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飲食店の経営をデジタル化し、ECのように効果測定できる環境へ——「favy」が5億円を調達

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favyの役員と株主一同。写真中央が代表取締役社長の髙梨巧氏

「どうやって飲食店というビジネスとデジタルを融合していくか、『飲食店の経営のデジタル化』をテーマに事業を進めてきた。特に正確な経営判断に必要なデータ基盤を作るというのは創業時から決めていたこと。ようやく、やりたかったことの本丸の領域に入っていける段階になった」——favy代表取締役社長の髙梨巧氏は、同社の現状についてそう話す。

グルメメディアや飲食店向けツールなど、食の領域で複数の事業を展開してきたfavy。同社は6月11日、Draper Nexus Ventures、アプリコット・ベンチャーズ、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫の資本性ローンに基づく融資により、総額約5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

favyでは調達した資金をもとに新規事業となる飲食店向けMA(マーケティング・オートメーション)ツールの開発のほか、グルメメディア「favy」やサービスEC事業「ReDINE」 の拡充に向けて組織体制を強化する。

同社は2017年3月に環境エネルギー投資、サイバーエージェント・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家より総額約3.3億円を、2016年4月にみずほキャピタルとサイバーエージェント・ベンチャーズから総額1億円を調達している。

飲食店がデータを収集し、有効活用できるシステムを作る

favyはちょっと変わったスタートアップかもしれない。

グルメ領域のメディアや飲食店向けのサイト作成ツール「favyページ」など複数のWebサービスを展開する一方で、「飲食店ABテスト」というリサーチサービスを作ったと思いきや、完全会員制の焼肉屋定額制のコーヒースタンドなど、新しいモデルの飲食店を立ち上げたりもしている。

もちろん各取り組みごとに狙いや役割はあるのだろうけど、創業時から髙梨氏がやりたかったことは変わらないという。それがこれから始める飲食店のMAツールも含め、冒頭で紹介した「飲食店の経営のデジタル化」の実現であり、そのために不可欠な基盤作りだ。

「レジの情報や予約の情報も有用だが、多くの飲食店にとってそれだけでは基盤としては物足りないと考えていた。売り上げが増えたとしても『それがどんな顧客なのか、何の影響で来店したのか』と言ったことがわからなければ次に繋がらない。何に投資をしたらどれだけのリターンがあったのか、きちんと効果測定できるようなデータとシステムが必要だ」(髙梨氏)

たとえばfavyが運営する焼肉屋「29ON(ニクオン)」では完全会員制とすることで、1人あたりの来店率やLTV(顧客生涯価値 : 1人の顧客が生涯に渡ってどれくらいの利益をもたらすかを算出した数値)がわかる。これによって「飲食店でも健康食品や単品通販と同じようなマーケティング手法が使える」(高梨氏)という。

「自社店舗で試すうちに必要なデータをトラッキングさえできれば、それを活用することで売り上げを伸ばしていけるという手応えをつかめた。さらに言えば、どのようなデータをトラッキングするべきか、どういった形でデータが取れれば使いやすいかもわかってきている。これらの仕組みを他の飲食店でも使えるようにシステム化したのが、飲食店向けのMAツールだ」(髙梨氏)

高梨氏はもともとネット広告代理店のアイレップ出身。同社ではSEO、SEM分野の立ち上げを担っていた。「Google アナリティクスの登場でWebサイトの効果測定や改善が簡単になった」ように、飲食店にも同様の仕組みが必要だという。

月間閲覧者6000万人超えのメディアfavyと連動

現在開発を進めるMAツール(飲食店向けには顧客管理ツールと紹介しているそう)は、favyの直営店で約1年前からテストを重ねてきたもの。2018年夏頃のリリースを目処に、5月にはテスト版をリリースしている。

開発中のMAツール。画像はテスト版のTOP画面

このツールでは顧客の予約経路やグルメメディアfavy内における行動データなどから、マーケティングに必要な情報を自動で収集、分析。店舗への来店誘導、集客施策に活かせるほか、予約管理や顧客管理に関する業務を効率化する機能、無断キャンセルを防ぐための前日確認を自動化する機能なども備える。

興味深いのは月間閲覧者が6000万人を超えるfavyで蓄積されたデータと連携している点だろうか。

高梨氏の話では、このデータを活用することで「来店したことのないユーザーも含めて、お店の見込み客が見える化できる」という。たとえばラーメン屋の記事に興味を持っているユーザーのデータとエリアのデータを組み合わせ、「新宿のラーメン屋だと、これくらいの見込み客がいる」と把握できるようなイメージだ。

テスト版の顧客管理画面

もちろん飲食店向けのMAツールと言っているように、来店頻度が下がっているユーザーへ広告やはがきを自動で送ったりなど、見込み客に対する集客施策を自動化することもできる。

飲食店向けのSaaSとしてさらなる進化を

今回の資金調達を踏まえ、favyでは組織体制を強化しMAツールや既存事業の開発、機能拡充を進める方針。MAツールに関しては他サービスとの連携にも取り組んでいくという。

また高梨氏によると、今後目指しているのは飲食店向けSaaSとしての展開。詳しくはまだ言えないとのことだが「集客の機能をより掘り下げていく深さの部分と、それ以外の領域へラインナップを広げていく幅の部分」の2軸でサービスを拡張していく計画のようだ。

「飲食店の経営のデジタル化を通じてやりたいのは、飲食店が簡単にはつぶれない世界を作ること。『デジタル化』というのは、広告手段が増えるとか、効果測定ができるというだけでなく、考え方がアップデートされるという意味もある。自社でも直営店を経営していて飲食店の仕組みとデジタルなマインドを融合することの大変さを痛感しているが、(favyの事業を通じて)飲食店の経営をサポートしていきたい」(高梨氏)