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レイバー・デー

シリコンバレーはいかにレイバー・デーを祝うべきか

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25歳のエンジニアに、「あなたにとってレイバー・デーとは何か」と聞くとしよう。すると彼もしくは彼女は、こう答えるかもしれない。夏の休暇のあとにくるおまけの3日間。あるいは、ドローレス公園でバーベキューをする日。はたまた、学生生活を再び体験するために毎年恒例のタホ旅行をするための日。

いや、シンプルに、普段激務だからゆっくりする日、かもしれない。

スタートアップ業界の創設者や従業員は、週80時間労働を誇るくらい間違いなくよく働いている。エアコンの効いたコワーキングスペースに陣取って電話会議でディールを終わらせようとするさまは、レイバー・デーが最初に祝われた1880年代のひどい労働環境とはまるで違う。

ここシリコンバレーで働く人は、ひどい労働問題は自分とは関係ないと独りよがりな考え方でこの祝日をビールを飲んだりホットドッグを食べたりして得意げに祝うべきではない。その代わり、我々の職場や会社をどれだけ公平でダイバーシティに富み、包括的で、そして倫理的責任のあるものにできるかと考えるのに、この祝日を使うべきだろう。

血塗られた始まり

1882年9月5日、労働者1万人が、生活するに足る賃金を得るために1日12時間、週7日働かなければならない過酷な労働環境に抗議する目的で“モンスター・レイバー・フェスティバル”に集結した。“5歳、6歳という幼い子供ですら国の至るところの製粉所や工場、鉱山で骨折って働いていた。

この抗議の動きは、アメリカ鉄道労働組合が全国的なストライキを行って郵便を運ぶ列車も含む国の輸送インフラに混乱をもたらした1894年にクライマックスを迎えた。Grover Cleveland大統領はこれは連邦犯罪だと宣言し、ストライキ鎮圧のため連邦正規軍を派遣。その結果、30人死亡、けが人多数という労働史上最も血塗られた事件の一つとなった。

それから数カ月後、休まることのなかった労働者の傷を癒やし、安らぎを与えようと、レイバー・デーは国家の祝日に制定された(これは都合よくもCleveland大統領の再選をかけた選挙戦と同時に行われた)

戦いはまだ勝利を勝ち取っていない

今日のシリコンバレーでは、公正な労働条件や生活賃金にかかる戦いというのは、うたた寝や益の多い株式報酬といった現実から程遠いものだ。誰の話からしても、深刻な労働問題の数は大幅に改善をみせている。長時間労働が依然として懸案ではあるが、多くの人が自ら必要以上に働くことを選んでいると認めるだろう。我々の労働環境は完璧ではないが(たとえばスタンディングデスクは完璧に人間工学的ではないかもしれない)、それは命を脅かしたり健康を著しく損なうというものではない。また、平等賃金も懸案だが、スタートアップでの“失敗”後の最悪なシナリオが、テック大企業に入って6桁の給料をもらいながら中間管理職として働くことを意味するのなら、最低生活ができるだけの賃金を稼ぐというのは特に懸案ではない。

今日の職場における課題は墓場的でもなければ死を意味するようなものではない。だが、戦いはまだ終わっていないのだ。我々の職場環境は完璧には程遠い。企業と従業員の力関係は全く平等ではない。

テック業界では無数の問題を抱え、それらは変化を生み出すために従業員から始まる大衆的な動きを必要としている。以下に挙げる問題はいずれも、個別に記事を書けるくらいの複雑さや微妙な要素を抱えているが、なるべく手短にまとめてみた。

1. 平等な労働に対する平等な報酬ー男女間の賃金格差は、他の産業と比較してテック業界はましだが(テック業界では平均4%vs他の全産業平均は20%)、テクニカルな職務において女性の賃金の不一致は、テック業界での他の職務の2倍にのぼる。

2. ダイバーシティー調査ではダイバーシティは改善されているが、それでもテック専門職の76%は依然男性に独占されていて、テック企業で働く人に占める黒人・ヒスパニック系の割合はわずか5%だ。Atlassianによる最新の調査で特に注意したいのは、調査に回答した人の40%超が、自分が働く会社のダイバーシティ・プログラムは改善する必要はない、と感じていることだ。

3. 包括性ー包括的な職場というのは基本的な人権だが、ハラスメントや差別がまだ残っている。Women Who Techによる調査では、テック企業で働く女性の53%がハラスメントを経験したと報告している(多くは、性的なもの、攻撃的な脅し、セクハラ)。男性では16%だった。

4. 委託請負/契約社員ーAmazonのような企業の従業員が福利厚生や上昇する株の恩恵を享受している一方で、企業組織の外辺にいる倉庫で働く労働者の現実は辛いものだ。ジャーナリストJames Bloodworthが出した最新の本によると、英国にあるAmazonの倉庫で働く人は“遠く離れたところにあるトイレの代わりにボトルを使っている”。別の調査では、そうした労働者の55%がうつに苦しんでいて、80%が再びAmazonでは働きたくない、と言っている。類似するケースとしては、自殺や未成年の労働、職場での事故といった次々に出てくる一連の懸案問題にさらに賃金不平等も加わったFoxconnが再び非難を浴びている。Foxconnは世界最大の電気機械メーカーで、AmazonやApple、その他多くのテック企業の製品をつくっている。

5. 企業の社会的貢献と倫理ーシリコンバレーはバブルだが、そこでつくられたプロダクトはそうではない。FacebookとCambridge Analyticaの情報流出があったが、こうしたものは多くの人の生活に大きな影響を及ぼす。オートメーションやAI応用に伴う不確実さや不安は、世界における配置転換の可能性として現れている(Forresterによると、米国だけでも2025年までに2270万人が影響を受ける)。

このように、ここ半年の反シリコンバレーの感情は大きくはっきりと響き渡るべきメッセージを送っているーシリコンバレーで我々がつくるプロダクトや、ディスラプトした産業は、真剣に考慮されるべき労働者にとって本当に重要性を持っている。

より良い労働環境へ

こうした問題を解決するのに、シリコンバレーで働く人々は結束する必要がある。しかしながら、従来の労働組合がその手段とならないかもしれない理由はたくさんある。

まず初めに、単純に、テック企業と労働組合というのはソリが合わない。特に、米国で最も大きい組合の一つ、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)はシリコンバレーの自由な精神に距離を置いてきた。労働階級とテック産業のエリートの間に明らかにラインを引いている。AFL-CIOのプレジデントは、いかにテクノロジーが労働を変えたかについての最近のスピーチで「過去数年の出来事で、社会が取るべき選択肢はシリコンバレーの億万長者の自由なパラダイスではないことがはっきりした。人種差別的で、権威主義的だ」などと歯に衣着せずに語った。

しかしおそらく、シリコンバレーにおける結集した動きがどんなものになるのかということと、従来型の組合の動きがどんなものになるのかという違いなど大多数の人の興味を引くところではない。関心はいかに少数派を保護するかにある。1880年代、劣悪な労働条件や標準以下の給与はほとんどの人ー男性、女性、子供に影響を及ぼした。組合は多くの人にとって現状を変えるための手段だった。

しかし今日、平均的な25歳のエンジニア男性にとって、ダイバーシティや包括性を進めること、オフショアの従業員の不当な待遇について発言することは、給与や雇用マーケットにおける好ましさ、労働条件にまったく影響しない。彼は競争の激しい雇用マーケットでの貴重な“つて”としてへつらわれるという特権を謳歌するだろう。しかしオンデマンドサービス的に仕事を請け負う人はそうではないだろう。また、威圧的なボスを持つ女性もそうだろう。これこそが、我々が目を覚ますことがかつてなく大事な理由だ。彼らの味方やパートナーになるだけではなく、特権階級ではない同僚や、我々の会社やプロダクトを使う人々に影響を及ぼす要因を克服する者となるべきなのだ。

だから今度のレイバー・デーは、ビールやホットドッグを楽しみながらも、全ての人のためのより良い労働環境を勝ちとろうと戦い、血を流した人々のことに思いを馳せてほしい。そして火曜日、将来に向けてダイバースや包括性、そして倫理的責任のある会社にするための戦いをいかに継続できるかということに備えてほしい。

イメージクレジット: Hero Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)