最優秀賞はAI事業のアラヤ、KDDI∞Laboのデモデイに7社のスタートアップが登壇

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KDDIが2011年から運営してきた、スタートアップ界隈ではお馴染みのアクセラレータプログラム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」。3月26日には「MUGENLABO DAY 2019」として生まれ変わったデモデイが開催され、7社の採択チームがピッチを行ったほか、新企画として大企業×スタートアップのリアルマッチングイベントなどが実施された。

スタートアップのピッチではAIを活用した事業を展開するアラヤが最優秀賞、オーガニック農作物のマーケットプレイス「食べチョク」を運営するビビッドガーデンがオーディエンス賞を獲得。本稿では両社を含め、プレゼンテーションを披露した7社を紹介する。

アラヤ : 深層学習・機械学習のアルゴリズムを応用したシステム

アラヤはディープラーニングを含む機械学習アルゴリズムを応用した事業を展開しているAIスタートアップ。現在は「(ディープラーニングの)産業界への応用」「エッジデバイス開発」「デバイス自立化開発」という3つを軸としている。

KDDIとは特にエッジデバイス開発とデバイス自立化開発の領域でプロジェクトを進めてきたそう。前者についてはアラヤのコア技術である「ディープラーニングを圧縮する技術」を活用して、スマホから誰でもVTuberになれるアプリケーションを開発。通常だと動きがカクカクしてしまうような所も、リアルタイムでスムーズに動作する点が特徴だ。

また後者のデバイス自立化開発についてはドローンの自律飛行システムを手がける。こちらは高い所から俯瞰ドローンが不審者を探し、その情報を巡回ドローンに伝えて追跡するというもの。この仕組みを実現するにはドローンがリアルタイムで画像認識できる必要があるが、ここでも演算量を圧縮するコア技術が活かされているという。

アラヤとしては最終的にいろいろなデバイスにディープラーニングが入り込み、デバイス自らが人間のように考えて行動していくような未来に向けて、研究開発に取り組んでいるようだ。

Momo : IoTの敷居を下げる汎用プラットフォーム「Palette IoT」

Momoが開発する「Palette IoT」は、IoTを民主化するようなプラットフォームだ。専門知識がなくとも、開発費や時間を抑えながら簡単にIoTシステムを構築できるのが特徴。これまでIoTを始めたいと思ったユーザーが直面していた「何から始めたらいいのかわからない」「どこに頼めばいいのかわからない」などの課題を解決する。

具体的には自社でセンサーと通信機器を開発。センサーを通信に繋いでデータを解析し、可視化する行程までを一気通貫でサポートする。「量産まで含めて」1社でカバーしている点がウリだ。

実際にJAと共同で農業用のシステムに取り組んだ際には、1ヶ月でソリューションの開発に成功。コストに関しても、これまでJAが使っていたIoTシステムを10分の1の価格で置き換えられる目処が立ったという。

JAとはセンサーから取得したデータを活用して保険や融資関連のサービスまで手を広げていく計画。進行中のプロジェクトは20を超えていて、KDDIとは国際物流領域で事業を進めている。

TAAS : タダで機密文書を処理できる「e-Pod Digital」

e-Pod Digital」は企業内の機密文書をタダで処理できるサービスだ。機密回収ボックス自体にデジタルサイネージを2枚内蔵させることで“広告メディア”に変え、従来はコストのかかっていた機密文書の処理を無料化する。

TAAS代表取締役の大越隆行氏によると、社員2000名を超える規模の大手上場会社ではこの作業で月間36万円、年間で432万円のコストが発生しているそう。e-Pod Digitalではこのコストをなくすだけでなく、ボックスに社内で共有したい情報を自由に流せるモニターを設置して「捨てる場所だった機密回収ボックスを、人が集まる空間に変える」ことを目指している。

複数企業と連携しているが、直近ではブランディングやマーケティング面において電通と、広告の空き枠へのデジタルコンテンツの配給などにおいてアマノと協力。2ヶ月間で121社から申込みがあったそうで、この1年で利用企業を1000社まで拡大するのが目標だ。

ビビッドガーデン : オーガニック農作物の販売所「食べチョク」

TechCrunchでも何度か紹介している「食べチョク」は、オーガニック農作物のマーケットプレイスだ。

従来の流通方法では「多くの中間業者が存在することで粗利が低くなる」「価格が一律で決まってしまうため、農作物をこだわって作ってもそれが価格に一切反映されない」といった点が農家にとって悩みのタネになっていた。食べチョクでは農家と消費者を直接つなぐことで、農家が自分で料金決定できる仕組みを提供する。

ユーザーとしても、オンライン上で集荷場を介さずに農家と直接繋がることができるため、鮮度の高い野菜を手頃な価格で購入できるのがメリットだ。

サービスローンチから1年半で300以上の農家が登録。∞ Laboではこの農家データベースを活用して大丸松坂屋との連携、企業内でのマルシェの連携、ライブコマース「CHECK」との連携を進めてきた。

同社では消費者向け以外にもサービスを拡大していて、昨年11月には飲食店向けの「食べチョクPro」もスタートしている。

ヤマップ : 登山者向けの地図アプリ「YAMAP」

YAMAP」はその名の通り、山登り用の地図アプリを軸にした登山コミュニティサービスだ。携帯電波が届かない山の中でもスマホから現在地がわかるのが特徴。現在は登山のほかスキーや釣りなどアウトドア全般で利用が広がっていて、アプリのダウンロード数は120万件を超える。

KDDIとは安全登山の推進を目指して2つの取り組みを実施した。1つ目は「KDDI IoT通信サービス LPWA」を活用した登山者の見守りサービス。LPWAがカバーするエリア内であれば、山の中にいても家族や友人に位置情報をリアルタイムに共有できるというものだ。

2つ目はKDDI、ウェザーニュース、御殿場市と共同で取り組むドローンを使った山岳救助サービス。こちらについては昨年10月に富士山で実証実験を実施済みで、今年の夏から運用がスタートできるように進めているという。

なおヤマップについては同社が昨年4月に12億円の資金調達を実施した際にも詳しく紹介している。

Telexistence : 遠隔地にいるロボットを直感的に操作できる技術

Telexistenceはテレイグジスタンス(遠隔存在)技術を用いて、人間の身体能力や存在感を拡張するロボットを開発しているスタートアップだ。

具体的には利用者がVRのヘッドマウンドゴーグルや体をトラックするモーションセンサーをつけると、インターネットで繋がっている遠隔地のロボットを直感的に、かつほぼリアルタイムで操作できるというもの。視覚や聴覚に加えて触覚までフィードバックされる点が面白いポイントだ。

同社ではこの技術を「遠距離で移動コストが高い分野」と「労働集約的で不定形な作業を代替する分野」から展開する計画。前者は旅行や宇宙空間での単純作業などが該当し、昨夏にはKDDI、JTBと共同で小笠原諸島の遠隔旅行体験イベントを実施している。

また後者に関しては「コンビニでものを陳列する作業」など、ものを掴む労働作業が典型例。ロボットの手の関節の動きや位置情報、触感の情報を正確に収集して機械学習にかけることで、人の動きをロボットに教えこみ自動化するという。

Telexistenceについても昨年11月の資金調達時に紹介しているので、気になる方はこちらもチェックしてみて欲しい。

Synamon : VRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」

Synamonが開発する「NEUTRANS BIZ」は会議などビジネスシーンで使えるVRコミュニケーションサービスだ。

VR空間の中でアバターを介して対話をする仕組みになっていて、3Dデータを共有したり過去の体験を持ち込んだりといった形で、リアルを超えた体験を実現できるのが特徴。同社代表取締役の武樋恒氏いわく「対面の会議やテレビ会議などをなくすものではなく、VRでしかできないコミュニケーションを実現することで新しい価値を提供することが目標」だ。

KDDIを含むのべ29社327名から実際に体験した感想を集めたところ、9割以上の人からポジティブな反応があったそう。協議を重ねた結果、グループインタビューや社内研修、コワーキングスペースなどでも使いたいという声があがり、新しい取り組みもスタートしている。

なおピッチ内でKDDIや三井不動産が展開するファンドから出資を受けたことを発表。こちらについては別記事で詳しく紹介している。