「そのサービスはメルカリを超えるか」ソウゾウ代表、サービス停止の背景と新事業の構想を語る

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新サービスで取り組む「旅行」をイメージした服に身を包むソウゾウ代表の原田大作氏

つい先日の7月20日、メルカリグループのソウゾウは「メルカリNOW」、「teacha」、「メルカリ メゾンズ」のサービスクローズを発表した。なかでもteachaに関しては2018年4月のサービスリリースからわずか4ヶ月というタイミングでの判断だった。

それを報じた記事に対するTechCrunch Japan読者のSNSの反応をみても、同社の仮説検証のスピードに関心する声とともに、早すぎるとも感じるサービス停止に対して驚きの声も多くあがっていた。

TechCrunch Japanでは、2018年4月1日よりソウゾウ代表取締役に就任した原田大作氏にインタビューを行い、サービスクローズの背景、そしてこれからのソウゾウが取り組む新サービスについて聞いた。

怪物「メルカリ」の存在

原田氏が代表に就任した2018年4月の時点では、サービスのクローズについては何も決まっていなかった。「当然これからも伸ばしたいという思いはあったが、代表に就任した当時は、既存のサービスをどうするのかについては未定だった」と原田氏はいう。

「これまでスピード感をもってさまざまなサービスを立ち上げてきたが、ソウゾウとして何を目指すべきかという部分については手探りでやってきた感もある。メルペイがソウゾウから生まれたいま、ソウゾウとして何をすべきかというものを改めて考えたとき、メルカリに近しいものと遠いものを整理することになった」(原田氏)

その整理のなかで、原田氏はフリマアプリの「メルカリ」と近い性質をもつサービスについては、その機能をメルカリ本体に集約するという判断を下す。その例の1つが、ブランド品特化型のフリマアプリであるメルカリ メゾンズ(以下、メゾンズ)だ。この種のサービスについては、サービス独自の機能を切り出し、すでに大きなユーザー基盤をもつメルカリにその機能を追加することで、レバレッジを効かせたサービス運営が可能になるというのが、サービスクローズの理由だ。

「スマートフォンの時代は終盤に差しかかっていると思う。そのなかで、さまざまなサービスをアプリ単位で運営し、マーケティングをするというよりは、メルカリに機能を追加していく方が良いと思った。それぞれのサービスの機能的な部分が効果的だというのは分かっていたので、レバレッジを効かせた方が事業としても良いし、メンバーとしても良いだろうという判断だった」と原田氏は話す。

メルカリ本体と性質が似ているメゾンズについては、本体に機能を集約する。では、メルカリとは性質が大きく異なる、スキルシェアサービスの「teacha」即時買取サービスの「メルカリNOW」についてはどのような判断だったのだろうか。

teacha、メルカリNOWをクローズした具体的な理由について、原田氏は「teachaは“学び”をテーマにしたもので、もちろんそれなりのトランザクションも生まれていたが、この市場は時間がかかるという印象だった。メルカリNOWについては、100円のものから1万円のものまで扱うというサービス形態では、商品状態のボラティリティが大きく、それを判定するのに今のAI技術では難しいというところに壁を感じた」と話す。

こう原田氏が話すとおり、それぞれのサービスを継続していくうえで課題があったことは確かだ。しかし、サービスクローズの判断材料は最終的に1つの問いに集約される。「はたして、そのサービスはメルカリを超えるのか」という問いだ。

「ユニコーン級と言われるようなサービスが生まれるときには、それだけ初動の数字の伸びも大きい。これまで立ち上げたサービスが、メルカリに取って代わるサービス、メルカリを超えるサービスになるかどうかというのは、サービスをクローズするときの判断材料の1つだった」と原田氏は語る。

メルカリという怪物サービスを抱える彼らにとっては、新規事業が超えるべきハードルもそれ相応に高い。そして、これからもメルカリグループの新規事業を担うソウゾウは、その“怪物”を作り出すという目標がある。そのために原田氏は、あえてメルカリという存在から距離をとるという選択をした。

スタートアップとしてサービスをつくる

ソウゾウは現在、「旅行」分野の新サービスを開発中だ。残念ながら、この新サービスの全貌はまだ明らかになっていない。しかし、原田氏によれば、この新しいサービスはC向けのもので、最終的にはAI、フィンテック、ブロックチェーン、準天頂衛星、5Gなどのテクノロジーを活用したものになるという。

C向けサービスを作り、テクノロジーを中心にサービスを作る。ここまでは、これまでのソウゾウと変わらない。しかし、原田氏が代表を務める新生ソウゾウが掲げるのは、より“スタートアップらしい”サービス開発の方針だ。

これまでメルカリが発表してきた新アプリは、メルカリIDによるログインが必要というサービス設計になっていた。大きなユーザー基盤をもつ本体サービスを活用し、いわゆる“経済圏”を作り出すためには合理的な選択であり、他社でも同じようなシステムを採用することも多い。

しかし、今回の新サービスではメルカリIDによるログインを必要としない設計になる予定だと原田氏は言う。これはすなわち、メルカリ本体からの送客など、ソウゾウがこれまで得てきた恩恵を手放すことを意味する。

その理由として原田氏は、「メルカリのIDと連携していて、送客もしてもらえるなんてスタートアップは存在しない。スタートアップとしてのソウゾウは裸で勝負すべきだし、スタートアップは日々、そういう戦いをしている。メルカリのIDありき、送客ありきとなってしまうと、サービスが愛されているかという本質から少しずつズレてしまう。伸びないサービスでも伸ばせてしまうんです」と語る。

今や、メルカリの累計ダウンロード数は1億件を超える。でも、そのメルカリが誕生した2013年7月当時、メルカリIDなんて言葉は存在しなかったし、送客してくれるサービスもなかった。本当の意味でメルカリを超えるサービスを生み出すためには、本家からのサポートを断ち切り、当時のメルカリと同じ土俵で戦う必要がある。だからこそ原田氏は、メルカリという存在からあえて距離をとるという選択をしたのだという。

ソウゾウの新規事業チームは、メルカリ本社とは別のところにオフィスを構えている。上場企業メルカリのグループ会社ともあろうソウゾウがオフィスを構えるのは、コワーキングスペース「WeWork」の小さな一画。原田氏を含む約10名の新規事業チームは、そこで日々仕事をしている。この点からも、スタートアップとして事業をつくるという原田氏の意思が感じられるだろう。

ソウゾウは“スタートアップ”に、原田氏は“起業家”に立ち返る。その彼らが手がける新サービスは、今年秋をめどにリリースされる予定だ。