スタートアップと大企業の協業増やし市場活性化へ、「FUNDBOARD」運営が日経と資本業務提携

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写真左からケップル代表取締役社長の神先孝裕氏、日本経済新聞社常務取締役の渡辺洋之氏(日本経済新聞社提供)

投資家向けに未上場株の管理ツール「FUNDBOARD」を提供するケップルは12月4日、日本経済新聞社と資本業務提携を結んだことを明らかにした。

ケップルでは11月に日経と複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施。今回のラウンドではトータルで2.7億円を調達していて、そのうち2.5億円が日経からの出資となる。ケップルにとっては4月に個人投資家から約3000万円を調達して以来の資金調達だ。

今後両社はFUNDBOARDを軸に、スタートアップ関連分野のサービス開発・運営に力を入れていく計画。具体的にはイベントの開催やFUNDBOARDの機能拡充、コンテンツの制作や配信面などで協業を進める。

一見そこまで関連性がないようにも見えるFUNDBOARDと日経はなぜタッグを組むことになったのか。今回はケップル代表取締役社長の神先孝裕氏と日本経済新聞社常務取締役の渡辺洋之氏に、協業の背景から今後の展望について話を聞いた。

スタートアップと大企業のコラボ促進で市場活性化目指す

最初にケップルのプロダクトについて簡単にだけ紹介しておこう。同社が提供するFUNDBOARDはVCや事業会社の担当者が日々行なっている、投資先の情報管理やそれに関連するコミュニケーションを円滑にするためのサービスだ(機能面などの特徴は前回の記事が詳しい)。

エクセルやドロップボックスなど複数のツールやファイルに散らばっていた投資先に関する情報を、一元管理できることが特徴。面談の内容やレポートは全て投資先ごとに紐づいて管理されるので、毎回時間をかけてファイルを探す手間なくすぐにアクセスできる。

ケップル創業者の神先氏はあずさ監査法人を経て、自身で会計事務所を設立。スタートアップの経理業務やバックオフィスの支援を手がける中で感じた「スタートアップと投資家のコミュニケーションに関する課題」を解決するべく開発したのが、FUNDBOARDというわけだ。

そんなFUNDBOARDを運営するケップルと日経がコラボした先には一体何があるのか。端的に言ってしまえば、両社が協業の先に目指すものは「スタートアップ市場の活性化と拡大」だと言えるだろう。

ケップル代表の神先氏はそのために「スタートアップと大企業の関係性を近づけること」が重要であり、それが今回日経とタッグを組むに至った理由だという。

「今後市場を広げていく上では、スタートアップに興味がある事業会社やそこで働く人たちとスタートアップの距離をもっと近づける必要がある。今まではVCが間に入って双方の関係性を支えてきた側面があるが、直接取引をしたり、コミュニケーションを取ったりできるようにしたい。そのためにはお互いの文化を理解する機会と、双方を交わらせていく役割が不可欠だ」(神先氏)

近年は大企業がオープンイノベーションの文脈でスタートアップとタッグを組んだり、CVCを通じて出資をしたり、もしくはスタートアップを買収したりと言ったニュースも頻繁に目にするようになった。神先氏によるとFUNDBOARDも大企業からの引合いが増えているそうだ。

そのような流れを加速させていくためにも、大企業とスタートアップを繋ぐ“場”が必要。「日本で最大規模の経済メディアであり、大企業とのネットワークも強く社会的な信頼性もある」(神先氏)日経は、パートナーとしてうってつけの存在だった。

日経がFUNDBOARDとタッグを組んだ理由

一方の日経にも、新しい成長を生み出すスタートアップとの関係性をより強固にしたいという思いがあったという。

「経団連銘柄ばかりを扱っているようなイメージがあるかもしれないが、日経新聞としてはスタートアップ関連の報道や事業面での連携にも力を入れていく。ただ現状ではスタートアップやVCのエコシステムまでは距離が遠く、その中にもっと踏み込んでいきたいと考えていた」(渡辺氏)

現在日経でデジタル事業をリードする渡辺氏は以前シリコンバレー特派員を務めていた経験もある人物。近年スタートアップ業界に若くて優秀な人材がどんどん流れ込む様子を受けて「今度はブームではなく、新しい流れ。だからこそ事業サイドとしてもこの中に入り込まないといけないという“危機感”もある」と話す。

同社にとってスタートアップやVCとの繋がりがあるケップルと資本業務提携を結ぶことは、そのとっかかりとなるだろう。

少し余談になるけれど、日経とスタートアップの取り組みと言えば、8月に発表されたコンテンツプラットフォーム「note」を運営するピースオブケイクとの資本業務提携が記憶に新しい。noteの場合は日経とのシナジーもイメージしやすいけれど、未上場株の管理ツールであるFUNDBOARDと日経がタッグを組むと聞いて、個人的には少し意外だった。

渡辺氏にそんなことを話してみると、C(コンシューマー)向けかB(ビジネス)向けかの違いはあれど「根本にやりたいこと自体はどちらも近しい」という答えが返ってきた。

「noteとの協業は個人がメディア化して、世に出ていく動きを支援したいという思いがあった。イメージとしてはインディーズのヒーローが出てきた時に、メジャーレコードへ後押しするようなものだ。今回もそれと近しく、良いものを早く見つけてきて(次のステージへと)押し上げる、触媒のような存在を目指したい。それがデジタル時代のメディアの役割だと考えている」(渡辺氏)

実力やポテンシャルがあるものの、まだ世に広まっていない人や企業に対して、より活躍できるような“場”を作り支援する。noteの場合はそれが個人であり、今回の場合はスタートアップ。対象の違いはあるけれど、担いたい役割自体は共通しているようだ。

ファンドの利害関係者の実務を効率化するマネジメントツールへ

そんな両社は今後、具体的にどのようなことに取り組むのか。

最初はスタートアップ関連のイベント開催を通じてコミュニティを活性化することから始め、ゆくゆくはFUNDBOARDのサービス拡充やコンテンツの制作・配信面での協業も検討していきたいという。

FUNDBOARD単体では年明けを目処にコンバーティブル・ノートやコンバーティブル・エクイティといった近年増加している資金調達手段にも対応していく予定。19年春にはスタートアップ版もローンチする計画だ。

もともとはスタートアップと投資家双方が抱える情報共有や情報管理、コミュニケーションに関する「小さな課題を解決するためのもの」としてFUNDBOARDの構想が生まれた。

そこから約2年、実際にユーザーに使ってもらう中で描く未来が大きくなり、今は「ファンドの全ての利害関係者の実務を効率化する『ファンドマネジメントツール』」への拡張を目指しているという。

「長期的には日本でスタートアップに入社をしたり、スタートアップと仕事をすることを当たり前にしていきたい。その上でスタートアップの株主管理が簡単になり、投資を受けやすくなり、事業がよりグロースする。ケップルではそのような世界観の実現を目指したい」(神先氏)