Harbourfront Capital
Drivezy

AnyPayの新会社、110億円の投資対象はインドの“自動車”ーーシェアされるあらゆるモノに投資

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わりかんアプリ「paymo」などを提供し、連続起業家・投資家の木村新司氏が会長を務めるAnyPay。同社は11月22日、2017年より開始した投資事業を切り離し、新しく投資会社を設立すると発表した。Habourfront Capital(以下、ハーバーフロント)と名付けられたこの新会社は、ちょっと変わった存在だ。投資対象は、Airbnbなどシェアリングエコノミー関連のスタートアップ。でも、彼らはその企業の株式ではなく、そのサービス上でシェアされる“モノ”に投資をする。

ハーバーフロントにとって初めての投資案件となったのは、インドで“クルマ版Airbnb”を提供するDrivezyだ。同サービスは、ユーザーが自身の保有する車両(クルマやバイク)をプラットフォームに掲載し、他のユーザーに貸し出すことで収益を得ることができるシェアリングエコノミー型のサービスだ。Airbnbは不動産を貸し出せるプラットフォームだが、その代わりにクルマを貸し出すと考えれば分かりやすいだろう。

Drivezyの特徴は、貸し出す車両にGPSなどを搭載した専用モジュール積むことで貸し出し中のクルマのデータを細かく取得しているという点。車両保有率が約7%と低いインドではクルマは高価な資産であり、ゆえに盗難などのリスクが付きまとう。GPSなどでそのようなリスクを軽減するとともに、ガソリンの残量など車両状態のデータも取得している。そのため、ユーザーはアプリを開くだけでどこにどんな状態のクルマがあり、それをいくらで借りれるのかが一目瞭然で分かるというわけだ。

このような特徴からDrivezyは順調に成長を続けている。2015年の創業以来、サービス利用可能都市はインド国内11箇所に拡大。累計で30万人のユーザーが同サービスを利用した。投資家からの注目も熱い。Drivezyは2018年8月にシリーズBで1430万ドルを調達。この調達ラウンドをリードしたのは韓国の自動車メーカーHyundaiだ。そのほか、Y CombinatorやGoogleなどからも資金を調達。AnyPay会長の木村新司氏の投資会社Das Capitalもシードラウンドからすべてのラウンドに参加している。

しかし一方で、プラットフォームに掲載されている車両台数はいまだ1000台程度(米国TechCrunch取材時)と、十分な水準ではないのも確かだ。車両を供給するのは一部の富裕層や元Uberドライバーなどに限られ、供給が不足している状態だという。Drivezyもそれを把握しており、Hyundaiなどと手を組むことで車両数を今後約1年間で1万〜1万2000台までに増やす計画を明かしていた。そこで登場するのが、今回の主役であるハーバーフロントというわけだ。

シェアされるあらゆるものに投資

ハーバーフロントはDrivezyに供給する車両それ自体を「投資性資産」とみなし、今後3年間で110億円を投入して車両自体を購入。それをDrivezyのプラットフォーム上に掲載する。通常のフローと同じく、Drivezyユーザーがその車両をレンタルすればハーバーフロントに収益が入る。ハーバーフロントはTechCrunch Japanの取材に対し、この投資によってどれほどの収益率を見込んでいるのかは明かさなかったが、「新しいサービスであること、インドというカントリーリスクがあることなどを考えれば、既存の国内不動産ファンドが投資可否の判断をするIRRよりも高い水準であることは間違いない」(ハーバーフロント代表の中川渉氏)と話す。

ハーバーフロントを率いる中川氏は、ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門でM&A業務や資金調達業務などに携わり、不動産のシェアリングサービスなどを手がけるSQUEEZEの創業メンバーとして取締役COOを勤めたあと、AnyPayの投資部門に転籍した。そして今回、そのAnyPayの投資部門を丸ごと新会社として切り出す形でハーバーフロントが生まれた。

ハーバフロントの投資対象は技術的な強みをもつシェアリングエコノミー関連企業だということだが、今後もエクイティを通した出資は行なわず、シェアされるアセットそのものへの投資に特化していくという。これは個人的に、シェアリングエコノミーの新時代が始まったと感じる話だった。

シェアリングエコノミーはそのサービスの性質上、世界中のすべてのものを投資性資産に変える力をもつ。シェアリングエコノミー型サービスの誕生により、時計やパソコン、机、服、クルマなどの有形資産だけでなく、時間やスキルなど無形のものまでありとあらゆるものがシェア可能になった。そして、それを他人にシェアして収益を得られるのであれば、それは立派な「投資対象」となる。

これまで不動産ファンドなどが所有する物件をAirbnbなどのプラットフォームに載せて収益化するという事例があったが、僕が知る限り、あらゆるシェアリングエコノミー型サービスを横断的に投資対象とする「シェアアセット特化型ファンド」はハーバーフロントが初めてだ。彼らのような投資企業が生まれたのも、それだけシェアリングエコノミーが成熟し、人々の生活のなかに「シェアする」という概念が根付いた証拠だと言える。

シェアリングエコノミー型サービスは、ユーザーと並行して、シェアされる資産を早急に集める必要がある。登録したはいいが、利用できるケースが限られていればユーザーから見放されてしまう。「ユーザー」と「シェアアセットの供給者」は、サービスにとって欠かせない両輪なのだ。シェアリングエコノミーの世界市場規模は2025年までに約41兆円にまで膨らむという試算もあり、今後もこの分野へ大量の投資マネーが流れ込む。しかし、従来のエクイティ投資に加え、ハーバーフロントのように、さまざまなプラットフォームにアセットを直接供給するというプレイヤーが増えれば、早期に持続可能となるプラットフォームも増える。そうなれば、シェアリングエコノミー型サービスの数が増加し、シェアという概念がさらに根付くという循環が生まれるのだろう。