“ディープラーニングで解決できない課題”に独自AIで挑むハカルスが1億円を調達

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“スパースモデリング”という技術を機械学習に応用し、独自のAIソリューションを開発するハカルス。同社は10月5日、イノベーション・エンジン、加賀電子、PALTEKを引受先とした第三者割当増資により総額1億円を調達したことを明らかにした。

ハカルス代表取締役CEOの藤原健真氏によると今回の資金調達は7月に実施した1.7億円の調達に続くもので、トータルで総額2.7億円のシリーズAラウンドが完了。それ以前のラウンドも含めた累計調達額は3.7億円になる。

7月の調達では大原薬品、エッセンシャルファーマ、メディフューチャーなど医療系の企業から出資を受け、医療分野において事業を強化する旨を発表していたハカルス。今回は同社にとってもうひとつの軸となる、産業分野での事業展開を見据えたものだ。

具体的にはFPGAの受託設計・開発支援を行う半導体商社のPALTEKなどとタッグを組みながら、ハカルスのAIエンジンを搭載したFPGA製品とボックスコンピュータの開発に取り組む計画。オフラインのエッジ端末上で動くAIを作ることに資金を投じていくという。

医療領域と産業領域に特化したAIソリューションで事業拡大

これまでも何度か紹介している通り、ハカルスの技術的な特徴はディープラーニングを一切使っていない点にある。少量のデータからでも特徴を抽出できるスパースモデリング技術を機械学習に応用することで、「ディープラーニングでは解決できないような課題」に対してAIソリューションを提供しようというのが同社のビジネスだ。

もともとこの技術を用いた健康管理アプリを開発していたこともあり、まずは対象領域を広げる形で医療・ヘルスケア領域でサービスをスタート。同様のニーズがあったため、コアとなる仕組みを産業領域にも広げてきた。

藤原氏によると、ディープラーニングを軸にしたソリューションを現場に導入する際にネックとなるのが、「多くのデータ量が必要になること」や「AIの意思決定プロセスを説明できないこと」なのだという。

「(ディープラーニングは)大量のデータがそもそも手に入らないためにつまづくということが多い。またAIのロジックが完全にブラックボックスとなっていて、なぜAIがそのような結果を出したのかが設計した本人でさえもわからない場合もある。医療分野なら『なぜ目の前の患者を手術するべきか』の理由が説明できないと現場での導入は難しい。そこはある意味、精度以上に重要視されている部分でもある」(藤原氏)

たとえば医療の場合、患者数が多い三大疾病などの病気であれば多くのデータが集まるだろう。一方で年間の患者数が100人や200人といったように、そもそも発症数が少ない希少疾患だとデータが少なくディープラーニングでやるのは難易度があがる。結果的には「そういった病気に対するAIを作ろうと思うと別の技術が必要になる」(藤原氏)そうだ。

産業領域も同様で、現代は少量多品種の時代のため一つひとつの製品に関するデータが限られ、大量のデータを集めるのが難しくなっているという。また品質管理が厳しい自動車や航空機に搭載する部品工場などでは、不良品の検知にAIを使うにしても「なぜOKか、なぜNGかの説明」が求められる。

「産業分野のお客さんに関しては、約半数が『もともとディープラーニングを活用したシステムを導入していたものの、データ不足の壁に直面して一向にAIの精度があがらない』という悩みを抱えていた」(藤原氏)

ハカルスではこのような医療領域、産業領域の課題を抱える企業に対して、同社のソリューションを強提供していく方針。また独自のAIエンジンを搭載した半導体を開発し、産業分野で展開していく計画だ。今回調達した資金もデータサイエンティストや組み込み系のエンジニアを始めとした開発人材の強化などに用いる。

「(AIが)クラウドを使わないエッジ端末の中でどういうことができるかはまだ未開の領域。今回はオフラインで、エッジ端末上で動くAIを開発するところに資金を使っていく。具体的には一切インターネットにつながずに学習と推論をできるAIを作っている」(藤原氏)

推論部分だけでなく学習部分まで含めてエッジ側でできるようにすることで、AIがその場でエッジ端末の設置された環境を学習し、「AI自身が環境に合わせてアジャストして、最適化を行う」ソリューションの構築が可能になる。このAIをいろいろな分野で使ってもらうことを目指していくという。

エッジ端末上で動作している人物検知のデモの様子