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新生delyはこれから、モノを売り、1兆円企業をめざす

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写真左より、ヤフー常務執行役員でコマースカンパニー長の小澤隆生氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ヤフー常務執行役員でメディアカンパニー長の宮澤弦氏

本日ヤフーの連結子会社となることを発表したばかりのdely。代表取締役の堀江裕介氏はTechCrunch Japanのインタビューに対し、「1000億円企業で終わるのではなく、1兆円企業をつくる」ための布石だと語った。ヤフーと手を組む新生delyはこれから、モノを売り、上場も目指す。

インフラになる、モノを売る

2016年2月にサービスを開始したレシピ動画サービスの「クラシル」。サービス開始から2年あまりで1200万ダウンロード、290万人のSNSフォロワー数を獲得するまでに成長した。約1週間前の7月5日には同業のスタートアウツを買収したことを発表したばかりだが、堀江氏は当時のインタビューのなかで「レシピ動画サービスのなかでダントツのナンバーワンになるための打ち手」と語っている。

レシピ動画のような領域では、トップのサービスに広告主が集中するため、いかにこの領域でナンバーワンを勝ち取るかが重要になる。そのために打ち出したのがスタートアウツの買収だった。

レシピ動画サービスというメディアビジネスをさらに強化することを考えれば、ヤフーの傘下に入ることにも納得がいく。アプリであり、動画というコンテンツを扱うクラシルは、そのフォーマットに慣れた若い世代に受け入れられやすい。それ以外のユーザー層を取り込むには、30代以上のユーザーも豊富に抱えるヤフーとの連携が大いに効果的となる。

具体的には、ヤフーのトップページにあるタイムラインにクラシルのレシピ動画を差し込んだり、検索キーワードを使った連携などを考えているという。

しかし、堀江氏は一方で、レシピ動画というメディア事業だけで狙えるのは“1000億円企業”が関の山だとも話す。1兆円企業となるためには何が必要なのか。堀江氏にとってその答えは、モノを売るサービスを手がけ、人々の生活のインフラになることだった。つまり、食の領域におけるEC事業への参入だ。

「それが、ミールキットを売るのか、食材を売るのかという具体的な形はこれからテストして決める段階。巨大な資本を持ち、コマース事業でモノを売ることについての知見を持つヤフーと手を組むことで、1兆円企業になるために何か大きなことができると考えた」(堀江氏)

日本では2017年4月にAmazonが、そして昨日の7月10日には同じく料理レシピのクックパッドが参入を発表した食品ECビジネス。これからその領域で新しいサービスの開発を目指すdelyには、彼らならではの強みがあるという。

既存のレシピサービスを利用するとき、ユーザーはいま手元にある食材で作れる料理を検索することが多い。冷蔵庫を見て、豆腐とひき肉が余っているから麻婆豆腐のレシピを検索するという具合だ。その一方で、クラシルを利用するユーザーを調べてみると、おいしそうな動画を通して自分が食べたいものを感覚的に見つけ、それから食材を買いに行くという人が多かったという。レシピを見るとき、ユーザーの手元に食材がないという状況は、これから食品ECを手がけるdelyにとっては大きなチャンスなのだ。

delyの創業は2014年2月。その当時に彼らが手がけていたのはフードデリバリー事業だった。しかし、結局この事業は上手くいかず、2015年にメディア事業へとピボット。2016年春からは料理動画に注力したが、ピボット時にはスタッフが全員会社を去る事態にも陥った。その苦い経験を忘れないため、当時のサービス名である「dely」を今でも社名として残している。そんなdelyにとって、モノを売るサービスを手がけるのは創業以来の悲願なのだ。

実際、2016年にYJキャピタルが初めてdelyに投資した際に代表取締役を務めていた小澤隆生氏は、「当時delyを見たときから、これは“モノを売れる”サービス」だと感じたと話し、そのとき堀江氏が作成していたピッチ資料にも、モノを売るサービスへの展開は明記されていたのだという。

「クラシルは、料理をするユーザーの意思決定を楽にするサービス。でも、まだまだそれは完全ではない。今でもユーザーは週に2〜3回は買い物に行っている。ユーザーの意思決定を究極的に楽にしたい」(堀江氏)

引き続き上場も目指す

今回、ヤフーはdelyの株式を既存株主から買い取る形で出資比率を引き上げているが、堀江氏自身はたったの1株も売却していない。ヤフーの連結子会社となっても、引き続きdelyは上場を目指すと堀江氏は話す。

「このニュースを見て、でかいこと言っていたのに売っちゃったのかと勘違いする人もいるかもしれないけれど、僕はあくまで1兆円企業をつくる気でいるし、上場も目指している。キャッシュもまだ数十億単位で残っているから、(勘違いするのは)勘弁してください」と笑顔で堀江氏は話した。

「自分たちの財布の範囲内でできることを考えるのではなく、まずは勝つための意思決定とは何かを考え、それに必要なお金をどうやって調達するかを考える。今後1年間で見えてくる数字をもとに、上場を戦略の1つとして考えたい」(堀江氏)

2017年3月に行った30億円の資金調達、つづく2018年1月の33億5000万円の資金調達など、これまでも大幅にアクセルを踏み込んできたdely。今回のディールにより、delyはヤフーとの連携をさらに深め、新たなサービス開発という挑戦を始める。