Juul
マルボロ
電子タバコ

Juulはいかにして人びとを電子タバコの煙に巻いて、380億ドルもの価値を生み出したのか

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中毒性のあるプロダクトデザインの秘訣

Juulはタバコではない。それよりずっと手軽なものだ。以下に説明する悪魔的に巧みな製品デザインによって、このスタートアップは人がニコチンの虜になる障壁を大幅に引き下げた。Juulはタバコを一服する道に立ちふさがる、あらゆる障壁を解体したのだ。

その結果は、先週行われたマルボロ(タバコの銘柄)の製造者であるAltriaからの128億ドルの投資を受けて、新しい評価額が380億ドルになったことや、爆発的に広がるティーンエージャーやその他の世代の間での、電子タバコ習慣の広がりとして現れている。ゲームはゲームを知る。この場合Altriaのゲームとはニコチン中毒である。AltriaはJuulの戦術に一歩先行されたことをよく認識していたために、自身の時価総額の10分の1以上の資金を、現金でスタートアップに投資することによって、自身の地位を守ろうとしているのだ。

Juulは、人びとを明らかに危険性のある本物の喫煙習慣から、より健康的だと考えられている電子タバコへと切り替える手助けをできると主張している。しかし実際には、その小さなアルミニウム製のデバイスは、これまで何も吸っていなかった人びとが電子タバコを吸うようになることを助けている…その中にはやがて実際のタバコの喫煙を始める者も出てくるだろう。ある研究では、これを通してタバコを始める人のほうが、タバコを止める人よりも多いことが示されている。その報告によれば、2015年には2070人の喫煙成人が電子タバコのおかげで実際の喫煙を止めているが、その一方で電子タバコを使ったティーンや若者のうちの16万8000人が日常で本物のタバコ喫煙を始めたと推定している。

写真:Gabby Jones / Bloomberg via Getty Images

Juulはどれほどの速さで全国に広まったのだろうか?調査会社のNielsenによれば、昨年9月に米国電子タバコ市場の27%を占めていたJuulは、現在75%のシェアを占めていると言う。それからの1年で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は過去30日間に電子タバコを利用した高校生の割合が75パーセント増加したと言う。それは10代の中の300万人、あるいは全高校生のおよそ20%に相当する数だ。CNBCによれば、2018年のJuulの収益は約15億ドルになりそうだ。

健康への影響はさておき、Juulは生涯続く悪習慣を身に付けることを途轍もなく容易にする。親たち、規制当局、そして潜在的電子タバコ利用候補者たちは、この先Juulの誘惑を抑えたいという希望を持っているならば、なぜJuulがこれほど成功したのかを理解する必要がある。

共有可能性

初めてタバコを試すのは大変だ。熱と煙で喉が焼ける。味は不快で圧倒的だ。匂いが吸うものの指と服を覆い、喫煙者としてマークされる。タバコを無駄にしないように、丸々1本を吸い切らせる圧力を感じる。たとえ友人のタバコを試そうとしているときでも、まずは1本に火を点ける必要がある。そして、より大型の最新型の電子タバコ(温度や味をカスタマイズできる)とは違い、Juulは吸う者を間抜けな電子タバコ中毒者には見せないという特徴がある。

Juulは喉にとって普通のタバコよりもはるかに優しい。味はより穏やかで、それも様々な風味で隠すことができる。蒸気はそれほど迅速にあなたを染め上げたりしない。バーで友人のJuulを一吸いさせて貰うことも可能だし、吸い始めた後でも気にすることなくいつでも中断することができる。エレガントで分離可能な形状は、利用者をヘビーな電子タバコユーザーには見せることがない。とてもカジュアルだ。それでも、公共の場における、利用者の仕草や人びとが吐き出す「煙」は、「それって何?ちょっと試してもいい?」という質問を引き出すのには十分だ。デバイスの普及に拍車をかけたニコチン供給機を、メディアで持ち上げた、JuulのミームとInstagram Storiesについて書かれた記事も、たくさん存在している。

そしておそらくとても狡猾なのは、電子タバコはより健康に見える点だ。生まれてからずっと続いている禁煙広告とタバコの害を訴えるラベルは、私たちの脳髄に危険性を深く埋め込んでいる。だが、少量の蒸気がどれほどの害をおよぼし与えうるのだろうか?まあ、蒸気中のニコチンや他の化学物質は、血管の柔軟性を損ない、動脈硬化を促し、血圧と心拍数を増し、そして肺胞マクロファージに対して有毒であることによって肺を傷つける。たとえタバコほど悪くないとしても、それでも蒸気を吸うことは危険だ。そしてそれは必ずしも人に禁煙をさせる力があるわけでははない。

Juul LabsがMarlboroメーカーのAltria Groupから128億ドルの投資を受ける【英文】

ある研究によれば、電子タバコを吸い始めた喫煙者のうち、実際にタバコを1年後に止めた者はわずかに10%だった。一度もタバコを吸ったことがなかった私の友人は、今では毎日1パックのJuulを消費していると私に語る。誰かが彼に、ナイトクラブで、一服試してみるように勧めたのだ。すぐに彼は他人にJuulをねだるようになった。やがて自分でそれを買い、それから決して振り返らないままだ。彼はこれまでパーティでずっとタバコの煙に囲まれていたが、決して自分でそれに手を出すことはなかった。Juulは抵抗する力をやすやすと奪ったのだ。

隠蔽可能性

タバコに火をつける行為は、多くの場所で禁止されている目立つ行為だ。これに対してJuulからちびちびと吸い込む行為はそれほどのものではない。
紙巻タバコはしばしば室内で喫煙することを禁じられている。それを隠すのは至難の業だし、下手をすると追い出されてしまうことになる。吸い始めるためにはライターを手に持って火を扱う必要がある。それらはポケットの中で潰れたり湿ったりするかもしれない。先端が燃えているために狭い場所では手に負えないものとなり、先端の火や落ちる灰はカーペットにダメージを与え、汚してしまうかもしれない。紙巻きタバコを吸うのは、どうしても紙巻きタバコを吸いたいからだ。

公的機関は、いまだにJuulsや他の電子タバコをどう扱うべきかを決めかねている。喫煙を禁止している多くの場所は、電子タバコに対する明示的な禁止を行っていない。匂いの少ない蒸気と、あまり目立たない動きによって、それを隠すのは実際簡単である。飛行機でも、知らん顔をして試して、もし咎められても規則を知らなかったのだと言うかもしれない。金属製のスティックは壊れにくい。誰も焦がすことはない。灰皿も不要だし、上着やソファに穴をあけるようなドジを踏むこともない。


バッテリーが充電されている限り、余計な道具は不要だ。そしてライターのようなもので誰かの注意を引くこともない。バッテリーの寿命を普通の喫煙者は心配することはないが、ヘビージューラー(heavy Juuler)にとっては主要な関心事だ。だがいまやJuulをいつでも使えるようにするために大きな携帯充電器を持ち歩いている人たちがいることを私は知っている。しかし、助け合いネットワーク現象も生まれつつある。iPhoneのコードと同じように、Juulsは他のユーザーからバッテリースティックや充電器を借りることができるくらい一般的になりつつある。

そして、多くも少なくも、好きなだけ何服でもできるために、Juulを無意識のうちにいつでも使うことになる。机の前で、ダンスフロアの上で、運転しながら、そしてベッドの中でさえ。友人の姪と甥は、クラスの10代の同級生たちが、袖口に隠しながらJuulを吸うところを見たと言う。数学の授業中に本物のタバコを吸うほど厚かましい子供はいないだろうに。

配布可能性

ジレットは素晴らしいカミソリとカミソリ刃のビジネスモデルを開拓した。時々割り引かれるカミソリ本体を買う、すると高価な専用カミソリ刃を買い続けなければならない。Dollar Shave Clubは、消耗品のカミソリ刃を自宅に届けるサブスクリプションモデルを提供することで、この戦略をレベルアップした。Juulはこの両者を、物理的に中毒性のある製品と組み合わせているのだ。

タバコを一箱吸い終わったならば、喫煙を止めることができるかもしれない。何も残っていないからだ。しかしJuulの場合には電子タバコパックを吸い終わったとしても、35ドルのバッテリーパックが後に残される。先行投資を回収するためだと、パックを買い続けさせて、Juulエコシステムに利用者を留めようとする誤った考えが存在している。

写真:Scott Olson/Getty Images

タバコと比較した場合の、Juulの唯一の普及阻害要素は、まだどこにでもあるわけではないということだ。タバコを売っている店舗にも、まだ取り扱っていない場所もある。しかし、ますます多くの店がそれらを扱い始めていて、Altriaの後押しによってそれは広まって行くことだろう。そしてJuulは「自動発送」オプションを提供している。これは4パックで16ドルの商品から2ドルを割引してくれるオプションで、こうなると自分で購入することを考える必要すらなくなるのだ。止めるきっかけを得られるだろうか?まあ、パックは次々に手に入るのだから、それをただ使って行くことになるのだろう。規制によるものか、イノベーション不足なのかは知らないが、私は従来のタバコのサブスクリプション配送オプションを見つけることはできなかった。

そして、JuulsやJuulパックを違法に購入したい未成年者たちにとっては、その小さなサイズは密かに購入したり、転売したりすることを容易にする。最近放送されたサウスパークのエピソードでは、小学4年生の複数の競合するシンジケートが、Juulパックをさらに幼い子どもたちに売っていた。

恥ずべき振る舞い

Juulの共同創業者James Monseesは、San Jose Mercury Newsに対して次のように語っている「最初の段階は、その価値を証明して、タバコを時代遅れにする製品を生み出すことです」。だが、彼は決してJuulはニコチンを時代遅れにしたり、中毒者の数を減らしたいとは言っていないことに注意してほしい。

Juulの共同創業者James Monsees

もしJuulが本当に中毒との闘いを気にかけているのなら、ニコチンから利用者を引き離すための処方を提供するだろう。だが同社は、人が止めることを助けるような、低用量あるいは無用量のパックを販売してはいない。米国では、5%と3%のニコチンバージョンしか販売していないのだ。イスラエルのような最大用量に対する法的規制のある国に対しては、1.7%のパックを製造しているが、それを米国内で販売することは拒否している。最大のタバコ会社のうちの1社から120億ドル以上を調達したことを思うと、そのミッションステートメントも虚しく響く。

Juulは死のスティックビジネスに他ならないが、AppleやFacebookが得意とするような、プロダクトデザインと口コミの力で支えられているのだ。

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(翻訳:sako)