中身まで検索閲覧できる法律書籍のデータベース「Legal Library」が数千万円を調達

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近年、法務の課題をテクノロジーを用いて解決する「リーガルテック(LegalTech)」関連のスタートアップを取り上げる機会が増えてきた。

例をあげると契約書にまつわる業務を効率化するGVA TECHLegalForceHolmes(旧リグシー)、Hubble(旧RUC)のほか、集団訴訟プラットフォームを展開するクラスアクション、特許や商標など知財関連のプロダクトを手がけるAI Samurai(旧ゴールドアイピー)、Cotoboxなど。この領域の起業家は弁護士を筆頭に現場をよく知る専門家が多いのも特徴かもしれない。

今回紹介するLegal Technologyも、弁護士である二木康晴氏が立ち上げたスタートアップだ。オンライン上で法律専門書を自由に検索・閲覧できるリサーチサービス「Legal Library(リーガルライブラリー)」を開発する同社は1月11日、複数の個人投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドにはヴォーカーズ(Vorkers)代表取締役社長の増井慎二郎氏やMomentum代表取締役CEOの高頭博志氏を含む数名が参加。調達額は数千万円になるという。

日経テレコンやSPEEDAの法律版を目指す

二木氏が「ビジネスのリサーチに使われている『日経テレコン』や『SPEEDA』の法律版のようなサービスを目指している」と話すように、Legal Libraryはリーガルリサーチを効率化するクラウドサービスだ。

法律専門書をオンライン上でデータベース化し、キーワードに関する内容が書かれている本を出版社横断で検索できる仕組みを構築。検索画面には書籍の表紙画像が並び、クリックすると各書籍の該当箇所が表示され“中身まで閲覧できる”のが特徴だ。

「会社201①」など文中で条文の記載がある場合、クリックすることで「e-Gov」の法令検索サービスの該当条文ページに遷移。その場ですぐに条文と照らし合わせることもできる。

また実務においては専門書に記載のある「契約書のひな形」を参考にして書類を作成することも少なくない。Legal Libraryではこのひな形をWordで出力する機能を搭載することで、契約書の作成までスムーズにする効果もある。

このようなリーガルリサーチは、これまでアナログな側面が強かった業務だ。弁護士やパラリーガルは何か調べたい事項がある場合、弁護士会の図書館や事務所内の図書室などで関連する書籍を手当たり次第チェックしている。

そもそも答えとなる内容を探し出すのに一苦労。その後も該当部分をコピーしたり、ひな形を使いたい場合に手打ちで入力したりなど手間のかかる作業が多く、効率化できる余地があった。

「Google検索のような形で法律書籍の中身まで検索できるサービスがあれば便利ではないかというのが最初の構想。法律書籍をデータベース化すればこれに近いものが実現できると考えて起業した。弁護士にヒアリングをしても課題を感じている人は多く、地味だけど確実にニーズのあるサービスだと考えている」(二木氏)

検索結果として表示される書籍の順番は、これまでに閲覧された回数などに沿って決められる。図書館だと「どの本がどのくらい読まれているのか」がわからないので、多くの専門家が参考にしている書籍をパッと判断することは難しいかもしれないが、Legal Libraryならそんな書籍にもすぐにアクセスできるというわけだ。

まずは弁護士の利用を想定しているが、ゆくゆくは他の士業やビジネスマンなどにも広げていく計画。二木氏自身も法律事務所を経て経営共創基盤で働いていた経験があるが、コンサルタントに見せても反応が良かったという。

「ビジネスマンがどうやってリーガルリサーチをしているかというと、多くの人がGoogleを使う。ただ検索結果の中には誰が書いたかわからないようなブログ記事や古い記事も含まれている。(リーガルリサーチをする際に)信頼性の高い価値ある情報を調べたいというニーズは弁護士に限らない」(二木氏)

たとえばスタートアップにおいても個人のデータを扱うプロダクトであれば個人情報保護法が関わってくるし、FinTechにおける資金決済法や金融商品取引法、銀行法のように業界ごとの法律を調べる機会も多いだろう。

弁護士でなければ毎日頻繁に使うサービスではないかもしれないけれど、ちょっとしたリーガルリサーチを自分でやりたいと思った際に、正しい情報を扱った書籍にオンライン上で即座にアクセスできるのであれば使い勝手は良さそうだ。

出版社との実証実験をスタート、夏頃には正式版リリースを予定

二木氏によると今のところ出版社側の反応も良いそう。すでに法律専門書を手がける老舗出版社の有斐閣や弘文堂が実証実験に参画する方針で、今後も順次参加する出版社の数を増やす計画だという。

上述したように弁護士会の図書館や各法律事務所内の図書室が充実してくると、そもそも紙の書籍が売れにくくなる可能性がある。Legal Libraryはサブスクリプションモデルでの提供を予定していて、読まれたページ数に応じて出版社に収益を配分する仕組みを予定。出版社にとっては新しい法律書籍の売り方にもなり得る。

また「どの部分がよく読まれているか、どこにラインマーカーが引かれたかといったデータを取れるようになる点もメリット」(二木氏)だという。

今後は出版社との実証実験後を進めながら、春ごろにβ版、夏ごろに正式版の提供を目指してプロダクトの開発に取り組む。

まだローンチ前ではあるものの、すでに弁護士から使いたいという問い合わせもきているそう。中には日本の書籍をすぐに調べることの難しい留学中の弁護士もいるようで、法律書籍のオンライン化が進めば弁護士の働き方の幅も広がるかもしれない。

「(Legal Libraryを普及させて)数年後には若手の弁護士の間で『Legal Libraryがない時代はどうやってリサーチをしていたんだろう』という会話が生まれるようなサービスを目指していきたい」(二木氏)

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