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フランスの新デジタル経済大臣セドリック・オに聞くハイテク産業の規制方針

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フランスのエマニュエル・マクロン大統領の下で黒子として働いていたら、突然大臣に抜擢された。あなたならどう感じるだろうか?これは今週、Cédric O(セドリック・オ)氏身に起きた出来事だ。彼は先週の日曜日にデジタル経済大臣に任命された。私は、任命後、初めてのジャナーリストとして彼にインタビューができた。

セドリック・オ氏は、何年もの間、フランスのテクノロジー・エコシステムと意見を交わしてきたが、カメラやマイクの前に立つことはなかった。大統領官邸であるエリゼ宮殿では、フランス企業の株式と技術全般を見守る担当責任者を務めていた。私もこれまで、彼の業績に関する記事をいくつも書いてる。

50人のハイテク企業のCEOを招き、マクロン大統領と「公益のためのテクノロジー」について懇談させた。数十人のベンチャー投資家や有限社員をパリに招待し、フランスのテクノロジー・エコシステムにより多くの投資を行うよう説得した。適正化の状況をフランスの規制当局に捜査させるようFacebookを説得した。それでも、彼の名前は表に出ることがなかった。

スポットライトを当てられた今、テクノロジーに関するあらゆる物事を担当するこの大臣に、ぜひとも考え方を聞いておかなければならない。ハイテク企業への規制は、経済と社会構造の礎石となる。彼はそこに、強い思いを持っている。

巨大ハイテク企業の規制

いろいろな理由はあるが、私たちの会話は、いつもハイテク企業の規制に行き着く。この問題では、セドリックは企業と欧州各国との、明確な規制の枠組みと新しいタイプの規制担当者との狭間の微妙な立場にある。彼は、その関係を崩したいと思っているわけではない。

「プラットフォームには、何らかの規制をかける必要があります。私は、マーク・ザッカーバーグ氏の論説に完全に同意します」とセドリック・オ氏は私に話した。「何が合法で何が違うかは、プラットフォームが決めるべきではありません。しかし、規制を実施しその結果を出すことに関しては、彼らに責任があります」

彼によると、ザッカーバーグ氏が法律を書くべきではなく、フランスの規制当局はコンテンツに注目すべきではないという。すべては、適正化へ向けた作業であるべきだと言うのだ。

「銀行の規制と同じです。当局は、銀行が効率的なシステムを導入しているかを見て監査します。私たちも、そうしたかたちを考え方をするべきだと思うのです」

また彼は、コンテンツを削除すること(だけ)を意味するものではないと話す。ソーシャルネットワークには、削除すべきでないコンテンツが削除されないよう責任を果たす必要もある。

理想的な世界には、ソーシャルネットワークが特定の書き込みの状況を問い合わせられる中央所蔵庫がなくてはならないと、セドリック・オ氏は考えている。

「たとえば、マリーヌ・ル・ペン(フランスの政治家)がISISの虐殺動画を公開する場合は、行政が管理するものでなくても、所蔵庫が必要です。プラットフォームはその所蔵庫に問い合わせることで、状況がすぐにわかります」とセドリック・オ氏は言う。

複数のプラットフォームが構築するニュートラルな所蔵庫と言えば想像しやすいだろう。もちろんこれで、クリストチャーチのテロなどに見られるような問題をすべて阻止できるわけではない。複製だと見抜かれないように、ほんの少し手を加えてその動画のアップロードを繰り返す人たちが大勢いるからだ。

フランスの規制当局に目を向けると、セドリック・オ氏は、まだ何も固まっていない言う。CSA(視聴覚最高評議会)やAECEP(電子通信郵便規制庁)には、そしておそらく複数の規制当局がひとつになって、新しい権限を備えることができる。だが、HADOPI(不正ダウンロード取り締まり法)が、これらの中のどの位置に納まるかは不透明だ。いずれにせよフランス政府は、規制を欧州レベルに強化したいと考えているのだ。

どの場合も、セドリック・オ氏は先を急がない。新しい規制の枠組みを導入する前に、政府は、ソーシャルネットワークがコンテンツを適正化する方法を把握しておかなければならないからだ。フランス規制当局はFacebookの協力を得て、同社の方法がどのように機能するかを見てきた。その最終報告は、間もなく発表される。

新しい高みへ

この数週間で、フランスのスタートアップ数社が巨額の投資を獲得している。なかにはユニコーン企業に達したものもある。フランスのテクノロジー・エコシステムを数年間見てきた人間なら、さほど驚くことではない。しかし、セドリック・オ氏は、フランスのハイテク産業のイメージを向上させなければならないと考えている。なぜなら、評判が悪いからだ。

「(議会での)私への最初の質問は、デジタル包括性についてでした。私も何度も聞いてきた問題で責め立ててきたのです。『スタートアップはよいが現実とかけ離れている』というのです」と、パリで開催されたLa French Techの演壇で話していた。

「ひとつ、変えなければならないことがあります。そしてそれは、将来に向けた私からのメッセージになります。フランスのテクノロジー・エコシステムは重要だということです。もし、自分の子どもや孫に仕事を与えたいと思えば、スタートアップなしには考えられません」

調査によれば、フランスと英国は、欧州で最初にベンチャー投資の取り引き数と総投資額で1位の座を争っているという。フランスにも、世界有数の工科大学がある。シリコンバレーの最大手ハイテク企業で働くフランス人データ科学者やAI専門家を見れば、その実力がわかる。

しかし、フランスの上場企業を見ると、そのほとんどがインターネットやパソコンが登場する以前に設立されている。

「(官邸では)私は、スタートアップにではなく、大企業にフランスの出資が集中していることを心配しています」とセドリック・オ氏は言う。インタビューの朝、彼は何度も同じ数字を口にした。「米国では、純雇用創出数の50パーセント近くが、ハイテク産業関連なのです」。

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(翻訳:金井哲夫)