ジャーナリストから投資家への転身――元TechCrunch社員がたったひとりで立ち上げたVCファンドDream Machine

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5年ほど前、Alexia Bonatsos(旧姓Tsotsis)はTechCrunchの共同編集長として働いており、スタートアップ界では名のしれた存在だった。さまざまなスタートアップやファウンダーとも顔見知りだったBonatsos。しかし彼女が本当にやりたかったのはスタートアップ投資だった。

「私はかなり早い段階でPinterestやWish(当時はまだContextLogicという名前だった)、Uber 、Instagram、WhatsAppの記事を書いていた。そのため、自分はいいタイミングにいい場所にいる(つまりラッキーだった)か、うまく自分に情報が流れるようになっているんじゃないかと感じるようになり、『もし投資したらどうなるんだろう?』と考えずにはいられなかった」と語るBonatsos。

それから彼女は複数のベンチャーキャピタル(VC)と話をしたが、それが具体的な仕事につながることはなかったため、やりたい仕事を自分で作ろうと考えた。まずBonatsosは2015年にTechCrunchを去り、スタンフォード大学ビジネススクールの1年制修士プログラムへの参加を決める(Bonatsosいわく、他の投資家と「対等に話せるくらいの知識を身につけたかった」とのこと)。そして修士課程在籍中も修了後も、Bonatsosはさまざまな起業家と面談を繰り返し、ストーリーの伝え方や情報発信のやり方、多くのフォロワーを抱える人の説得方法など、彼女がTechCrunchで培ったスキルを彼らに伝えていった。

彼女は単にネットワークを広げようとしていたわけではなく、それと同時に個人投資家から資金を集め、徐々に第一号ファンドの準備を進めていたのだ。そして昨年12月、Bonatsosは遂にサンフランシスコにDream MachineというVCを立ち上げ、2500万ドルをファンドの目標金額としSEC(証券取引委員会)への登録も完了させた。

しかしたとえ2500万ドルという調達目標に近づこうが到達しようが、(元ビジネスジャーナリストらしく)規制上のリスクを考慮して彼女は資金調達に関する情報を公にするつもりはないようだ。とは言いつつも、先日話したときに彼女はすでに7社に投資した(うち1件はトークンセールへの参加)と教えてくれた。さらに投資先の共通点については、未だに成長を続けるシェアリングエコノミー、そして最近盛り上がっている非中央集権というトレンドがヒントだと語った。

そんなDream Machineの投資先のひとつが、先週TechCrunchにも関連記事が掲載されたTruStoryだ。CoinbaseやAndreessen Horowitzでの勤務経験を持つPreethi Kasireddyが最近立ち上げたこの会社は、ブログやホワイトペーパー、ウェブサイトの情報、ソーシャルメディアの投稿などをファクトチェックできるプラットフォームを開発している。彼らは「ブロックチェーンを使い、情報のヒエラルキーを確立するシステム」を構築しようとしているのだとBonatsosは言う。なおTruStoryの株主には、True VenturesやCoinbaseの共同創業者Fred Ehrsamなども名を連ねている。

さらにDream Machineは、サンフランシスコを拠点にオンデマンドの貸し倉庫サービスを提供する、設立4年目のOmniにも投資している。倉庫に持ちものを預けるだけでなく、Omniのユーザーはプラットフォーム上で所有物を貸し借りできるため、家でホコリを被っているものを使ってお金を稼ぐことができるというのが同社のサービスの売りだ。Bonatsosも最近Omniを利用し、投資家仲間が一度着たきりクローゼットの奥にしまっていたドレスを借りたのだという。なおプラットフォームに掲載される写真はOmniが撮影し、ユーザーは知り合いだけに貸し出すか、赤の他人にも貸出を許可するか選べるようになっている。

そして3社目となる投資先がFable Studiosだ。おそらくこの企業がBonatsosの夢でもある「サイエンスフィクションを現実にするチーム」にもっとも近い。Oculus Story Studio出身者で構成されFable Studiosは、一言で言えばAR・VRコンテンツ専門のクリエイティブスタジオ。彼らは今年のサンダンス映画祭でそのベールを脱ぎ、会場では同社の初期プロジェクトのひとつである三部作構成のアニメシリーズ『Wolves in the Walls』が上映された(トレーラーはこちら)。

Fable Studiosはこれまでの調達額を公開していないが、Dream Machineの他にもShasta Venturesや起業家兼投資家のJoe Lonsdaleらが同社に投資している。

普段どのように投資先を見つけるのか尋ねたところ、Bonatsosは自分がネットワーキングをまったくためらわないタイプであることが助けになっていると答えた(実は先日ある業界イベントに参加した彼女の様子を私たちは観察していた)。

さらにBonatsosは、彼女のように唯一のジェネラル・パートナーとしてファンドを運営する人が、まだわずかではあるものの最近増えてきており、彼らとの協業や情報交換も役立っていると話す。

Product Huntの創業者Ryan Hooverもそんな“ソロVC”を立ち上げたひとりだ。現在彼はWeekend Fundという300万ドル規模のファンドを運営しており、昨年の設立以来、10社前後のスタートアップに投資している。他にもProduct Huntの初期の社員で、現在はShrug Capitalで300万ドルを運用するNiv Dror、「技術面には明るいがネットワーキングが不十分な起業家」を支援するプレシードファンドのBoom Capitalを立ち上げたCee Cee Schnugg(Boom Capital以前は、Google元CEOのエリック・シュミットが立ち上げたInnovation Endeavorsファンドで4年半勤めていた)がいる。

さらに今年に入ってからシードファンド22nd Street Venturesを設立したKatey Nilanは、ファンド立ち上げ以前、さまざまな分野でマーケティング・広報関連の仕事に6年間携わっていた。

Dream Machineをはじめとするこれらのシードファンドが、今後成長はおろか生き残れるかどうかも、もちろんまだわからない。有名なシードファンドで働くあるベンチャーキャピタリストは、シードステージ投資が「狂乱状態」にあると話す。現在、大手のシードファンドやアクセラレータープログラム、新進気鋭のファンドなどから膨大な資金が流入しており、日を追うごとに将来有望なスタートアップに投資するのが難しくなっているというのだ。

しかしBonatsosは特に心配していないようだ。ちなみにDream Machineの初回投資額は平均30万ドルほどで、投資先候補の創業者の起業経験は問わないのだという。

というのも彼女には、起業家との広大なネットワークやシード投資家の知り合いからのサポート、そしてTechCrunch時代から培ってきた直感がある。またBonatsosは、他の投資家よりもずっと早い段階での投資もいとわないと語る。

「心配するのをやめ、野心的なビジョンを持って投資に臨むだけ」とBonatsosは言う。何年間もスタートアップ界にいる彼女がよく知っている通り「不確実性が高い投資こそリターンが期待できるのだ」。

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(翻訳:Atsushi Yukutake