CTO of the year 2018にはatama plus川原氏を選出

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11月21日、東京・目黒にあるAWS Loft Tokyoにて、2018年に最も輝いたスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)を決める「CTO of the year 2018」が開催された。CTO of the year 2018は例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に「CTO Night」として開催されてきたイベントだが、今年は場所日程を変えての開催となった。

AWS Loft Tokyoは10月1日にオープンしたばかりのAWS運営のコワーキングスペース。AWSを利用している企業であれば10:00〜18:00の間、誰でも自由に利用できる。AWSの専門スタッフが常住しており、その場でサポートが受けられるのも特徴だ。

CTO of the year 2018は歴代優勝者を含む以下のメンバーで審査され、最終的にatama plusの川原尊徳氏を選出した。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー 取締役上級執行役員/最高技術責任者)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト)
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

■特別審査員
竹内秀行氏(2014年CTO of the year、ユーザベース チーフテクノロジスト、UB Venturesテクノロジーパートナー)
安川健太氏(2015年CTO of the year、ソラコムCTO/Co-founder)
橋立友宏氏(2016年CTO of the year、Repro CTO)
大竹雅登氏(2017年CTO of the year、dely CTO/執行役員)

■atama plus/川原尊徳氏

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Lean AI開発により、3ヶ月でプロダクトマーケットフィット
1年で大手塾の2割に導入するまで至った話

atama plusは2017年4月創業。創業9カ月目で5億円の調達に成功している。事業内容は、AIを活用して中高生の学びを個別にカスタマイズしたタブレットアプリを提供している。このシステムは全国の学習塾や予備校に導入されているとのこと。川原氏は新卒でマイクロソフトに入社して11年勤務したあと、atama plusを共同創業したCTOだ。

学習塾や予備校は、夏期講習でどれだけ人を集められるかが非常に重要で、4月創業の同社は、その年の夏期講習が始まる7月までにアルゴリズムを完成させる必要があったとのこと。そのため、Lean UX/Lean AI開発という手法を採用したそうだ。

そのうえで、アーキテクチャーの開発には、ブラックボックスの少ない「多数の小さなアルゴリズム」を利用することに決定。規模が小さいのでアルゴリズムへの修正が容易なのが特徴だ。アルゴリズムに問題データや正誤情報、所要時間などのデータを入力することで、習熟度の推定や単元間の関連性、学習優先度などを判断して、生徒それぞれが学習すべき教材を判断する。

また「ルールベースアルゴリズムとの共存」も開発の秘訣だったという。多次元のデータを扱えるモデルベースを重視するとルールベースアルゴリズムは排除されがちだが、ルールベースアルゴリズムは変更が容易という利点がある。これら2つのアルゴリズムをいいとこどりにより、ある単元を学習するためにどの単元を次元に理解しているべきかの依存度がわかる「依存関係グラフ」が完成したという。

同社は創業4カ月目から収益化を果たし、10カ月目で2週間講習受講者のセンター試験の得点が50%アップ。そして創業1年を迎えたころには、大手塾の2割にatama plusのシステムが導入されているそうだ。

■FACTBASE/前田 翼氏

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組織の外側にHRアーキテクチャを築く

FACTBASEは仮想通貨投資家向けのサービスを展開している会社。プレゼンでは、社内外のHRアーキテクチャを構築した話が中心となった。

前田氏はFACTBASEのCTOとして「2018年12月31日までに日本一仮説検証の早い開発チームを作る」というミッションをCEOと握って、アプリ開発をスタート。とはいえ、2018年前半は技術スタックのない状態だったという。その後、副業として携わったエンジニアの尽力で5月中旬にクローズド版のリリースに漕ぎ着ける。しかし、この副業エンジニアが二人とも卒業したことで問題が発生。この2人が中心となって開発していたことで、社内にノウハウがたまっていなかったそうだ。

とはいえ、フルタイムの人材を採用するコストや人材を教育する社内リソースがなかったとのこと。そこで考えたのが、社内開発とは直接関係な分野で同じ目標を達成する仲間を集め、勉強会の開催や書籍の出版などを実施。具体的にはReact Native OSSのコミュニティーを立ち上げ、ペアプロについては累計30回を以上を実施したという(React Nativeは、Facebookが開発したJavaScriptのフレームワーク)。

この結果、14人のエンジニアとの関係が深まり、14人の技術メンターがいる状況になった。その後、インターン1名とフルコミットメントするエンジニアが1名参加して開発が急激に加速したそうだ。社内リソースと予算が限られている中、社外のエンジニアとの深い関係構築によって開発の質とスピードがアップしたとのことだった。

■GVA TECH/本田勝寛氏DSC07799

リーガルテックへ凸って見えた楽しい踊り方
GVA TECHは2017年1月に創業、本田氏はGVA TECHにはCEOを除く1人目の社員として2017年9月に参加。同社はクラウドとAIを活用した契約リスク判定サービス「AI-CONレビュー」を提供している。

本田氏は入社後まず、内製化によってプロダクト化を進めたとのこと。入社前、AI-CONレビューなどはオフショア開発、つまり外注で開発していたそうだ。しかし、数多くの人が開発に参加していたこともあり、ファイルの差分やバグも多くコントロールも難しかったことから関係を断ち切って完全内製化の道を選んだという。

内製化にあたって、セキュリティ、スピード、イノベーション、面を取りに行く選択、という4つの柱で開発を進めたそうだ。ちなみにセキュリティについては、AWS Well-Architectedフレームワークを活用。開発スピードについては、さまざまな手法やツールを積極的に取り入れたという。

そのほか、コミュニティへの情報提供も積極的に進めたそうだ。そのうえで本田氏はチームビルディングに徹し、別にCPOに権限を移譲して開発スピードをアップさせたとのこと。本田氏はCTOとして、「TeamUp」ツールを利用して1 on 1時の内容をログ化して成長の促進を図ったり、「wevox」で開発組織力のモニタリングを実施したりしたという。

■カケハシ/海老原智氏

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2mmぐらい強くて? ニューゲームのCTOとしての取り組み

カケハシは2016年3月に設立、海老原氏はその2カ月後に入社したそうだ。同社は全国に6万店以上ある調剤薬局のSaaSを開発している会社。

調剤薬局が処理する処方箋枚数は年間8億枚あり、調剤薬局は患者と累計8億回も薬の受け渡しをしていることになる。同社は、この受け渡しのタイミングで「患者が健康になっていくための手助けができるのではないか」という想いで創業。現在、患者に対して実施した服薬指導の内容(薬歴)の記録を電子化する「Musubi」を開発・提供している。

海老原自身は同社で取締役CTOを務めているが、実際にはCPO/VPoE的な役割を担っているとのこと。CTOを二度経験していることを生かし、働き方の改善、組織や社内文化への理解度を深めるために尽力しているそうだ。具体的には、アジャイル/アーキテクチャ/DevOps/設置・採用/採用・組織化、という5つのフェースで自分の役割を変えていったそうだ。アジャイルのフェーズでは、開発手法だけでなく組織運営についても議論を重ねて意識を共有したとのこと。設置・採用フェーズでは、一時的にCTOの役割を返上して、調剤薬局へWi-Fi構築を含むPCへの設置などの業務も担当したという。現在は採用・組織化フェーズだが、今後拡大する業務内容を踏まえ、どこかのタイミングで再度アーキテクチャフェーズに戻ることを予定しているとのことだ。

■scouty/伊藤勝梧氏

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スケーラブルな開発組織を目指して~推測より計測~

scoutyに3人目のメンバー、1人目の開発者として入社。2018年7月から取締役CTOに就任。scoutyはエンジニアをヘッドハンティングするサービスで、SNSから公開されている情報をクロールして人材のデータベースを構築。このデータベースを企業の人事部が参照することで、自社に必要な人材にスカウトメールを送れるという仕組みだ。

ちなみにこれまでのデータ分析の結果、転職を希望するエンジニアはその直前にプロフィール写真を変える傾向が強いとのこと。伊藤氏は入社後、クロールの手法などに改良を加えたことで、データベースの登録者数を6万人から約13倍の80万人に増やしたそうだ。

伊藤氏がCTOとして取り組んだのは、開発人員と開発速度が比例する組織。一般的に人が増えると、コミュニケーションや調整タスクが増えるため開発スピードは鈍化するが、同社では7人までに増えた8カ月後の開発スピードは当初の2.1倍、残業時間は一人当たり7.4時間となったそうだ。

この開発チームを実現するために、それぞれの役割分担を明確化し、目的や責務などを明文化。そのうえで、妥協しない採用ポリシーによってチームを強化。具体的には、既存メンバーの平均よりも高い能力、既存メンバーが持っていない知識/経験、カルチャーマッチを重要視、という3つのポリシーを貫いたそうだ。この採用ポリシーを徹底するために、評価ポイントの設定、採点基準の明確化、それを基にした社内エンジニアの平均点の算出などを実施したとのこと。さらにカルチャーマッチをテストするため、採用候補者を社員全員が取り囲んで質問し、あらかじめ用意されたチェック項目を埋めていくという作業も行っているそうだ。

正直、このような仕組みを使うのは「めちゃくちゃ大変」だそうだが、スケーラブルな開発チームを運営していくために今後もやり続けていきたいと話を締めくくった。

■空/田仲紘典氏

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プロダクトから顧客や様々な職種へ

田仲氏は空で、CPO(Cheif Production Officer)として、ビジネス要件と技術要件の両軸を考える、顧客価値を作る仕事を担当している。

ホテル業界の課題として、料金設定の「手間」と「精度」があるとのこと。料金設定に関わるデータを得るには、1日あたり2~3時間の時間が必要で、合計すると月に60時間以上の時間を費やしているという。またノウハウが属人化しており、担当が変わるとやり方が変わるという問題もある。同社は、前者を「ホテル番付」、後者を「Magic Price」というサービスで効率化している。この2つのサービスを顧客が横断的に使うことを考えて、サービス基盤は共通化しているとのこと。

シンプルなUI/UX、統計学を利用したデータ分析手法、問題解決に取り組む体制によって顧客満足度90%を実現しているという。新しいバージョンは週1でリリースしているそうだ。

具体的には、AWSサービスを駆使することで、フロントエンド、バックエンド、インフラを構築。今後はホテルだけでなく、航空券やが外食など他業種にサービスをスケールさせるために、サービスの共通基盤とマイクロサービス化を進めて行くという。

■Voicy/窪田雄司氏

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サービスを最速で伸ばす先回りの技術

Voicyは、手軽に音声を生活のあらゆる場所に届けるサービス。今後は出力先を増やして事業を拡大したいとのこと。窪田氏はCTOの仕事を「未来を予測して事前に準備しよう」というスタンスでの臨んでいるとのこと。

具体的には、CEOは5~10年後の未来を見据えたうえで、経営・事業計画の直近の1年をどうするかという計画を立てる。一方CTOは、CEOを考える1年後よりも少し先の未来を見据えて行動するのが大事とのこと。このタイミングに何が起こって、何が必要なのかを事前に準備、把握しておくべきだとしている。

例えば、突然のアクセス増加に対してもリリース前から高負荷に堪えうるインフラ構成を用意。スマートスピーカーへのスキル提供やAPI連携についても事前に準備するなど、想定される出来事に対処していったという。

窪田氏は、事前準備した内容の90%は使われないため、エクストリーム・プログラミングにおける原則としてはYAGNI(機能は実際に必要となるまでは追加しないのがいい)を思い浮かべる人も多いと思うが、少し根性論かもしれないが「CTOならその予測を当てにいけ」という持論で進めたそうだ。そのためには予測の精度を上げる努力が必要とのこと。

さらにCEOとのコミュニケーションで、優先順位をすり合わせやお互いの仕事内容を共有することも重要と窪田氏。そのうえで、1年後や5年後、どうありたいか語り合うことも必要とのこと。「未来を予測し、技術の力で攻めの準備とリスクの回避を行い、サービスを最速で伸ばす」という言葉でプレゼンを締めくくった。

CTO of the year 2018の審査委員長を務めた、グリー取締役/上級執行役員/CTOの藤本真樹氏は「審査に関わるのは今年で5年目だが、間違いなく毎年レベルが上がっている。この賞に参加すること自体登壇者のレベルが上がっていることは、業界としても非常にいいこと」というコメント。

TechCrunchも審査員として参加したが、最後まで票が分かれ、最終的には協議のうえでの1位選出となった。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルと同様、年々レベルがアップしているCTO of the year。来年はどういった企業が出場するのか、これから楽しみだ。