インターネットの基盤を築いた先人達のように、ブロックチェーンの土台を作るーーchaintopeが1.1億円を調達

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chaintopeのメンバー。前列右から3人目が代表取締役CEOの正田英樹氏

「インターネットだってかつてはめちゃくちゃ遅かったし、拡張性もなくて使い物になるかわからなかった」ーーブロックチェーンの基盤技術を研究開発するchaintope代表取締役CEOの正田英樹氏はそう語る。

メディアなどで取り上げられるブロックチェーン関連のスタートアップは、その技術を何らかの領域に用いた“アプリケーション”を作っているところが多いが、chaintopeが開発しているのはその前提となるコアな技術。特にパブリックなブロックチェーンにおける“プロトコル”レイヤーの技術開発に取り組んでいる。

目指しているのは、ブロックチェーンを活用した自律分散型のビジネスモデルを作りやすくするための基盤を作ること。いわば「ブロックチェーンのインフラ」を作ることと言えるかもしれない。

今でこそ当たり前の存在になっているインターネットも、90年代から業界の先人達が研究開発を重ね、整えてきた基盤があるからこそ成り立っている。正田氏いわく、それを支えてきたのは「大学のネットワークや研究者のネットワーク」の存在。chaintopeがブロックチェーンの領域でやろうとしていることも、まさにこれと同じようなことだ。

同社は10月5日、ベンチャーキャピタルのANRIからシリーズAラウンドで約1.1億円を調達したことを明らかにした。chaintopeではブロックチェーン領域で大学のネットワークと技術者のコミュニティを広げていきながら、ブロックチェーンの基盤技術の開発を進め、その技術を応用したビジネスモデルの実証実験を国内外で加速させる計画だ。

今の技術では限られたモデルチェンジしかできない

冒頭から長々と説明してしまったけれど、改めてchaintopeが取り組んでいることを紹介したい。

まず前提にあるのが、今現在のパブリックブロックチェーンの技術では実際の社会システムに組み込む際の課題が多く、限られたモデルチェンジしかできないということだ。

「今はパブリックなチェーンをいろいろな業界に当てはめていこうと思うと、スケーラビリティやプライバシー、セキュリティなど技術サイドがネックになってしまう。まずはそこを解決するための技術が必要だ」(正田氏)

たとえば一定時間内で処理できるトランザクションの量が限られるという「スケーラビリティ」の問題に対しては、ブロックチェーンの“セカンドレイヤー”における新しい技術(ビットコインのLightning NetworkやイーサリアムのPlasmaなど、オフチェーンやサイドチェーンといった技術)の開発・検証が活発になってきている。

同社ではこのような暗号通貨やブロックチェーン領域の研究に数年前から着手。現在はブロックチェーン関連の2つのコア技術の開発に力を入れている。

1つ目が新たなコンセプトのブロックチェーン。これはパブリックな環境下で不特定多数の参加者が想定されるが、既存の技術では実際のビジネスに組み込むのは難しいというニーズに応えるためのものになる。想定しているのは、不動産の資産管理やトレーサビリティ、P2Pの電力売買、投票、国際送金といったシーンだ。

そして2つ目がバブリックチェーンをベースにしたセカンドレイヤーの技術。こちらは非中央集権的でパブリックな使い方をしつつも、一定のコミュニティ内で利用し、取引の高速化や手数料低減のニーズが強い場面で活躍する。地域通貨やP2Pのマイクロペイメント、それを用いた関連サービスなどでの利用を想定しているそうだ。

国境を超えて大学や技術者のネットワークを広げる

これらの技術をベースに各業界の企業や自治体と実証実験に取り組み、サービス化に向けたシステム開発を行うというのがその次のステップ。これまでも投票システムや資金貸借市場での応用(東京短資)、デジタル通貨(近鉄ハルカスコイン)や不動産連携コイン(シノケンコイン)、働き方改革(サーキュレーション)や地方創生など、さまざまなジャンルで実証実験を重ねてきた。

特に今進めているのが、各国の有力な大学との連携だ。つい先日も取締役CTOの安⼟茂亨氏がインド工科大学ハイデラバード校にてブロックチェーンの特別講座を実施。これに限らず大学とタッグを組んでアカデミックサイドから研究開発に取り組み、プロトタイプのようなものを作る。

並行してハッカソンなども積極的に行い、国境を超えて技術者のネットワークを広げていく構想だ。アーリーステージで乗ってくれるような企業も巻き込みながら、モデル化を目指していくという。

「インターネットでもアカデミックな領域から新しい技術が生まれてきた。ブロックチェーンの場合は大学のネットワークと技術者コミュニティが重要な役割を担うので、ここを盛り上げながら世界的なネットワークを作っていきたい」(正田氏)

最初にモデルを実装する国についても日本に限定しない。むしろまだ基本的なインフラも十分に整っていないようなASEANの国で実証実験を進め、それを軸に日本に逆輸入するような計画もあるようだ。実際、現時点ではまだ公開できないそうだが、海外では実証実験がかなり進んでいる領域もあるという。

取締役CTOの安⼟茂亨氏がインド工科大学で講義をした際の様子

今のインターネットも先人たちが築いた基盤の上で成り立っている

chaintopeは普段TechCrunchで紹介しているスタートアップとは若干毛色が異なる企業かもしれない。もともと母体となっているのは正田氏が1999年に福岡の飯塚市で創業したハウインターナショナル(創業時の社名はHeart at Work)。2015年頃からブロックチェーンの研究開発に取り組み始め、同領域に特化するべく立ち上げたのがchaintopeだ。

「昔から福岡県内でハッカソンや技術者向けのコミュニティイベントをやっていて、仲間内で『ブロックチェーンのテクノロジーはこれまで実現できなかったようなシステムを構築できるポテンシャルがあるのではないか』と話したのがきっかけで研究開発を始めた」(正田氏)

最初のプロジェクトは近畿大学の山崎重一郎氏らとともに開発したP2P型の投票システム。門司港で開催された唐揚げ選手権やラーメン選手権の投票にブロックチェーン技術を用いたところ、フクオカRuby大賞で優秀賞を受賞。そこから問い合わせなどもあり、分野を広げて勉強会や実証実験を実施してきた。

chaintopeには「ブロックチェーン・プログラミング 仮想通貨入門」の著者としても知られる開発者の安⼟氏のほか、CER(Chief Ethereum Researcher)の中城元臣氏など、暗号通貨やブロックチェーン領域に詳しい技術者が集まっている。その多くは昔から同じコミュニティ内で交流があったメンバー達だ。

「今は当たり前のようにスマホアプリが普及しているが、それも1995年頃から先人達が土台を作ってくれてきたからこそ。今度は自分たちがブロックチェーンにおいて、分散型のアプリケーションを作りやすくするための土台を作りたい。アプリケーションレイヤーではなくプロトコルレイヤーから始めることに対して、上の世代の人たちも共感して応援してくれていて、エンジニア達も本気で燃えている」(正田氏)

この1年で業界は大きく変わるからこそ、資金調達で開発加速へ

正田氏自身も、chaintopeやブロックチェーンに対しては強い思い入れがある。インターネットが日本で立ち上がり始めた約20年前頃、正田氏は24歳で飯塚にて起業した。

「学生の時にMosaic(モザイク)が出てきたけれど、当時はすごく遅くて。今みたいに手元でどんどん動画を見る時代が来るなんてイメージできなかった。『これからインターネットがないと生活が困るようになる』なんて言う人もいたけど、ほんとかなと」(正田氏)

当時は渋谷などで同世代の若手起業家が活躍するのを新聞などで目にしていたそう。その後Javaで着うたや着メロサイトのバックボーンとなる技術を作るなど躍進したが、技術的には評価されたものの表にでることはなく「ある種“第一次のインターネット革命”には出遅れてしまった形になった」(正田氏)と言う。

それから約20年、昔からよく知った仲間を中心に技術者が集まり、インターネット以来の発明とも言われるブロックチェーンの領域においては「今の所、かなり先頭の方で走れていると思っている」と自信を持っている。

「昔であれば最初にシリコンバレーで新しい技術が生まれて、それが時間をおいて東京、地方へと広がっていたイメージだった。でもブロックチェーンは世界同時。世界中がヨーイドンで課題解決に向けて新しい技術を作っている。おそらく3年後には状況も大きく変わっているはずで、特にこの1年が重要。だからこそ調達した資金も基にコア技術の開発を加速させるとともに、アカデミアや技術者との連携を加速させ、世界的なネットワークを構築しながら次のモデルを作っていきたい」(正田氏)