プロパガンダ

ロシアの長年にわたるオンラインキャンペーンが、どのように多くの人に影響を与えてきたのか

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レポートによればそれは企業たちがこれまで認めてきたものよりも深刻だ

米国の政治に影響を与え、大衆の意見を揺さぶるロシアの動きは、絶えることなく続いており、対象となる人びとに影響を与えるという意味で、大きな成功を収めていることが、オックスフォード大学のComputational Propaganda Project(計算機によるプロパガンダプロジェクト)が本日(米国時間12月17日)発表したレポートで明らかになった。Facebook、Instagram、Google、およびTwitterから議会に提供されたデータに基づいて行われたこの調査は、何年にもおよぶキャンペーンの実情を描き出しているが、企業たちにとってお世辞にも嬉しい内容とはなっていない。

ここで読むことができるレポートは、先週末に何社かのメディアに配られたものである。その内容は、モスクワにあるオンラインインフルエンス工場兼トロール企業(偽情報を書き込んで撹乱する企業)であるInternet Research Agency(IRA)の活動をまとめたものだ。データは様々な企業の様々な期間のものをカバーしているが、2016年と2017年のものが最も活発な活動を示している。

より明確なイメージ

ここ数年の間この話題について時折しか触れてこなかったならば、Compropのレポートが、事実をわかりにくくする余計な論評抜きに、全体像を俯瞰するのにはよい手段だ。

もしこの話題をしっかり追いかけてきたのならば、今回のレポートの主要な価値は、オックスフォードの研究者たちが分析のために7ヶ月ほど前に与えられたデータから、詳細な結果と新しい統計が導出された点にある。その数字は、予想される通り、各企業たちから自発的に報告され慎重に証言されたものに比べると、いずれもやや高いか、より悪いものであるように思える。

以前の分析では、IRAのソーシャルコンテンツに対して「遭遇した」(encountering)とか「見た」(seeing)といったどちらかと言えば曖昧な基準に焦点があてられていた。これは影響を受けた人数をFacebookだけでも1億人以上増やすという効果を生じたが、「見た」という項目は過小評価されがちである。一体どれくらいのものを毎日インターネット上で「見て」いるだろうか?

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オックスフォード大学の研究者たちは、まず手始めに、より具体的で重要な数字を使い、Facebook上での関わりについて、より優れた定量化を行った。例えば、2016年と2017年には、Facebookでほぼ3000万人の人びとが、実際にロシアのプロパガンダコンテンツをシェアし、ほぼ同数の「いいね!」を集めて、数百万に及ぶコメントが寄せられた。

これらは、ロシアの企業によってタイムラインにねじ込まれた広告の話ではないということに注意して欲しい。これらはプロパガンダアカウントにリンクされている罠ニュースサイト上の投稿、ミーム(meme:模倣によって人から人へと伝達し、増殖していく文化情報)、そして偽情報を、積極的に取り込み広めている、数千人のユーザーが関わるページやグループの話なのだ。

もちろんコンテンツ自体は、移民、銃規制、人種関係などの、多くの際どい対立課題へと注意深く分類された。多くの異なるグループ(すなわち、ブラックアメリカン、保守派、イスラム教徒、LGBTコミュニティ)が対象とされた。それぞれが重要な関わりを見せているが、上記の統計情報の内訳は次の通りだ。

ターゲットにされたコミュニティは驚くほど多様だったが、その意図は絞り込まれていた。コミュニティの分断、左寄りの有権者の抑制、そして右寄りの有権者の活性化である。

特に黒人有権者は全てのプラットフォーム上で主要なターゲットであり、人種的緊張を保ち、実際の投票行動を抑制させようとする大量のコンテンツが投稿されていた。フォロワーたちが投票を控えようと考えていることを示唆したり、投票に対する意図的に誤った指示を伴うミームが投稿された。これらの行動は、IRAのキャンペーンの中でももっとも数が多く人気があった。その実際の効果を判断するのは難しいが、確かにそれらはターゲットの目に触れたのだ。

ブラックアメリカンをターゲットとした投稿の例

声明の中で、Facebookは公的機関と協力しており、「Internet Research Agencyのような活動家たちの政治的意図を判別するために、私たちや他社が提供する情報は適切に議会や調査機関に託されている」と語っている。また「選挙の際に私たちのプラットフォームへの干渉を防ぎ、2018年中盤に向けての投票者抑圧行為を回避できるように私たちのポリシーを強化し、民主主義に対するソーシャルメディアの影響を独立して研究するための資金を提供した」とも述べている。

注目されるInstagram

これまでのストーリーを追う限り、人びとは特に狙われていたFacebookこそがプロパガンダのための最も大きなプラットフォームだろうと思うだろう。そしてそれは、最も明瞭なゴールであるドナルド・トランプの当選が狙われていた時期である2016年付近がピークだった筈だ。

だが実際には、InstagramがFacebookよりも同じあるいはより多いコンテンツを取り込み、同様の規模での関わりが持たれていたのだ。以前の報告では、IRAが関わった約12万件のInstagramへの投稿が、選挙に向かう中で何百万人ものひとびとに届けられたことが明らかにされた。しかし、オックスフォードの研究者らは、データ(2015-2017)の対象期間中に40個のアカウントに、合計で約1億8500万の「いいね!」と400万のコメントが寄せられたと結論づけている。

だがこれらのかなり高い数字に関する部分的な説明は、もっともわかりやすいストーリーには反して、IRAの投稿が全てのプラットフォーム、特にInstagram上で、選挙後に増加したことによるものなのかもしれない。

IRAが関係するInstagramの投稿は、2016年の月間平均2611件から、2017年の5956件へと急増した(扱っている期間が上記の表とは多少異なるため、数字は正確には一致していない)。

Twitterへの投稿数は非常に多いものの、月間6万件下回るレベルで安定しており、調査対象の期間中における関わりは合計で7300万回ほどになった。極めて率直に述べるなら、この種の大量のロボットアクティビティはTwitter上ではしばしば見られるものである。そしてTwitterがそれを押し止めるために起こした行動はとても少なく、それについて言及することもあまりない。しかし、それは確かに存在しており、かつて別の場所別の言語で政治活動に用いられていた既存のボットネットがしばしば再利用されるのである。

声明のなかで、Twitterは、「2016年以降、私たちのサービスに対する操作に対する対抗措置は大きく進歩した。また独立したさらなる学術的研究と調査を可能にする以前公開されたアクティビティに関係した追加データも10月に公開された」と語っている。

ロシアの影響がプラットフォーム上にみられるにもかかわらず、Googleもレポートの中に発見することは難しい。オックスフォードの研究者たちは、GoogleとYouTubeは出し惜しみをしているだけでなく、積極的に分析の妨害を試みていると不満を述べている。

Googleは、上院委員会に機械では読めない形式のデータを提供することを選んだ。IRAがGoogleで広告を購入したという証拠は、広告テキストのイメージと、以前はスプレッドシートに整理されていた情報をPDFの形式にしたものとして提供された。これが意味することは、Googleは利用可能な広告テキストとスプレッドシートを、データサイエンティストたちにとって便利な形式である、標準的な(CSVやJSONのような)機械可読形式で提供できた筈だったのに、まるですべてが紙に印刷された資料であったかのようにイメージとPDFに変換することを選んだということだ。

このことによって、研究者たちは独自にデータをYouTubeコンテンツの引用やメンションを経由して集めることを余儀なくされた。結果として、彼らの結論は限定されたものになっている。一般的に言えば、ハイテク企業がこうしたことを行うときには、それが意味することは、彼らが提供できるデータが、彼らが聞きたくないストーリーを語る可能性があるということだ。

たとえば、New Knowledgeが発表した第2の報告書の中で指摘されている興味深い点として、YouTube上でIRAに関係しているアカウントによって1108個の動画がアップロードされていることが懸念材料として挙げられている。Googleの声明によれば、これらの動画は、「米国民や米国民の特定のセクターに向けられたものではなかった」と説明されている。

だが実際には、数十のものを除いてほぼ全ての動画が、警官の暴力とBlack Lives Matter(黒人に対する暴力や形式的な人種差別の撤廃を訴える運動)に関連するものだった。ご存知のようにこれは他のプラットフォーム上でも特に人気の高いトピックである。この非常に絞り込まれたターゲット設定が、YouTube自身によって何らかの形で言及されているだろうと期待しても間違いではないと思われる。しかし残念ながら、その発見は第三者によってなされた。そしてそのことが、同社からの発表が如何に信頼に足りないものかを印象付けている(Googleはコメントの要求に対して回答していない)。

真剣に透明性を求める

その結論として、オックスフォードの研究者たち、Philip N. Howard、Bharath Ganesh、そしてDimitra Liotsiouは、ロシアのプロパガンダ行動はとても気がかりな効果を持ち(続けており)よく組織化されているが、彼らの行動は単独で行われているわけではないと指摘している。

「2016年と2017年には、私たちはロシアによって世界中で行われた、重大な選挙妨害活動を観察したが、そうした影響を受けた各国の中の政治団体もまた、誤った情報を国内で広めたのだ」と彼らは書いている。「多くの民主主義国では、コンピュータによってプロパガンダを広める行為が、選挙法に違反するか否かさえ明らかではない」。

「しかしながら、国家のサイバー部隊によって使われている戦略や技法が影響力を持っていることは明らかである」とレポートは続ける。「そしてその活動は民主主義遂行の規範に違反している…ソーシャルメディアは問題を共有し市民の参加を束ねる自然なインフラストラクチャから、ソーシャルコントロールのための計算機を使った道具になりつつある。抜け目のない政治コンサルタントに操作され、民主主義の政治家にも独裁主義の政治家にも利用可能なものになっているのだ」。

予想されたことだが、ソーシャル・ネットワークの中庸を目指すポリシーさえも、プロパガンダのターゲットとなった。

政治家に期待することは、いつものことだが、分が悪い賭けである。責務は明らかに、ソーシャルメディアのプロバイダーたちと、悪意ある者たちがはびこり難い環境を用意すべきインターネットサービス側にある。

具体的には、こうした企業は、内部プロセスや間違いを隠蔽するために、研究者たちや監視者たちを排除するのではなく、誠意をもって受け入れる必要があるということだ。

「かつてTwitterは主要な大学の研究者たちに、複数のAPIを提供していたが、やがてその提供を中止し、残ったAPIに関する情報をほとんど提供しなくなった。そのことで基礎的な社会科学の用途でさえ、研究者たちはその有用性を疑問視するようになった」とレポートの著者たちは指摘する。「Facebookはパブリックページの分析のために、非常に限られたAPIを提供しているが、InstagramのAPIは提供していない」(Googleの提供内容について彼らがどう思っているかは既に述べた)。

このレポートで名前を挙げられた企業たちが、私たちに繰り返し述べているように、本当に真剣にこうした課題に取り組むつもりならば、おそらくこうした提案のいくつかを実装するべきだろう。

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(翻訳:sako)