3Dプリント銃

米国内で銃の3Dプリントデータの配布は合法になった…次はどうなる?

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【編集部注】著者のJon StokesはArs Technicaの創設者の一人であり、作家であり、そして元Wiredの編集者でもある。彼は現在、Collective IdeaでRubyをハックし、AllOutdoor.comを運営している。

7月10日火曜日、アメリカ合衆国司法省は、オースチンに本拠地を置くDefense Distributed(DD)との間の画期的合意を発表した。DDは若きカリスマリーダーによって率いられた何かと物議をかもすスタートアップであり、そのリーダーはかつてWiredによって世界で最も危険な15人の1人として名指しされた人物だ(Defense Distributedのトップページには2018年07月18日現在、米国時間8月1日より3Dデータの配布を再開すると書かれている)。

極度に多弁でメディアにも精通しているCody Wilsonは、Defense Distributedの主力製品である銃製造装置Ghost Gunnerが、米国だけでなく世界中で、銃規制の最終局面につながるだろうという熱弁を、記者に対してふるうのが大好きだ。Ghost Gunnerとインターネット接続、そしていくらかの原材料があれば、誰でも、何処でも、ノーマークの追跡されない銃を家庭や車庫で製造することができるのだ。たとえ銃規制戦争が実質的に終わっているというWilsonの信念が間違っていたとしても(そして私は彼が間違っていると思っているが)、火曜日の裁決は銃規制のありかたを根本的に変えた。

その合意の発表が配信されようとしていたとき、私はイリノイ州マイラン(Milan)にあるLMT Defenseの駐車場にいた。

かつてLewis Machine & Toolという名で知られていたLMT Defenseは、その物静かで宣伝嫌いの創業者Karl LewisがCody Wilsonとは全く正反対であるように、Defense Distributedとは全く正反対の企業だ。しかし、LMT Defenseの話は、Defense Distributedの話と並べて語るのに相応しいものだ。なぜならそうすることで、人類が古くから戦争を行ってきた、道具や技術の過去、現在、未来について多くを明らかにすることができるからだ。

従来の銃器

Karl Lewisが、イリノイ州ジェネセオのSpringfield Armoryで銃の製造を始めたのは1970年代に遡る。現在LMT Defenseの本社がある場所からは、ほんの少しばかり高速道路で離れた場所だ。高校までの教育は受けているが、いまでは誰よりも銃器製造の裏にあるエンジニアリングに精通しているLewisは、かつてSpringfield Armoryの店舗で働いていたときに、AR-15用の重要で故障の起こらない部品(ボルト)についてのアイデアを得た。彼はまずそのアイデアをSpringfield Armoryの経営陣に提案したが、採用は見送られた。そこで彼はマイラン市内の自動車修理工場の片隅を借りて、機材を買い揃え、自分自身でボルトの製造を始めたのだ。

Lewisは借りたスペースで夜と週末に働き、新しく製作されたボルトをキッチンオーブンで熱処理するために、家に持ち帰っていた。最初のバッチを製作して程なく、彼はM4カービン銃のためのボルトを供給するささやかな契約を、米軍と結ぶことができた。このM4ボルトの最初の成功を受けて、Lewis Machine & Toolはその製品を拡大し、完全な銃を取り揃えるようになった。その後の30年間の間に、LMTは世界の軍隊のためにAR-15パターンライフルを供給する世界トップメーカーの1つに成長した。そしていまやドイツのHeckler & Kocや、US SOCOM(米国特殊作戦軍)の精鋭部隊に銃を供給するベルギーのFN Herstalらと肩を並べる、選ばれた銃器メーカーの1つとなっている。

イリノイ州マイランにあるLMT Defenseの事務所(画像提供:Jon Stokes)

LMTの銃ビジネスは、様々な重要な関係、得るのが難しい政府との契約、そして深いまるで修験者のようなノウハウの上に構築されている。その機械操作者のスキルと、エンジニアリングを扱う手段(誤差、測定、そして記録など)の良し悪しが、同社の生き死にに直接関わるのだ。政治的なコネも大切な要素だ、最大の武器契約には議会による承認が必要で、政治的風向きがあちらこちらと変わるのを何ヶ月もの間待つ必要もある。国同士が手を結んだり離れたり、取引の事務処理が政治的論争のあおりで気まぐれに停滞したり、ようやく担保が確保されて資金が移され、製造が始められるようになったり。

こうした銃を売ることは、それを製造するプロセスと同じくらい、古いやりかたに従っているのだ。LMTの世界での成功は、メディアが取り上げたりPRが功を奏したからではなく、外国の様々な首都でのディナー、世界でもトップの特殊部隊との様々な折衝、私たちのほとんどが聞いたことのないトレードショーでのブース、そして高級官僚たちの秘密の代表団による、イリノイ州の西の境界にほど近いトウモロコシ畑に囲まれた小さな街のマシンショップへの訪問によってもたらされたものだ。

政治的かつ様々な出来事の影響で、需要と供給の動向が変動する民間銃市場は、ブドウが葡萄棚に絡みながら成長するように、世界の軍事小型武器市場の安定したコアと絡み合っている。銃器製造のイノベーションは双方向に起こるものの、近年ではより多くの流れが、市民市場から軍事ならびに法執行機関市場へと向かっている。ほとんどの場合一般市民たちは、政府や法執行市場に提供を行っているものと同じ生産ラインから、銃を購入しているのだ。

これが現在の世界で、小さな武器を製造し販売するやりかただ。そしてPCやクラウド、そしてスマートフォンが全てを破壊しひっくり返す以前の、IBMやOracleの全盛期を目撃してきた者なら皆、上で説明した取引の様子が想像できるだろう、会社のロゴマークのついたポロシャツを着た身なりの良い奴らのところへ行き、署名と刻印と大きな数字が書き込まれた大きな買い物の注文を行うのだ。

LMT Defenseのハードウェアを前にした著者

銃、麻薬、100万人ものKarl Lewises

上でも少し言及したIBM PCによるアナロジーを使った物語の一部を続けるとこうなるだろうか。Defense DistributedのGhost Gunnerが、必然的に出現するそのクローンや後継機種と共に、LMT Defenseのような恐竜を打ち倒す。それはかつてPCとクラウドが、メインフレームやミニコンビジネスを衰退させたやりかたと同じものだ…。

ただしこうしたことが実際に起きることはない。

Defense Distributedが銃規制を破壊するわけではないし、もちろん銃産業を殺すわけではない。上で説明した従来の銃産業全体は、この先何十年も存続するだろう。それは主に、各国政府がその武器を、LMTのような実績のあるメーカーたちから購入し続けるからだ。しかし政府や市民武器市場の外側を取り巻くように、新しい自家製のアングラ銃市場が登場するだろう。そこでは愛好家たちがダークウェブ上でファイルを交換し、裏庭で新しい武器のテストを行うのだ。

自家製銃革命は、何十万人ものKarl Lewises(良いアイデアを持ち、それをプロトタイプし、少量の生産と販売から始め、最終的には世界の武器市場に新しい技術と製品を提供する、孤高の天才)を生み出すことはなく、100万丁もの追跡不可能な銃を生み出したりもしないだろう。

この観点から見ると、銃の未来はドラッグ(麻薬)の現状とよく似たものになる。ダークウェブは大手製薬会社を傷つけなかったし、まして破壊することもなかった。むしろ、趣味のドラックメーカーたちや小さな実験室に広がり、国際的なブラックあるいはグレー市場に、勃起薬から合成麻薬までを供給する調剤R&Dの裏世界を形成した。

この新しい現実に対する銃規制の取り組みは、まず何よりも弾薬に集中して行われるだろう。弾薬購入に際しての背景チェックがより多くの州に広がるだろう。銃そのものの規制が不可能になった世界で、政策決定者たちが市民が武器にアクセスする手段を制限しようとするからだ。

弾薬は長い間、Wilsonが築こうとしている城壁に入ったひび割れだった。弾丸や薬莢は加工しやすく、大量の入手や製造が簡単だが、火薬や雷管はまた別の話だ。火薬と雷管は、現代の弾薬を構成する化学的爆発部品であり、家庭で作ることは難しく危険である。こうしたことから銃の規制側はこの部分を握り、近い将来に「弾丸コントロール」に軸足を移そうとするだろう。

だが弾薬の規制はうまくいかないだろう。これは弾薬が交換可能であるためだ、そして既に無数の弾薬が市民の手に渡ってしまっている。

また弾薬のコントロールに加えて、一部の政府は、3Dプリンタやデスクトップフライス盤(Ghost Gunnerは後者だ)の製造業者たちに、銃部品のファイルの印刷を拒絶するように強制しようともするだろう。

しかし、これは2つの理由から強制することは不可能だ。そもそも、こうしたマシンに何が銃に関連したファイルで何が関連していないかをきちんと教えることは難しい。特にそうしたファイルを提供する側が、検知機能を出し抜こうとファイルを変更し続ける場合にはなおさらだ。しかし、より大きな問題は、オープンソースのファームウェアは最も人気のあるプリンターやフライス盤ですぐに利用できるようになるため、その気になったユーザーは「脱獄」することで、好きなように使えるようになることだ。これはすでにルーターや車のような製品でさえ起こっているので、必要があれば、自家製造装置でも間違いなく行われる。

弾薬の規制や製造装置への制約が失敗に終わったら、政府は長期的には所持許可証とデジタル検閲の2本立てからなるアプローチを採用する。

写真提供 Getty Images:Jeremy Saltzer / EyeEm

まず初めに政府は、銃を規制物質(すなわち薬物やアルコール)のように扱う銃規制計画を検討する。焦点は、単純所持に対する審査と許可へと移る。これは私がPolitico(米国の政治に特化したニュースメディア)で概説した銃所有者のライセンス制度のようなものだ。銃や弾薬を追跡することはあきらめて、銃の所有に関する許可により集中し、違法な所有をする者に対して拘束と起訴を強化する。州からマリファナカードに相当する武器所持許可証を得るのだ。その際その銃が正規ディーラーで買った物か、自分の家で作った物かは問わない。

未来の銃規制制度の第2の要素は、既に先進国の主要な技術プラットフォーム上で行われているような、オンライン規制だ。私はDefCad.comが、オープンウェブとして長続きするとは思っていないし、オンラインでいれば最終的には、stormfront.orgのような過激派サイトと同じような苦労を背負い込むことになるだろう。

銃のCADファイルは、Facebook、Twitter、Reddit、そしてYouTubeなどの大規模テクノロジープラットフォーム上ではまず見つけることのできない、児童ポルノや海賊版映画の類のブラックリストに追加されることになるだろう。もしこうしたファイルを交換したい場合には、多くのウィルスに怯えながら、非常に煩わしい広告が送り込まれてくるサイトを、自分自身でアクセスしなければならない。もしくはダークウェブに辿り着き、最新の銃のデザインに対して暗号通貨で支払いをするのかもしれない。これは無政府資本主義(ancap:anarcho-capitalism)の夢かも知れないが、決して主流になることはなく、いかなる意味でもユーザーフレンドリーなものではない。

そして、その後に来るものに関して言えば、これは政治的に不快なオンラインスピーチの次に来るものは何かという問と同じものだ。今や銃規制論争は、オンラインにおける言論の自由論争の一部になっている。このため米国、英国、そして中国などの場所で、オンラインスピーチに関して起きたことは、銃に関しても起きるだろう。

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(翻訳:sako)

写真:Getty Images