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原価管理の自動化で製造業をエンパワーする「GenKan」のβ版がローンチ

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近年、製造業におけるテクノロジーの導入が活発だ。「インダストリー4.0」や「第4次産業革命」という考え方も広がる中で、IoTやAI、ロボットなどを用いた新たな仕組みが次々と登場し、徐々に現場での活用も進んでいる。

この業界は担当者の勘や経験、根性に頼ってきた側面が強いからこそ、ITを上手く使うことでより効率化できる余地も大きい。特に日本国内ではこれから人材不足が深刻化することが予想されるから、現場の生産性を上げるツールのニーズが一層高まっていくだろう。

本日3月15日にβ版が公開された「GenKan(ゲンカン)」も、まさにIoTデータを用いて製造業をエンパワーするプロダクトだ。

このサービスが取り組むのは、原価管理の自動化。手間のかかる「実績データの取得」「実際原価計算」「原価分析」という一連のフローを独自のアルゴリズムを用いて自動化することで、製造現場の実態を金額で見える化し、生産性向上に繋げようとしている。

IoTの導入は進むも「金額の見える化」は進んでいない

Genkanを開発するKOSKAは、代表取締役CEOの曽根健一朗氏や取締役COOの樋口海氏らが2018年10月に創業したスタートアップだ。

もともとは現在同社が所属する日本原価計算研究学会と、ものづくりとITの融合を目指すIVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ )の間で「ものづくり×IT×原価計算で何か新しいことができないか」と始まったプロジェクトがきっかけ。そこから実証実験を重ねつつ、KOSKAとして法人化した。

実際に大企業から中小企業まで、さまざまな製造業の現場を見てきた中で「(IoTなどにより)製造現場の見える化は進みつつあるものの、金額で見える化されていない」点を課題に感じている企業が多いことに気づいたそう。それがGenkanのアイデアにも繋がっているという。

「データを取得していたとしても機械のモニタリングタイムや中断時間の把握までしかできていないと、それを基に改善を試みたところで『結局今までと同じようなアクションしかできない』という状況に陥ってしまう」(樋口氏)

それに対してGenKanではデータ取得、原価計算、原価分析をそれぞれ自動化した上で、現場のオペレーションを増やすことなく「日々決算」や「適切なKPI、打ち手の設定」を実現できる仕組みを構築した。

データの取得から計算、分析までを一気通貫でサポート

全体の流れとしては、まず実績データとして現場のスタッフと製造機械の作業時間を「加速度センサ」「カメラセンサ」「重量センサ」を用いてリアルタイムに自動で収集。取得したデータや蓄積された生産データを基に、工場・製品・ライン・工程など細かい粒度で実際原価の計算を行う。

その結果から差異分析や要因分析を実施し、ダッシュボードや定期的なレポートによって経営状況を金額ベースで見える化するとともに、改善点の優先順位付けやKPIの設定をサポートするというものだ。

そもそも製造業の管理会計の現場では、実績原価を細かく把握できていないことが原因で収支管理の即時性に欠け「当月収支は翌月末、四半期の収支は翌四半期が始まるまで把握できない」という事態が発生しているそう。

GenKanでは現場の生産量や稼働状況を反映した実際原価をリアルタイムで更新されるため、1日単位で収支管理を行うことが可能。何か大きな問題が起こる前に危険なシグナルに気づき、早めに対応できるようにもなる。

生産データ画面

実際原価計算画面。センサーから取得したデータを基に、製造現場の実態を金額で見える化する

またそれらのデータを基に、現場に沿った形で改善のポイントを自動で提案するのも特徴だ。

既存の生産管理ソフトや管理会計ソフトは計算を行う部分にフォーカスをされていて「要因分析や差違分析にはそこまで得意ではない」というのが曽根氏やの樋口氏の考え。「現場と原価を繋げた分析サービスがない」ことから、そこに焦点を当てたレポートが自動で作成される機能を実装した。

改善ポイントなどが示された、原価分析レポート画面

中小企業でも効果的な原価計算ができる仕組みを

曽根氏の話では顧客ごとに違いはあれど、「取得・計算・分析」のどこかでつまづいてしまい“効果的な原価計算”をできずに悩んでいるケースがほとんどなのだそう。今では大きく「そもそもデータを自分たちで取得するのが難しい」タイプと「データは取れているので、それを上手く使いこなしたい」タイプの2種類に別れるため、それに合わせてβ版では2つのプランを用意している。

月額4万5千円からのセンサ取付プランでは全行程に対応。スタッフの日報や生産データ入力、ストップウォッチ測定などを通じて作業時間を測っていた場合など、データの取得段階から大きな手間やムラが発生していた現場をセンサーでサポートする。

もうひとつのデータ利用プランはすでにIoTデバイスなどを導入していて、データの取得までは自社でできている顧客向け。計算・分析業務を自動化することができ、月額3万円から利用可能だ。

今回話を聞いていてちょっと意外だったのが「データの取得はできている企業からも引き合いが多い」ということ。そもそもIoT端末から取得したデータを原価計算に利用するという発想が珍しかったそうで、「こういうのを待っていた」とポジティブな反応が多いのだという。

これまで武州工業や丸和電子化学など複数の企業と実証実験を継続。自動車部品メーカーや電子機器メーカーを始め、大量生産から少量多品種の業種まで10社近くの導入が決まっている。1月には3000万円の資金調達も実施済みで、今後は正式版の公開に向けてプロダクトの改良やターゲット顧客の選定を進める計画だ。

「原価計算研究学会は日本とドイツにしかない。それぐらい原価計算の分野において日本は進んでいるが、それでも一部の企業しかできていないことも多い。ただその知見や仕組みが日本を代表する大手の製造業を支えてきたことは間違いないし、ITを使えば中小企業でも膨大な手間やお金をかけずに、それに近いレベルまでたどり着けるはずだと本気で考えている。GenKanではそんな世界を実現していきたい」(曽根氏)