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Movable Typeが約4年半ぶりのメジャーバージョンアップ、コンテンツ活用機能をより充実させる

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2001年秋、Ben Trottが妻のMenaのために開発した「Movable Type」は、ブログブームに乗って利用が広まり、またブームの牽引役も果たしたブログCMSの草分け的存在だ。今でこそ、ブログCMSとしてはオープンソースのWordPressにトップシェアを譲っているが、企業などの利用で日本では根強い人気を誇るCMSである。

そのMovable Typeに最新バージョンのMovable Type 7が登場し、5月16日に正式リリースされた。2013年10月のMovable Type 6リリースから約4年半ぶりのメジャーバージョンアップとなる。

コンテンツの可用性を高める新機能「コンテンツタイプ」

Movable Typeは、個人のウェブログ(2000年代初めごろはブログと略さずにこう呼ぶことが多かった)での利用から、ビジネスへも利用が広がり、その機能を拡張してきた。

2001年にTrott夫妻が設立したSix Apartは、2003年に伊藤穰一氏が率いるネオテニーから60万ドルの出資を受けたのを皮切りに、数社のベンチャーキャピタルやIntelなどから資金調達を実施。他社を買収しながらソフトウェアを開発し、サーバーホスティング付きの「TypePad」を提供するなど、サービスを成長させていた。

しかし、2010年にVideoEggとの併合により、SAY Mediaを設立した後は、2011年1月に子会社の日本法人シックス・アパートへ、Movable Typeに関する全権利とSix Apartブランドを譲渡。2011年2月にインフォコムの100%子会社となって再出発した日本のシックス・アパートは、その後2016年7月にEBO(Employee Buyout:従業員の自社株式取得による買収)を行い、独立している。

米国生まれのMovable Typeが現在、日本で利用され続けているのには、創成期の有志による熱心な日本語化の動きから始まり、最終的に日本で開発が続いていることが大きく寄与しているだろう。余談だが、日本語化に最も熱心に取り組んでいた有志のひとりが、現シックス・アパート取締役CTOの平田大治氏で、当時はほぼ、エバンジェリストとして活動していたと筆者は記憶している。

さて昔話はこれぐらいにして、最新バージョンのMovable Type 7の新しい機能、これまでのバージョンとの違いを見ていこう。

新バージョンの最も大きな特徴は、さまざまなコンテンツの形式に合わせて投稿画面を設計し、構造化されたデータが作成できる「コンテンツタイプ」機能の追加だ。

Movable Type 6(MT 6)まではブログCMSとしての延長線上で、「記事+カスタムフィールド」という形でコンテンツが管理されてきた。これに対し、Movable Type 7(MT 7)では「ある一定の型を持つ情報群をデータベース的に格納し、それを使ってページをつくる」ことができるようになっている。

具体例を見てみよう。下図は企業サイトでイベント告知などを行う際、告知ページに定型的に表示することが多い「講師」をコンテンツタイプとして設定するときの画面だ。

コンテンツタイプの編集画面。

MT 6では、型の決まった講師情報をイベント告知ページに入れようとなると、カスタムフィールドを告知ページに設けて、ページごとに編集を行う形となっていた。これでは、複数のイベントに同じ講師が登壇するとしても毎回講師情報の入力が必要だし、講師の肩書きなどが変われば修正は全ページで行うことになる。

MT 7では、コンテンツを要素ごとにコンポーネント化して再利用できる。コンテンツ内で他のコンテンツタイプを呼び出すこともできる。つまり、講師情報の場合なら、コンテンツタイプを使って格納しておいて、各イベントページで呼び出すことが可能となる。情報の流用がコピー&ペーストでない形で行えるので、コンテンツの可用性が高まる。

コンテンツ内での他のコンテンツタイプを呼び出し可能。

コンテンツタイプの作成、編集はドラッグ&ドロップで可能。フィールド設計イコール投稿画面の設計となるので、これまでは制作会社などが行っていた投稿画面の変更が、MT 7では標準機能で、エンドユーザーでも操作することが可能となっている(ユーザーによる変更ができないよう制限することもできる)。

コンテンツタイプにコンテンツを入力、編集する。

MT 6から搭載されているData APIでは、ブログや記事のデータの読み出し・編集がREST/JSON形式のAPIで行えるが、Data APIもコンテンツタイプに対応。コンテンツタイプとData APIを利用して、さまざまな形式のコンテンツをPC/スマホサイトだけでなく、アプリやデジタルサイネージ、印刷物などに使用できるほか、SNSなどのフォーマットに加工することも可能だ。

サイトからデータを引き出して表示、検索するなど、コンテンツを抽出・管理できる場としての性格が、MT 7では可用性が高まったことにより、さらに強まっている。

そのほかにもコンテンツの出力パス(ディレクトリ)を、コンテンツタイプに含まれるフィールドを利用して自由に設計でき、複数表示も可能なアーカイブ/マッピング機能や、コンテンツをブロック単位で構成・作成できるブロックエディタの搭載など、さまざまな機能追加や改善、UIの刷新が行われた。

5月16日にリリースされるのは、Movable Type 7のソフトウェア版、クラウド版、AMI版(AMI版はAWS による審査が終わり次第、公開予定)。上位版のMovable Type Advancedのリリースは10月の予定だ。

ブログCMSとしての手軽さとコンテンツ活用の両立を目指したMT 7

CMSとして国内では現在、5万サイト以上に導入されているMovable Type。「エンドユーザーは幅広く、官公庁、大企業から、士業や店舗など、さまざまな業種・規模の法人・事業者に利用されている」とCTOの平田氏は話す。

「特にセキュリティに関心があるユーザーの利用が多い」と平田氏。「Movable TypeはCMS自体の脆弱(ぜいじゃく)性には都度、すぐに対応してきた。またクラウド版では(セキュリティパッチが)自動反映される。またMovable Typeの大きな特徴は、静的ファイルの生成にも対応していること。官公庁などセキュリティの制限が厳しい環境も含め、いろいろな使い方ができる点が評価されている」という。

大企業では、イベント告知やオウンドメディアなどコンテンツの一部だけをMTで運用するなど、分割して利用されるケースも多いようだ。

平田氏は「今はウェブは一人で作るものではない。企業サイトを作る場合、制作会社やライター、担当者のいる現場など、さまざまな人のコラボが発生する。そうしたステークスホルダーが複数いる状態でも、大げさな承認フローを必要とせず、ユーザー側も制作者側も含めた幅広い人に使いやすく、というのがMTの目指すところ」と語る。そのため、コンテンツ公開承認フローのためのプラグインなども率先して取り入れているという。

「システム構築を手がけるパートナー企業が複数選べるのも、MTユーザーにとってのメリット」と言う平田氏は「中には一度WordPressにCMSを移行した後、MTに戻るユーザーもいる」と述べている。

今回のバージョンアップでは「これまでのブログCMSとしての手軽さと、長期的運用でのコンテンツ活用のしやすさを共存させ、本格的なCMSを使いやすく提供することを目指した」と平田氏は話している。

WordPressとの比較で高価だと言われがちなMTだが、担当部門単位でも取り回しやすく、安全にサイトを作れるというニーズを満たすことを考慮すれば、決して高額ではない、と平田氏は言う。

「サイトを作る理由は今や、マーケティングのため、顧客とのコミュニケーションのため、セールスのためなどと細分化し、コーポレート全体の話になるとは限らない。また管理についても、たとえ大企業でも実運営や予算面で情報システム部門がサイトのすべてを担当することは減っている」(平田氏)

そうした環境の中「公開が終わった後の巻き取りまで含めて考えると、長期的には、マルチサーバライセンスのMT Advancedを利用するほうが運用費や管理費が抑えられるケースもある」と平田氏は話していた。

シックス・アパート取締役CTO 平田大治氏