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テクノロジー・スタートアップは景気後退に備えよ――今やるべきことはこれだ

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流れが変わる速さには驚かされる。数ヶ月前にわれわれはテクノロジー・ブームの真っ只中にいて、この好景気は永遠に続くようにみえた。 いまやリセッションを予告すると考えられる逆イールドカーブが現れ、市場は全面的に弱気だ。Google Trendsを開けばまさにこの“recession”という単語の検索回数が2008年から9年にかけての金融危機年以来最大となっている。世界の専門家がほぼ全員一致で近く景気後退があると予測している。

(Bloomberg記事) Lux Parnersのパートナー、Bilal Zuberiは「ある程度の景気後退が起きるのは100%確実だと考えている。大きな調整局面となるだろう」と述べ、スタートアップに対してコストカット、財務報告の厳密化の徹底(もしまだやっていないなら)を勧め、さらに今のうちに資金調達を行うべきだとしている。Zuberiはまた「キャッシュを十分に確保しておかねばならない。これは準備不足のライバルが会社や資産を売りに出す場合があり得るからだ」と述べている。

ではその景気後退はいつ起きるのだろうか? もちろん正確なことを予測するすべはないが、専門家は2019年下期から2020年上期あたりだろうと言っている。悲観的な筋(大勢のCEOを含む)はもっと早いと考えている。ではこの景気後退がテクノロジー分野に与える影響は? いい質問だ。

実はテクノロジー分野はバブル破裂に強い。景気のダウンから利益を得ることさえある。2008年の経済危機でも悲観的専門家は「テクノロジー産業の反映は終焉迎える」と警告した。スマートマネーの代表、Sequoia CapitalでさえR.I.P. Good Times(良き時代よ、安らかに眠れ)という長いスライドを作って運命の暗転を警告した。しかしこの予言が失敗に終わったことは誰もが覚えている。

一方、「ソフトウェアが世界を食い尽くす」現在、すべての産業はソフトウェア産業になりつつあるので景気後退はこのシフトを加速する」という理論がある。こうした過激なディスラプトによって苦しめられる個人の数を考えると無条件に喜ぶことはためらわれる。しかし一部の起業家はこのプロセスから利益を得るし、長期的かつマクロの観点からはこうした展開はあり得る。景気後退は隕石の衝突のようなもので、それが恐竜を滅ぼし、身軽な哺乳類―ソフトウェア企業―の繁栄をもたらすかもしれない。

仮にこうした理論が事実であっても、多数の個別企業が激しく揺さぶられることは間違いない。起業家は支出を抑えることが至上命題となる。長期的には大きな価値を生む可能性があるが、短期的には利益を生まないプロジェクトはまっさきにコストカットの対象になるだろう。消費者は財布の紐を固く締めるようになるだろうし、アプリを購入したり広告をクリックしたりする回数は現象するだろう。誰もが万一に備えてキャッシュを後生大事と抱え込み、リスクの大きい投資をしなくなるだろう。

大きな打撃となるのは、資金の流れが細るということより、マインドセットが後ろ向きになることだ。SF作家のブルース・スターリングは住宅抵当証券の破綻に始まった2008年の金融危機について、「興味ある点は、物理的存在にはまったく何の変化もなかったのに、われわれは突然希望の世界から絶望の世界に投げ込まれたことだ」と観察している。予想される景気後退も、理論的にはハイテク産業には大きな悪影響を与えないかもしれない。考えられないことだが、仮にGDPが10%減少するといった事態になっても、軍閥とミュータントが跳梁するマッドマックスの荒野が出現するわけではない。しかしわれわれは成長する世界にあまりに深く慣らされているため、単なるスタグネーションでも大災害のように感じられるかもしれない。

なすべきことは明らかだ。景気後退は間違いなく起きる。これには災害とチャンスの両面がある。その割合は個人や企業の置かれた状況によっても、またその備えによっても異なる。背伸びをしてはならない。(必要以上の)借金をしてはならない。パニックに陥ってはならない。なるほど新しいプロジェクトをスタートさせたり会社をピボットしたりするには適さない時期を迎えるかもしれない。しかし、好むと好まざるとによらず、「世界を食い尽くす」ソフトウェア産業は産業構造の食物連鎖の最上位にいる。隕石の衝突は避けられないだろうが、明るい側面も存在する。われわれは自他の利益のためにできるだけの努力をすべきだろう。

画像:Pixabay (opens in a new window) under a CC0 (opens in a new window) license.

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滑川海彦@Facebook Google+