細胞培養技術で“人工フォアグラ”実現も、インテグリカルチャーが3億円を調達

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細胞培養技術を用いた食料生産に取り組むインテグリカルチャーは5月25日、リアルテックファンドなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額で3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。同社にとってはシードラウンドとなる位置付けで、投資家は以下の通りだ。

  • リアルテックファンド(リード投資家)
  • Beyond Next Ventures
  • 農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)
  • MTG
  • ユーグレナ
  • 北野宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所代表取締役社長)
  • その他非公開の投資家

今後は同社の細胞培養システムの大規模化と価格低減の実現に取り組みながら、組織体制を強化し事業化(商品化)に向けて舵を切っていく方針。まずはコスメやサプリメント向けの原材料から始め、その後は人工フォアグラなどさまざまな細胞農業製品を売り出していく計画だ。

世界で注目浴びる“クリーンミート”

インテグリカルチャーが取り組んでいるのは、特定の細胞を培養することで食肉などを生産する「細胞農業」と言われる領域。特に細胞培養で作られた食肉「クリーンミート(純肉)」は、動物を殺さずに生産できる持続可能なタンパク源として期待されていて、世界的に関連のスタートアップが生まれてきている。たとえばビルゲイツ氏らが出資しているMemphis Meatsはその一例だ。

培養肉を作るには細胞を培養液の中で増やし、肉の塊へと固めていくことになる。ただインテグリカルチャー代表取締役の羽生雄毅氏によると、これまで培養液の価格がひとつの課題となっていたそう。同社では現行の培養液に含まれる牛胎児血清(FBS)を、一般食品を原料とする「FBS代替」で置換する技術を開発。動物由来成分を不使用にすることで、低価格の培養液を実現した。

同社のコアテクノロジーである汎用大規模細胞培養システム「Culnet System」とともに利用すれば、細胞培養に必要な培養液のコストを1リットルあたり10円以下、従来の1万分の1以下にまで抑えることができるのだという。

なおCulnet Systemは外部から成長因子を添加せずに、さまざまな細胞を大規模に培養できるのが特徴で特許も取得している。この技術を用いてすでに鶏肝臓細胞の大規模培養により「鶏フォアグラ」を試作するなど、コンセプト実証を実施済み。従来の方法では細胞質100gで数百万円のコストがかかっていたが、同社の技術により一部の種類の細胞については100gで1万円以下相当まで原価を下げることができ、複数の事業会社から引き合いを受けているという。

また同社の技術は何も食肉を作ることだけに限定したものではないため、再生医療に繋がる研究として人の細胞を試したりもできるそうだ。

数年後には細胞農業製品が続々と市場にならぶ?

冒頭でも触れた通り、同社では今後さらなる価格低減と生産システムの大規模化を段階的に実現し、2018年中にパイロットプラントを製作、2019年末から2020年初頭にかけて商業プラント1号機を建設する予定。

商品化については、2020年を目処に化粧品・健康食品向けの原材料からスタート。その後はフォアグラを含め化粧品・健康食品・一般食品など、さまざまな細胞農業製品を販売していく計画だ。

「(人工フォアグラについては)実際に市場に出すとなると、規制当局との話し合いや販路の獲得なども必要になるので2023年頃を目処に考えている。(現時点では)最初は既存の製品より2割ほど高い価格での販売を考えているが、2020年代半ばには同等の価格で提供したい」(羽生氏)

市場にだすタイミングでは「ものすごく硬い、苦い」といったようなことはなく、食品として成立している状態が前提。またアレルゲン物質を含まない肉など、成分をアレンジすることで安全面などに配慮したものが作れるのだという。

インテグリカルチャーのメンバー。写真右から4人目が代表取締役の羽生雄毅氏

インテグリカルチャーは代表取締役の羽生氏が東芝研究開発センターを経て2015年10月に創業したスタートアップ。オックスフォード大学出身の羽生氏を含め、理系の大学院で博士号を取得したメンバーも数名在籍する。

もともとは培養肉の実用化を目指し、研究者やバイオハッカー、学生らが集ってできた有志プロジェクト「Shojinmeat Project」が始まり。産業化を推進する目的でインテグリカルチャーの設立に至ったのだという。

今後はNPOなどとも協力し、細胞農業の分野を盛り上げるためのエコシステムを形成。その中でインテグリカルチャーでは同社の技術を製品化し「増加を続ける世界の食肉需要に対して、持続可能な供給手段」の実現を目指す。