遠隔地のロボットを自分の“分身”にできるTelexistenceが十数億円を調達——エアバスやKDDI系のファンドから

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遠隔地にいるロボットをまるで自分の分身のようにコントロールする技術によって、人間を時空の制約から開放する——。

いきなり何を言っているのかと思われるかもしれないけれど、これは1980年に東京大学の舘暲(たちすすむ)名誉教授が提唱し、それから長年に渡って研究され続けてきた「テレイグジスタンス(遠隔存在)」と呼ばれる概念だ。

今回紹介するのは40年近くも前に生まれたこの技術の社会実装を進めている日本発のスタートアップ。Telexistence(テレイグジスタンス)というストレートな社名が付けられたそのチームは11月28日、Airbus Venturesらを引受先とした第三者割当増資と三菱UFJ銀行からの融資による資金調達を実施したことを明らかにした。

シリーズAとなる今回のラウンドにはAirbus Venturesに加えてKDDI Open Innovation Fund、東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)、ディープコア、モノフル、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、JTB、前田建設工業、みずほキャピタルが参加。具体的な調達金額は非公開ながら、十数億円規模になるという。

視覚や聴覚だけでなく“触覚”までも再現

Telexistenceは2017年1月の設立。会長を務める舘教授を始め、三菱商事出身でジオデシック・キャピタルに在籍していた経験もある代表取締役CEOの富岡仁氏、舘教授の元でコアとなる技術を研究していた代表取締役CTOのチャリスフェルナンド氏、以前FOVEで技術担当を担っていたCPOの佐野元紀氏らが共同で創業した。

同社が開発するプロダクトのベースになっているのが、冒頭でも紹介したテレイグジスタンス技術。遠隔地にあるロボットのセンサー情報をオペレーター(ユーザー)が受け取り、ロボットを自分の分身のように操作できるため、その場所にいるかのような臨場感を味わえるのが特徴だ。

この技術を実際にプロダクトに落とし込んだのが「MODEL H」というロボット。5月には量産型のプロトタイプが発表されている。

MODEL Hの世界観は動画を見ていただくとイメージしやすいけれど、オペレーターはVRゴーグルや指の動きをセンシングするグローブなどを装着。ゴーグル越しに遠隔にいるロボットが見ている景色を見たり、ロボットが触れたものを実際に感じたりすることができる。

振動、圧力、温度という3つのデータを取得することで、視覚や聴覚だけでなく“触覚”までも再現してしまえるのがおもしろいポイントだ。

Telexistenceでは2017年5月にKDDI Open Innovation Fund、グローバルブレイン 、JSTからシードラウンドの資金調達を実施。富岡氏によるとその資金をもとにプロトタイプの開発を進めつつ、さまざまな企業へのヒアリングを通じてプロダクトがフィットする領域(PMF)を探ってきたという。

「技術ドリブンで始まっているからこそ、どの領域に合わせてプロダクトを展開するかが非常に重要。実際に102社と話をしてきた中で、最初は主に2つの領域に絞って重点的に開発を進めることに決めた。今回調達した資金はその取り組みを加速させるために、基盤となるハードとソフト、通信、クラウド面などの開発に用いる」(富岡氏)

前列中央がTelexistence代表取締役の2人。左がCEOの富岡仁氏、右がCTOのチャリスフェルナンド氏

「宇宙」と「肉体労働の自動化」を軸に事業を加速

その2つの領域というのがざっくり言うと「遠隔制御の世界」と「オートメーションの世界」だ。

遠隔制御についてはまさに動画にもあったような“宇宙領域”を中心に、ロボットを通じて離れた場所から旅行を楽しんだり、働いてしまおうというもの。具体的に言えば地球にいながら低コストで宇宙旅行を楽しむ、もしくは宇宙でやっていたような労働を地球にいながら実行してしまう。そんな構想になる。

Telexistenceは8月にKDDIやJTBと共同で「MODEL H」を活用して遠隔旅行体験イベントを開催した。これは東京の竹芝桟橋にいながら小笠原諸島の父島を観光できるというものだけれど、この体験を宇宙にまで広げる考えだ。

富岡氏の話では「ロボットと人件費の双方が発生するため、事業として成り立つものが限られる」そう。ものすごく距離のある場所で莫大な移動コストがかかる、そしてその先での労働コスト(時給)が高い分野だと事業化がしやすく、その典型例が宇宙なのだという。

もうひとつのオートメーションに関しては、ロボットを通じて人間の肉体労働を自動化する取り組みだ。特に同社が目指すのが小売業における陳列業務や物流倉庫での業務など「不定形な業務」を自動化すること。

ロボットによるオートメーションと言えば産業用ロボットなどすでに世に出ているものもあるが、既存のものとは異なるテレイグジスタンスを用いたアプローチでこの領域にチャレンジしていくという。

なお富岡氏によると現段階ではオープンにできないものの、すでに具体的な取り組みも進行しているそう。この点についてはまた詳細が明らかになった際に紹介したい。