ブロックチェーンでチケット転売防止、京大発スタートアップLCNEMの「Ticket Peer to Peer」

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京都のスタートアップ企業であるLCNEMは、パブリックブロックチェーンを応用した転売防止機能を備えるチケット発行管理のサービス「Ticket Peer to Peer」を公開した(発表資料)。パブリックブロックチェーンの機能を、送金やゲームなどではなく、チケットの管理に使う。その仕組みはシンプルだが賢く、新しい。

最大の特徴である転売防止の仕組みについは後述することにして、概要を先に説明しておく。「Ticket Peer to Peer」はイベントのチケットの発行が行えるサービスで、仮想通貨NEMのパブリックブロックチェーンをバックエンドとするSaaS型クラウドサービスとして作られている。イベント会場などでQRコード読み取りによりチケットを検札する仕組みも備えている。

収益モデルは利用料モデルだ。発行するチケット1枚あたり50円をサービス側に支払う。支払い方法はクレジットカードだ。動作するブラウザはChrome、Edge、Operaとのこと。

チケットを発行するには、申し込み手続きなどは特に必要なく、Webサイト上の最小限の操作だけで完結する。サービスへのサインインにはGoogleアカウントを使うため、Googleアカウントの所有者であれば(つまり、多くのインターネットユーザーは)最小限のクリック数で使い始めることができる。イベント主催者のWebサイトにコードを埋め込む形で利用する。Webサイトへの埋め込み方のドキュメントも公開している。

Ticket Peer to Peerは、この2018年10月21日開催のイベント「BlockChainJam2018」の受付ページですでに使われている。LCNEMの木村優氏(代表取締役兼CTO)は「誰でもオープンに使ってもらいたい」と話す。

ユーザーの導線という意味では、イベント主催者のWebサイト内で申し込みを完結でき、ページ遷移が発生しない点もメリットだ。

改ざんできないブロックチェーンの特徴を転売防止に応用

今回のサービスTicket Peer to Peerの最大の特徴は、NEMのパブリックブロックチェーンを応用した転売防止の仕組みだ。以下に説明する。

まず、ブロックチェーン上の「アドレス」がそれぞれ1枚のチケットの役割を果たす。発行するチケットごとにユニークなアドレスを発行する形となる。

ブロックチェーンの機能により、各アドレスごとにブロックチェーン上のトランザクション(送金処理に相当する)を受け取っているか否かが分かる。受け取っていないチケットは「有効」、受け取ったチケットは「無効」とする。例えば、イベント会場でQRコード読み取りによりチケットを検札すると、その時点でチケットのアドレスにトランザクションが送られて「無効」になる。

同様に、もしチケットが転売されているのを誰かが発見した場合、NEMブロックチェーン上でトランザクションをそのチケットのアドレスに送信することにより(これは、NEMウォレットがあれば誰でも行える操作である)、チケットを無効化できる。つまり、チケット転売の通報と無効化を同時に行える。さらに、「誰が通報して無効化したのか」もブロックチェーン上に改ざんできない形で、つまり異論が出ない形で記録される。

ここで、転売の第一発見者に対してブロックチェーン上で報酬を送金することにより、通報のインセンティブとすることができる。それぞれのチケットの最初の通報者に限り報酬を送ることができるので、通報に関する不正や異議は発生しにくい仕組みとなっている。なお、通報者に対してどのような報酬をいくら送るのかはサービスの範囲外で、イベント主催者側の裁量となる。

通報のインセンティブとして送金できる報酬の形態は仮想通貨NEMのモザイク(トークン)ということになる。例えば、仮想通貨NEMのトークンXEM(ゼム)を送ることもできるし、日本円と連動する「LCNEMステーブルコイン」(内容は後述する)を送ることもできる。

LCNMEは、京都大学経済学部の現役の学生である木村優氏が2018年3月に設立したスタートアップ企業。今までに、Googleアカウントを持っていればきわめて簡単に使い始めることができる仮想通貨NEMのウォレットアプリ「LCNEM Wallet」や、日本円や米ドルなどと価格が連動しNEMウォレットで送受金できる「LCNEMステーブルコイン」とユニークなプロダクトを作ってきた。

LCNEMステーブルコインの法的な扱いだが、金融庁への法令適用事前確認手続き(ノーアクションレター)により、パブリックブロックチェーンを使ってはいるが法的には仮想通貨ではなく「前払式支払手段」であることが確定している。つまり、今や取得が非常に困難となった仮想通貨交換業のライセンスなしに発行することができるわけだ。

LCNEMは政治メディア×トークンエコノミーを目指すPoliPoliとも業務提携し、技術面での支援を行っている。PoliPoliも、やはり現役の慶應義塾大学の学生が起業したスタートアップである。

現役学生が作ったLCNEMのサービス群は、現段階ではUIがやや無愛想に見えるものの、発想のシンプルさ、賢さ、新しさが目を引く。ブロックチェーンの「ネイティブ世代」が作ったサービスの今後に期待したい。