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核兵器を根絶するときが来た、技術者は開発から手を引こう

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【編集部注】著者のBeatrice Fihn氏は、
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)事務局長を務める人物。2017年にノーベル平和賞を受賞した。

「原子爆弾は、第一義的に都市を無慈悲に絶滅させるためのものである」。これは、核兵器開発を推進した科学者レオ・シラード氏の言葉だ。ハリー・トルーマン大統領に宛てた原子爆弾を日本に投下しないよう求める請願書の中に、彼はこの一節を書き込んだ。この請願書には、マンハッタン計画に参加していた他の数十人の科学者が署名している。

1945年に原子爆弾が導入されてからわずか数カ月後には、今日の核の世界を作り上げた人たちは、自らが生み出した技術が暗示するものを恐れるようになっていた。

あれから約75年が経過し、技術者、発明家、起業家、学者は、再び自問しなければならないときが来た。「都市を無慈悲に絶滅させる」ことに加担していないか? 己の才能を核兵器に役立ててはいないか?技術を創造のために使っているか?それとも破壊のためか?

選択の瞬間

人間性は、また新しい転換期を迎えている。

米国とロシアは、新しい核兵器の開発競争を本気で進め始めた。新たな冷戦を望んで、永久平和の約束をかなぐり捨てる方向に進んでいる。ロシアの最新兵器は、放射性の津波によって海岸線全体を破壊するというものだ。米国は「もっと使いやすい」核兵器を作ろうとしている。

その一方で、北朝鮮は新たな核兵器開発計画を開始したように見える。インドとパキスタンは、制限のない核戦争への道の突端にいる。もし核戦争になれば、気候が変化し、世界の20億人以上の人々を餓死に追いやる恐もがあると言われている。

2018年8月6日、ムンバイで開かれた広島原爆記念日のための集会に参加したインド人学生。マスクをかぶり、両手には平和を訴えるスローガンが書かれている

核兵器禁止条約は、ひとつのきっかけを作った。国際法の力を行使し、規範を変えることでその方向性を劇的に変化させる機会だ。核兵器禁止条約は、50カ国が批准すれば国際法になる。現在は22カ国だ。

金融の世界もリスクを認識している。世界最大級の年金基金には、核兵器から撤退するところもある。しかし、万能な金の力よりも、ずっと強力なものがある。人的資源だ。

核兵器の産業複合体は、非常に優秀な科学者、エンジニア、物理学者、技術者に依存して死の兵器を開発している。多くの才能が、技術関係、軍事産業、ペンタゴンに流れ、大手ハイテク企業や革新的なスタートアップでの仕事を探している。大学で研究を続ける者もいる。

そうした才能ある技術者なくして、新たな核兵器開発競争は起こりえない。今こそ、核兵器から人的資源を引き上げるべきだ。

人間性を終わらせる誤り

わずか1年とちょっと前、ハワイの人々が緊急避難をして、必死になって「核攻撃から身を守る方法」をググっていたことがあった。数日後、日本でも大勢の携帯ユーザーが、核ミサイルが飛んでくるという誤警報を受け取っている。

こうした事件を引き起こしたのが人的ミスと技術的な不具合が重なったものだったことを思うと、いつか使われてしまう前に核兵器を止めなければ、不慮の事故による核攻撃は避けられない。

機械学習技術の開発、自律型兵器システム、サイバー攻撃、ソーシャルメディアの操作は、すでに全世界の政治的秩序を不安定にし、核兵器による大惨事のリスクを増大させている。だからこそ、核による絶滅から自らを守るために、技術コミュニティーは一丸となって能力と知識を結集し、世界から核兵器をなくすよう努力することが必須だ。

2013年4月23日、「殺人ロボット」ストップ・キャンペーンの発足会が行われたロンドンの中心地にて撮影された「殺人ロボット」の人形。人の判断を一切介さずに目標を選別し攻撃できる殺傷用ロボット兵器の禁止を呼びかけた。殺人ロボット・ストップ・キャンペーンは、完全自律化された兵器の開発、製造、使用を先制的かつ完全に禁止するよう求めている(写真:CARL COURT/AFP/Getty Images)

私たちは、線路の上を突き進む愚かな核兵器競争を止めなければならない。私たちが力を注ぐべきは、現在の軌道から降りて、核兵器のない世界のために力を尽くすことだ。

核兵器が夜明けを迎えるには、イノベーション、破壊的技術、創意工夫が必要だった。核兵器を夕暮れに追い込む手段を生み出すにも、同じような力が必要だ。核保有国から核兵器を完全に撤廃し、将来また再開されないように安全策を講じる。

この70年間保ってきたことは、今後70年間も保たれると信じたいのは人情だ。しかしそれは、非論理的な抑止力という考え方に依存しているだけの、幻想的で見当違いな信念だ。決して使わないことで、核兵器が世界の平和を保っていると言う人がいる。核兵器には力がある。だが、一部の国だけを強くする力だ。

この虚言は、もう今の時点ではバレている。冷戦終結から30年が経ち、核兵器は増殖している。いくつもの重要な条約はないがしろにされ、批准されない条約もある。核兵器開発を進める恐れのある国も増えている。

だから私はみなさんに呼びかけたい。この必要不可欠な阻止運動に参加してほしい。人類の死には手を貸さないと宣言してほしい。善のために技術を使うと宣言してほしい。

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(翻訳:金井哲夫)