プライバシー

iPhoneのいちばんのウリ「プライバシー」を強調するAppleの広告

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Apple(アップル)米国内で3月14日から、ゴールデンタイムに新しいスポット広告のオンエアを始めた。プライバシーに焦点を当てたこのCMには会話はない。「Privacy. That’s iPhone」(プライバシー。それがiPhoneです)というシンプルなメッセージが表示されるだけ。

一連のユーモラスな場面は「あなたにもちょっとしたプライバシーが必要なときがある」ということを再認識させる内容。それ以外には、たった1行のテキストがあるだけ。それはAppleが長期的にも短期的にも主張しているプライバシーに関する1つのメッセージと呼応している。「あなたの生活にとってプライバシーが大切なら、あなたの人生が詰まった携帯電話にとっても大切なはず」。

このスポット広告は、米国で木曜の夜からゴールデンタイムに放送され、NCAAのバスケットボールトーナメント、March Madnessまで続く。その後、いくつかの他の国々でも放送されることになっている。

洞穴の中にでも隠れていたのでない限り、Appleがプライバシーを、他社と差別化するための要因と位置付けていることに気づかない人がいるはずはない。数年前からCEOのティム・クック氏は、Appleが自社のプラットフォーム上でのプライバシーに対するユーザーの「権利」をいかに大切に考えているか、それが他の会社とはどのように異なっているのか、ということを、ことあるごとに公に明確にしてきた。Appleがそうした立場を取ることができた背景には、Appleの当事者としてのビジネスが、ユーザーとの、かなり直接的な関係に依存してきたことがある。Apple製のハードウェアを購入したユーザーは、同時にそのサービスを受け入れるように、ますますなっているのだ。

これは、GoogleやFacebookのような他のハイテク大企業のモデルとは対照的だ。そうした会社は、ユーザーとの関係の中に収益化の戦略を実現するためのしかけを忍び込ませている。それはユーザーの個人情報を(ある程度匿名化した形で)扱うアプリケーションとして、広告主にとって魅力的なものに仕立ててある。もちろん、ユーザーにとっても便利なものに見えるはずだ。

とはいえ、倫理的に優位な立場をマーケティング戦略として利用することに落とし穴がないわけではない。Appleは、最近、iPhoneを盗聴器にしてしまうことを可能とするFaceTimeのハデなバグ(すでに修正されている)を発見した。また、Facebookが、App Storeの認証を操作していたことが露見したことは、その時代遅れになったEnterprise Certificateプログラムの見直しが必要となっていることを明らかにした。

今回の「Private Side」のスポット広告の象徴的な画面が、プライバシーとセキュリティの概念をかなり密接に関連付けているのは、非常に興味深いことだった。それらは独立した概念ながら、互いに関連していることは明らかだ。このスポットは、これらが同一であると主張する。セキュリティを無視してプライバシーを守ることが難しいのは当然だ。しかし、一般の人にとってこれら2つの違いはほとんどないようなものだろう。

App Store自体はもちろん、まだGoogleやFacebook製のアプリをホストしている。それらは、その他の何千というアプリと同様、さまざまな形でユーザーの個人データを扱っている。Appleが主張しているは、ユーザーがiPhoneに預けたデータを積極的に保護しているということ。そのために、デバイス上で加工し、最小限のデータだけを収集し、可能な限りユーザーとデータを分離し、さらにデータの扱いをコントロールできる、透明性の高いインターフェイスを可能な範囲でユーザーに提供しているのだ。それはすべて真実だし、競合他社よりも、はるかにまともな取り組みだろう。

それでも、まだやるべきことは残っていると感じられる。Appleは自社のプラットフォーム上で個人データを扱っているので、何が社会規範に則しているのかという判断を下さなければならないからだ。もしAppleが、世界で最も収益性の高いアプリケーション市場に出回っているものの絶対的な裁定者となるつもりなら、その力を利用して、我々のデータによって生計を立てている大企業に対して(そして小さな会社に対しても)、もっと強い態度に出てもよいのではないだろうか。

私がここまで、Apple抱えていた問題について述べたのは、皮肉のつもりではない。それでも、Appleがプライバシーをマーケティングの道具にすることは、傲慢と言えるほど大胆なものだと考えたがる人もいるだろう。私個人としては、状況によってはプライバシーを危険にさらすことがあったとしても、プライバシーを守ろうと組織的に努力している会社と、「プライバシーの侵害をサービスとする」ビジネスを展開することで存続しているような、この業界の他のほとんど会社との間には、かなり大きな違いがあると考えている。

基本的には、プライバシーを前面に出すのはむしろ使命であり、いくらかバグがあったとしても支持できることだと思う。しかし、プライバシーから利益を得るプラットフォームを運営しておきながらそれについて沈黙しているのは、ある意味まやかしようなものだ。

もちろん、そんなことを言うのは、キャッチフレーズとしては長すぎだろうが。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)