTCへの対応は、2月にリリースしたベータ版でのイーサ(ETH)、3月のアップデートによるイーサリアム上のトークンERC20系通貨9種への対応と、ブロックチェーンを使ったVR空間アプリケーション「Decentraland」内の仮想通貨MANAへの対応に続くもの。これで取引量上位2種のBTC、ETHを含む、12通貨に対応したことになる。

Gincoはスマートフォンで仮想通貨を管理するためのクライアント型ウォレットアプリ。日本語インターフェースで仮想通貨の入金・送金・管理が可能で、取引所から送金した仮想通貨の保管、飲食店やECサイトでの決済、個人間での仮想通貨のやり取りなどに利用できる。現在はiOS版がリリースされている。

ウォレット提供の背景について、Gincoでは「仮想通貨ユーザーの資産の正しい管理・保護」と「ブロックチェーン技術の本来の意味での活用」を目的に挙げている。同社代表取締役の森川夢佑斗氏は、3年ほど前からGincoとは別のウォレットアプリを開発してきたが、「日本では仮想通貨やブロックチェーン、ウォレットに関する知識、普及が遅れている」と話す。

「ウォレットは仮想通貨の入れ物というだけでなく、テクノロジーとして本来のあり方でブロックチェーンを生かす土台であるべき。『ブロックチェーン技術を使ったサービス上で仮想通貨を利用できる』ようなウォレットが必要だと考えてきた。Gincoは仮想通貨ユーザーの資産保護と、ブロックチェーン技術の本来の意味での活用の両面からウォレット開発を進め、ブロックチェーンを使った分散型社会を実現するイノベーションを届けることを目指している」(森川氏)

技術とデザインの力でウォレット普及を図る

2017年は日本の「仮想通貨元年」とも言うべき年になり、仮想通貨保有者は100万人を超え、200万人になったとも言われている。2018年3月には国内交換業者17社の現物取引顧客数が350万人となった(4月10日、日本仮想通貨交換業協会が発表)。一方でCoincheckのNEM不正流出事件などでも見られたように、多くのユーザーが取引所に仮想通貨を預けたままにしている実態もわかってきた。

資産として仮想通貨を管理・保護するのであれば、不正アクセスなどで狙われやすい取引所ではなく、秘密鍵を端末で管理するクライアント型ウォレットなどへ移し替えて管理した方が、より安全だ。だが、既存のウォレットは海外発のものが多く、日本のユーザーにとってわかりやすく使いやすいものが少ない。そのことが、日本でのウォレット普及を遅らせるひとつの要因ともなっている。

森川氏は「海外発のウォレットは英語インターフェースだけのものが多く、日本人にとってはユーザーフレンドリーではない。デザイン面でも、一般の人にはとっつきにくい。このため、バックアップやプライベートキー(秘密鍵)の管理などウォレット操作が難しくなっているが、これらの操作はウォレットで仮想通貨を正しく安全に扱うためには外せない。そこで我々のウォレットは、デザインとしてユーザーがわかりやすいものにしたいと考えた」と話している。

仮想通貨ウォレットの概念は難しく、とはいえ資産を守るためには、秘密鍵の使い方を他人に手取り足取り教えてもらうわけにもいかない。自分で仮想通貨を管理するには、相応のリテラシーが必要だ。Gincoでは、日本語でのバックアップの設定など、誤操作での資産損失がなるべく起こらないようなUI設計を行ったという。

「仮想通貨に詳しい人のブログなどを調べずに、初心者でも使えるようなウォレットは今までなかった。我々は技術とデザインをウォレットの“使いやすさ”に落とし込んで、ユーザーにアプローチしたい」(森川氏)

またGincoはセキュリティ対応に加え、外部APIに依存せずにウォレット機能を独自に実装したことで、自前でブロックチェーンにアクセスでき、正しい取引履歴情報に対応するスケーラビリティを備える。日本では外部APIに依存するウォレットが多いが、「それでは仮想通貨のインフラとして十分でない」との考えからだ。

現状ではGincoは、ブロックチェーンの仕組み上最低限必要な手数料だけで、上乗せ手数料なしで利用できる。「今はダウンロードしてもらうことに注力し、仮想通貨をより活用する場面が出てきたときに何かしらの形でマネタイズする」とGincoでは考えているようだ。リアルの銀行が口座ごとにいくら資産があるか、情報を持っていることを強みとしているように、仮想通貨の銀行、お金のハブとなることで集まる情報を使ってビジネスにしていくという。

Gincoは近いうちに、ビットコインキャッシュ(BCH)やライトコイン(LTC)などの主要な仮想通貨にも順次対応していくとのことだ。またAndrod版の開発なども進めていくという。

ブロックチェーン時代の「銀行」を目指して

Gincoは今後、DEX(Decentralized EXchange:分散型取引所)やDapps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)への接続機能を拡張していくことで、ブロックチェーン時代の銀行、分散化された社会を実現するためのインターフェースとなることを目指している。

現在利用されている、bitFlyerやZaif、Coincheckといった取引所は、管理主体がある中央集権型取引所だ。それに対し、DEXは取引を管理する主体がなくても機能する、ブロックチェーンを活用して個人同士で取引を行うことが可能な取引所である。

Dappsはブロックチェーンを用いた分散型アプリケーションの総称で、実はビットコイン自体も分散型の通貨アプリケーション、つまりDappsの一種である。現在、インターネット上にさまざまなウェブアプリケーションが存在しているように、さまざまな分散型アプリケーションがブロックチェーン上で開発されている。

分散型アプリケーションの代表的な例がゲームのCryptoKitties。過去にTechCrunchの記事でも紹介されているが、イーサリアム・ブロックチェーン上に構築されたトレーディングカードゲームのようなもので、バーチャルな子猫を売買したり、交配して新しいタイプの子猫を作り出すことができる。ガチャのように子猫のレア度をゲーム運営主体が調整することはなく、透明性が保たれている。また購入や交配で得た子猫は、中央集権型ゲームで運営会社が倒産すれば無価値になるキャラクターとは異なり、イーサリアム・ブロックチェーンがある限り資産となる。

森川氏は「中央集権型サービスと非中央集権の分散型サービスにはそれぞれ一長一短があるが、分散型のほうがメリットがあるサービスがDappsへ移行してくるのは確実」と話す。「その時に入口として必要になるウォレットをGincoで実現する」(森川氏)

Gincoでは、イーサリアム・ブロックチェーンベースのトークンでVR空間に土地が買えるDecentralandをはじめ、Dapps開発が盛んな海外のブロックチェーンカンパニーを中心にアライアンスを組み、Dappsとの接続を進めていくという。

森川氏は「仮想通貨をリアルな決済手段として浸透させて普及させる、というのは“ダウト”。結局は使われないのではないかと思っている」と話している。「SUICAなど、既存のバーチャルマネーは使える場面が多いから使われているわけで、場面が少なければ『使って何の得があるの?』となるだけ」(森川氏)

森川氏は、ブロックチェーンを利用した分散型のコンテンツプラットフォーム「Primas」を例に説明する。「Primasでは良いコンテンツを生産すれば、評価によって(仮想通貨の形で)返ってくる。今は円を仮想通貨、仮想通貨を円に替えるといった、わざわざボラティリティの高いことをやっているが、そうじゃなくて使ったサービスを通して仮想通貨を手に入れられなければ、仮想通貨経済は回らない」(森川氏)

「仮想通貨を仮想通貨として使うサービスやアプリ(Dapps)はまだ少ない。そこへアクセスするためのウォレットも少ない。そこでまずは海外のプレイヤーと組んで、ウォレットからDappsを使えるようにして、いずれは自分たちでもDappsを作っていこうと思っている」と話す森川氏。将来的にはDappsで得た仮想通貨がウォレットに入ってくるよう連携したり、ウォレット内で各種仮想通貨間の両替なども行えるようにしたいと語っている。

Dapps接続および通貨としての利用を見越して、Gincoではビットコインやイーサリアムなど、仕様の異なる複数のブロックチェーンプラットフォームに対応している。「現状ではイーサ(ETH)を使うDappsが多いが、BTC対応のものも出てきており、利用者の多さから対応は必須と考えている。ウォレット開発は、ブロックチェーンを使ったアプリケーションなどを展開するための足がかりとしてのステップ1だ」と森川氏は話す。

Gincoは2017年12月の設立。1月にはグローバル・ブレインが運営するファンドから、総額約1.5億円の資金調達を実施したことを発表している。