SpaceXのStarshipはSF的にきらきら輝く――外皮にステンレスを採用したのは耐熱性

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SpaceXが発表したStarship宇宙往還機はいろいろな意味でSF黄金時代のリバイバルを思わせる。この機体の目的は月などに旅客を輸送することだが、ぴかぴかのステンレス製外皮は古き良き時代のSF雑誌の派手な表紙にそっくりだ。

ファウンダー、CEOのイーロン・マスクはStarshipのイラストをTwitterに投稿した。キャプションは「ステンレススチールのスターシップ」とだけあった。正確に言えば、このステンレスの機体はSpaceXが来年テストを開始しようとしている宇宙旅行システムの一部にすぎない。現在計画されているフライトはシステムのテストのためなので、ごく短いものとなるだろう。

イーロン・マスクのツイートの例にもれず、今回もStarshipについてはさまざまな推測や議論が巻き起こっている。

まず第一に驚かされたのはステンレススチールという素材の選択だ。現代のロケットはカーボンファイバーなどの先進的な素材を複合して軽量かつ目的に適した物理特性を備えた構造を実現しようとしている。金属が利用される場合は、アルミ、チタンなどが普通だ。もちろんAtlas 5ロケットの2段目などステンレスが使われたこともあるが、むしろ例外だ。ましてStarshipのように他の天体まで航行し、大気圏への再突入を必要とする機体の場合、ステンレスが使われるとは誰も予想しなかっただろう。

マスクは後続のツイートでステンレスを採用した理由を簡単に説明している。

ステンレスはカーボンファイバーに比べて極端な温度状態で良好な重量/強度を実現する。極低温でやや優れており、室温では劣っているが、高温では圧倒的に優れている。 

マスクがここで言うステンレスはニッケル系の300シリーズだが高度な処理で最高の強度を実現している超合金だ。われわれのキッチンにあるすぐに曲がってしまうステンレス包丁とはわけが違う。マスクはSpaceXの冶金エンジニアがRaptorロケットエンジンのために開発したSX500を用いるとしている。Raptorエンジンは現在のMerlinエンジンに代わってBRF以降の大型ロケットに利用される。

ステンレスが採用された理由としては再突入耐性が高いためのようだ。

宇宙船やブースター・ロケットを再利用する場合には大気圏に再突入する際に発生する熱が大きな問題となる。 スペースシャトルなどで用いられた熱吸収性シールドは高熱で融解し、徐々に剥離していくことによって機体から熱を取り去る仕組みだ。

ところがこの方式はStarshipでは採用できない。熱シールドを完全に除去して貼り替える作業は時間と人手を食う。ターアラウンドの最小化を目的とするStarshipに不向きだ。そこで熱吸収式ではなく熱反射式のシールドを採用することが現実的な選択となる。しかしこうした高温に耐え乗員を保護できるシステムの開発は極めて困難なエンジニアリングとなる。

Scott Manleyがこの点を詳しく説明するビデオをアップしている。

マスクは当初Starship(この時点ではBFRと呼ばれていた)について、「再突入時にはほぼ全期間にわたって減速を続けるが、その際に機体のあらゆる表面が利用される」と述べている。再突入はおそらくFalcon 9のブースターのようなロケットの制動噴射ではなく、スペースシャトル式の滑空になるだろうと思われる。

ステンレスへの変更はSFコミックのファンにおなじみのスーパークールな見た目になるという思わぬ副作用を生んでいる。マスクによれば塗装は即座に焼ききれてしまうので無意味だという。

ステンレス外皮は高熱になるため塗装は不可能。反射能率を最高にするためミラー仕上げ。 

いかにステンレスでもいつまでもぴかぴかのままでいることは難しいだろう。ガスレンジで空焚きしたステンレスの鍋底のようにStarshipの底面にも焼けやシミが見られるようになるに違いない。もっともこうした「汚し」が入るようになるというのはスターウォーズの宇宙船のようで魅力的だ。

まだ開発段階であるため詳細については不明な点が多い。SpaceXはテストが進むに従って、その結果を取り入れ、デザインをさらに変更する可能性がある。早ければ来年にも最初のテスト飛行が行われるはずだ。大気圏脱出にはこれも開発中のFalcon Super Heavyブースターが用いられる。

マスクによればStarshipのテクニカル・ドキュメントの公開は来年の3月かs4月になるという。この文書がテスト用機体だけに関するものか、SpaceXが計画している日本人が乗客1号となる月旅行計画まで含むものかは不明だ。いずれにせよ、Starshipについてマスクの大胆な(ときに無謀な)ツイートによって近々さらに情報を得ることができるはずだ。

画像:Elon Musk

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滑川海彦@Facebook Google+