ファッション企業のAI活用を一気通貫で支援するLiaroが6000万円を調達

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アパレル業界向けにAIソリューションを提供するLiaro(リアロ)。同社は11月2日、ディープコアとDEEP30(東​京大学松尾豊研究室からスピンアウトして設立されたVC)より総額6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金を活用してエンジニアを中心とする人材採用やR&Dを進める計画。より多くのアパレル企業へのサービス展開を目指す。

Liaroは学生時代から機械学習分野の研究に取り組んできた代表取締役CEOの花田賢人氏を中心に、AIエンジニアが集まるチームだ。現在はファッションテックの領域に注力して、アパレル業界向けの事業を展開している。

最近は必要とされるソリューションをSaaSのようにパッケージ化してまるっと提供するスタートアップも増えているけれど、今のところLiaroは「受託に近い」スタイル。画像認識技術を用いた商品の自動タグ付けシステムや類似商品のレコメンドエンジン、商品の紹介テキストを自動生成するシステムなど、アパレルECを中心に各社の課題に合わせて必要な機能を提供する。

たとえば商品のタグ付けに関して課題を感じているECは多い。「ユーザー側にはタグを使って商品を細かく絞り込んで検索したいニーズがあるが、それに対応するには相応のマンパワーがかかる上、ケアレスミスの問題もある」(花田氏)からだ。

リソースをかけてタグを付けたはいいものの、それが不正確だと使いづらくなってしまいかねない。Liaroの技術に興味を示す企業としては、人的なコストの削減や業務効率化はもちろん、タグのミスをなくしたいというニーズがあるという。

そもそも花田氏が事業ドメインをファッション業界でのAIテクノロジー活用に決めた背景には、アパレル業界の大きな課題でもある「在庫問題」があった。

国内だけでも9兆円もあるとされるこの市場では、約50%の商品が売れ残る前提で販売されているため、在庫だけで数兆円規模に及ぶ。花田氏が原因のひとつにあげるのが「消費者に届くまでの商流が長い」こと。作った商品が消費者にどのように消費されているのか、細かいデータが上流工程の人に伝わっていないためにテクノロジーを活かしきれていないという考えだ。

近年アパレル業界ではこの課題を解決すべく、AIを用いた取り組みが増えてきている。ただしAIを有効活用するためには、リアルタイムに大量のデータを使っていけるデータ基盤が整備されていることが前提。ここがIT企業以外にとってはかなり大きなハードルになるという。

「アルゴリズムももちろん重要ではあるが、それ以上にポイントになるのが土台となるデータ基盤を整備できるかどうか。ファッション企業がAIを活用できるように、アルゴリズムの実装からデータ基盤の開発までを一気通貫で支援していくというのが今取り組んでいる事業だ」(花田氏)

Liaroでもこれまで約1年半に渡るR&Dを通して、この“データの整備”に取り組んできた。具体的には1000万枚以上の画像を集めて、それらにきれいなタグデータを付与する作業に時間を費やしたという。

「クローリングするだけだとどうしても教師データがなかったり、あっても雑だったりする。Liaroではタグ付のためのシステムを作り、『どういう所でモデルが作りにくくなるのか』『ファッションアイテムではどのようなタグの付け方をするのが良いか』を試行錯誤しながら、現場で使えるデータを整えてきた。きれいなデータを大量に持っていることが、自分たちの特徴だと考えている」(花田氏)

写真中央がLiaro代表取締役CEOの花田賢人氏

この辺りは花田氏自身のバックグラウンドも影響しているようだ。冒頭でも触れた通り学生時代から機械学習分野の研究に取り組みながら、チームラボのレコメンドチームでエンジニアのアルバイトも経験。大規模なインフラの開発にも携わった。起業した当初はコンシューマー向けのサービスを作っていたので、当時の経験も活きているという。

今後は調達した資金も活用してエンジニアの採用やR&Dに取り組むと共に、まずはアパレルEC向けのAIソリューション展開を加速させながら成功事例を作っていく方針。ゆくゆくはAIを活用した商品の需給予測やMDのアシストにも取り組む計画だ。

「『そもそもどこで何がどれくらい売れているのか』という傾向を細かく把握できるデータ基盤を作ることで、販売機会の損失を減らしたり、配置を最適化できるような環境を提供することから始める。僕たちとしては基本的に意思決定をするのは人間だと考えているので、データを十分に活用しきれていない部分にAIを挟みこむことによって、より科学的な意思決定ができるように支援していきたい」(花田氏)

Liaroは2014年の設立。ドリコムの学生向けインキュベーションプログラムがきっかけで生まれたスタートアップだ。当初はC向けのサービスを展開するも、途中でB向けに方向転換。多くのデータが眠り、インパクトも大きいファッション業界での事業展開を決め、現在に至る。

同社ではこれまでにもイーストベンチャーズやスカイランドベンチャーズから資金調達をしている。